大物いないが脅威のポテンシャル秘める米国=北京五輪野球・直前リポート
メジャーの壁が立ちはだかる米国代表
バスケットボール米国代表のようにドリームチーム結成とはいかないのだ。野球米国代表には、メジャーリーグという決して超えることのできない壁が立ちはだかる。現在、発表されているメンバー北京五輪へ出場する24名の中に、デレック・ジーターやチッパー・ジョーンズら大物選手の名前はないし、現在メジャーリーガーと呼ばれる選手は1人もリストに入っていない。
将来のメジャーを背負う投打の目玉
さらに、『ベースボールアメリカ』誌はこのラポルタをインディアンス下部組織のトッププロスペクト(もっとも期待の高い選手)にランクしており、数年後にはトップチームの主軸を担っていることも十分考えられる。スラッガーだが、ボール球に手を出さない選球眼を兼ね備え、守備も外野以外に一塁手も器用にこなすなど定評がある。デーブ・ジョンソン監督も「とても攻撃的な打者。打席でのアプローチも素晴らしい」と、大きな期待をかけている。
打の目玉がラポルタとすれば、投の目玉はストラスバーグだろう。今回のメンバーの中では唯一の大学生だが、来年のドラフトでは全体1位(過去の全体1位はジョー・マウアー、ジョシュ・ハミルトンら)ではないか、という声もあるほどの注目株だ。魅力は何と言ってもストレート。100マイル(160キロ)近い球速を誇り、ことし4月のユタ大戦では23三振を奪った本格派右腕だ。今月にオランダで行われたハーレム・ベースボール・ウィークでは、日本代表相手に7回、7奪三振、2失点の力投で勝利投手となり、続く準決勝の台湾戦でも7回、11奪三振、2失点。米国優勝の大きな原動力となった。さらに、彼の強みは制球力の良さで、前述の国際大会では2試合14イニングを投げて、四球数はわずか1。今夏の米国代表遠征でも27イニングで4四球。自慢のストレートと切れ味鋭いスライダーを武器に、今回は若干20歳ながら米国の命運を託されることとなった。
日本でも馴染みのベテラン投手
ナイトと聞いて、ダイエーファンや日本ハムファンはあれっと思ったかもしれない。2003年から2年間ダイエーに、05年に日本ハムに所属したナイトである。『MLB.COM』の記事によると、ナイトは2007年に引退を決意していたが、友人から独立リーグの誘いを受けて、野球を続けることになった。そこで結果を残し、今季メッツの3Aから誘いがきたという。その3Aでの登板が米国代表チームのスカウトの目に留まった。ジョンソン監督は彼の経験に期待をかける。
「彼はわれわれのニーズを満たしてくれるだろう。若手へ多大な影響を与えてくれると思う」
プロ野球人生14年でほとんど日の目を見なかった男が、かつて主戦場としたアジアの地で輝きを放つことができるのか。日本戦での登板があると面白いのだが、果たして――。
勢いに乗ったときのポテンシャルは脅威
北京五輪で米国代表の指揮を執るジョンソン監督のさい配も注目だ。プロ野球のオールドファンなら知っている人もいると思うが、日本プロ野球の巨人で活躍したこともある。彼は選手としても活躍したが、監督しては選手時代を上回るインパクトを残している。1986年、“ミラクルメッツ”と言われたメッツをワールドチャンピオンに導き、90年代に入っても、レッズ、オリオールズを地区優勝させた。その後は、国際舞台に活躍の場を移し、04年にはオリンピック野球オランダ代表の監督に就任。05年から米国代表監督につくと、06年にはオリンピック予選でキューバを破り、早々とオリンピック出場を決めた。この百戦錬磨の監督は他チームにとっては不気味な存在となるはずだ。
ポテンシャルの高い若手の大化けとジョンソン監督のさい配がはまれば、今回もシドニー五輪のように米国代表が金メダルを獲得する可能性は十分にある。勢いに乗ったときの米国は、マイナーレベルといえど要注意だろう。特に、準決勝、決勝の一発勝負では脅威となる。星野ジャパンの行く手を阻むライバルであることに変わりはない。
■米国五輪代表24名メンバー
投手12人:
ブレット・アンダーソン(アスレチックス2A・ミッドランド)
ジェイク・アリエッタ(オリオールズ1A・フレデリック)
トレバー・ケーヒル(アスレチックス2A・ミッドランド)
ジェレミー・カミングス(レイズ3A・ダラム)
ブライアン・ダウンジング(ツインズ3A・ローチェスター)
ケビン・ジェプセン(エンゼルス3A・ソルトレイク)
ブランドン・ナイト(メッツ3A・ニューオリンズ)
マイク・コプラブ(ドジャース3A・ラスベガス)
ブレイン・ニール(タイガース3A・トレド)
ジェフ・スティーブンス(インディアンス3A・バッファロー)
スティーブン・ストラスバーグ(サンディエゴ州立大)
ケーシー・ウェザーズ(ロッキーズ2A・タルサ)
捕手2人:
ルー・マーソン(フィリーズ2A・リーディング)
テイラー・ティーガーデン(レンジャーズ3A・オクラホマ)
内野手5人:
ブライアン・バーデン(カージナルス3A・メンフィス)
マシュー・ブラウン(エンゼルス3A・ソルトレイク)
ジェイソン・ドナルド(フィリーズ2A・リーディング)
マイク・ヘズマン(タイガース3A・トレド)
テリー・ティフィー(ドジャース3A・ラスベガス)
外野手4人:
デクスター・ファウラー(ロッキーズ2A・タルサ)
ジョン・ギャル(マーリンズ3A・アルバカーキ)
マット・ラポルタ(インディアンス2A・アクロン)
ネイト・シャーホルツ(ジャイアンツ3A・フレズノ)
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