福留が球宴で活躍できなかった理由は?=小グマのつぶやき

阿部太郎

まずユニホームに物申したい

 「まさか」というか、「えー」というか。一瞬目を疑った。現在のヤンキースタジアムでは最後のオールスター。華々しい祭典には、すべてにおいて意匠を凝らしてほしかったのだが……。

 オールスター前日に着用していたナショナルリーグのユニホーム――。お世辞にも「COOL」とも、「WONDERFUL」とも言いがたかった。上着と帽子が同じ色って。しかも、灰色を同系でまとめると、しまりませんなぁ。取材に行っていないので(トホホ)なんとも言えないが、テレビ画面を通して、または写真で見る限り、誰も似合っている人はいなかった。福留孝介も類に漏れず。実は本人、あのユニホームを着るのが嫌だったりして。真相はもちろん闇の中ですが……。

 逆に、ファッションにこだわりを持つイチローが、もしあのユニホームを着ていたら、何て言ってただろう、なんて考えると面白い。オールスター前日の記者会見では黒のシースルージャケット、当日にオープンカーで登場したときは夏らしい、白を基調にしたコーディネートで彩ったイチロー。あのナショナルリーグのユニホームに身を包んだら、「ダサッと思いました」と言うかもしれないし、「似合っているのはボクだけでしょ」と言うかもしれない。真相はもちろん闇の中ですが……。

明暗分かれたシカゴ勢

オールスターに先立って行われたパレードに弓子夫人(左)とともに参加したイチロー 【写真は共同】

 さて、試合の方は4時間50分の熱戦で、アメリカンリーグが勝利を収めた。ニューヨークでの試合終了時間が深夜1時40分ぐらい。シカゴはというと、1時間の時差で0時40分ぐらい。西海岸は22時40分ぐらいの終了だから、しっかりとサヨナラのシーンをまどろむことなく見ることができたのは、西海岸の人たちかもしれない。それが視聴率と関係あるかはともかくとして。

 ただ、シカゴアンたちは眠たい目をこすって、オラが町のチームの選手が活躍するのをしかと見届けた人が多いことだろう。なんせ、カブスから8人、ホワイトソックスから2人、合計10人もの選手が送り込まれたのだから。ただ、活躍ぶりは明暗はっきり分かれてしまった。「明」は投手陣。まめがつぶれて登板できなかったケリー・ウッドを除く3人、カルロス・ザンブラーノ、ライアン・デンプスター、カルロス・マーモルが見事な投球で、いずれも自責点0に抑えた。特に、「MAROON5」が好きな(関係ないか)デンプスターは3者連続三振。得意のクネクネ投法(振りかぶる直前に3度ほど左手首を返してグローブを揺する)で、アメリカンリーグの打者を翻弄(ほんろう)した。ジョーク好きなカナディアンはオールスター終了後、どんなジョークで締めたのだろうか。うーーん。考えつかない。

 だが、打者陣は「暗」。カブス勢もホワイトソックス勢も5人全員がノーヒットに終わった。MLB球宴初参戦の福留もいいところなく、期待していた「PATIENCE(我慢強さ)」も見られなかった。今回こそ、カブスファンに「偶然だぞ」のプラカードを持ってほしかったんだが……。いなかっただろうなぁ。

福留のプレーの特質とは

福留は灰色のユニホームを身にまとい、長男と一緒に本塁打競争観戦を楽しんだ 【Getty Images/AFLO】

 福留は日本のオールスターで思い出に残っているシーンは「ない」という。

「あんまりオールスター、オレ良くないんだよね」

 くしくも、アメリカでもそのジンクスはあてはまったわけだが、なぜだろう? メジャー1年目の開幕戦という誰もが身震いするような試合で堂々と3ランを放ち、「緊張しなかった」と平然と言い切ったお祭り男が球宴で活躍できない理由はなぜか?

 思い当たるふしがあるとすれば……彼は“魅せる”プレーより、“魅せない”プレーの方を好む選手だからかもしれない。たとえば、ダイビングキャッチよりも、ポジショニングの良さで普通にキャッチするほうが彼の哲学にあっている。たとえば、1本のホームランより、走者が一塁や二塁にいる状況によっては進塁打となる1本のセカンドゴロを自分の中で評価する。そういったプレーヤーが、“魅せる”を意識せざるを得ないオールスターに出ると、ちょっと違和感があるのだろうか。今回はその気持ちが強かったと見受けられた。どこかで、「魅せなきゃ」とか、「ちょっと大きいのを」と思ったのかも。真相はもちろん闇の中ですが……。

 第1、2打席の内容を見ても、振りが少し大きいような気が。初球に手を出すのはシーズン中でもよくあるが、シーズン中はもちろんヒッティングゾーンを狭くしている。今回は初球「なんでもいっちゃえ〜的な振り」だと思ったが、果たして――。色気が出たのか、気負ったのか。あの壮大なスケールでのオープニング。今まで名前しか聞いたことのなかったであろう“生ける伝説”との対面、マンハッタンのど真ん中に敷き詰められたレッドカーペッドの上をオープンカーで移動するというド派手なパフォーマンスなどなど。そういったすべてが「福留イズム」を狂わせたのかもしれない。

 そう考えるとやはり、クリーンヒットを放ち、守備でも自慢の強肩をいかんなく発揮して“魅せた”イチローイズムはことしも健在だった。大沢親分も「あっぱれ!」と言うしかないだろう。

<了>
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著者プロフィール

1978年1月9日生まれ、大分県杵築市出身。上智大卒業後、シアトルの日本語情報誌インターンを経て、スポーツナビ編集部でメジャーリーグを担当。2008年1月より渡米し、メジャーリーグの取材を行う

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