小橋が約2年ぶりに聖地のリングに登場=ノア

高木裕美

約2年ぶりに“聖地”後楽園のリングに登場した小橋 【t.SAKUMA】

 プロレスリング・ノア「Northern Navig.’08」開幕戦となる15日の後楽園ホール大会は、超満員となる2100人を動員。メーンイベントでは“鉄人”小橋建太が06年5月19日以来、約2年ぶりに聖地のリングに上がり、本田多聞、谷口周平と組んで、秋山準、力皇猛、志賀賢太郎組と対戦した。
 小橋は06年6月の定期検診で腎臓がんが発覚し、7月に摘出手術。その後、懸命のリハビリを続け、昨年12.2日本武道館で奇跡の復活を果たした。復帰後は地方興行を中心にシリーズへスポット参戦し、地元凱旋興行となる5.11京都・福知山では復帰後初のピンフォール勝利も飾った。

鉄人・小橋が聖地のリングに復帰後初登場

小橋(右)は各種チョップを惜しげもなく披露 【t.SAKUMA】

 この後楽園という会場は、小橋にとってもファンにとっても数々の歴史や思い出が詰まった特別な場所。全日本プロレス時代から数々の名勝負を繰り広げてきたこのリングにようやく戻ってきた小橋を、観客も割れんばかりの大「小橋」コールで出迎えた。

 対角コーナーに立ったのは、約16年前、この場所で小橋を相手にデビュー戦を行った秋山。2人が向かい合っただけで客席の興奮は早くも最高潮に達した。小橋は試合中に逆水平チョップ、大根斬りチョップ、坂本竜馬チョップなどの多彩なチョップ攻撃で客席を沸かせ、場外戦でも熱いファイトを見せると、コーナーに控える間もパートナーに声援を送る。
 さらに秋山のジャンピングニー、エクスプロイダーに対し、小橋もハーフネルソンスープレックスで対抗。だが秋山も、その直後に垂直落下式ブレーンバスターを放つという遠慮のない攻撃を繰り出し、小橋に花を持たせようとはしない。25分以上に及ぶ激闘の末、谷口が志賀の逆さ押さえ込みに敗れ、小橋組の黒星となったものの、観客は大「小橋」コールを送った。

「いろいろと思い出のある場所」である聖地を2年ぶりに体感した小橋は、「みんなの応援が力になった。これからも心配しないで応援してほしい」とファンに感謝しつつ、「スナミナにも心配はないし、1試合1試合、勘も戻ってきている。このまま突っ走っていければいい」と、常に前進あるのみをアピール。今シリーズは2日後のディファ有明大会をのぞく10大会に出場予定であり、「リングのある限り、命のある限り、戦い続ける」と、生涯プロレスラーであり続けることを改めて誓った。

KENTAがROH世界王座に挑戦

KENTA(右)はROH王座奪取ならず 【t.SAKUMA】

 セミファイナルではナイジェル・マッギネスの持つROH世界王座を懸けて、マッギネス、KENTA、BJホイットマーが3WAYマッチで激突。現GHCヘビー級王者である森嶋猛が巻いていたこのベルトにKENTAが挑むも、ルールの壁に阻まれ、惜しくも王座奪取はならなかった。

 今回は通常のシングルマッチではなく、3人が同時に戦う3WAYマッチ。そのため、ROHの外国人同士が結託し、KENTAが必然的に1対2の不利な状況を強いられることに。しかし、KENTAは度重なる妨害や合体攻撃などを食らいながらもスピードとテクニックを駆使し、2人を翻弄。キックのコンビネーションやスワンダイブ式キック、必殺技のブサイクへのヒザ蹴り、go2sleepなどを惜しみなく放ち、終始試合をリードするも、残る1人にカウントを阻まれ、どうしても3カウントを奪うことができず。
 マッギネスの攻撃によって場外で一瞬ダウンしている間にマッギネスがホイットマーをジョーブレーカーラリアットで仕留め、15度目の王座防衛に成功。KENTAの王座奪取はならなかった。

 この日の第3試合では、ともにGHCジュニアタッグ王座を巻くパートナーの石森太二が元王者の鈴木鼓太郎とシングルで対戦。大接戦の末に鼓太郎が前方回転落とし固めで石森を破り、リング上からタッグ王座挑戦を表明。これにKENTAも呼応したことにより、急遽6.1札幌きたえーる大会でのGHCジュニアタッグ王座防衛戦(KENTA&石森vs.鼓太郎&リッキー・マルビン)が正式決定した。

 2日後の有明大会では伊藤旭彦と組んで挑戦者チームとの対戦が控えるKENTAは、ROH王座奪取に失敗したことについて「申し訳ない」と頭を下げながらも、「札幌に向けて明日から気持ちを切り替える」と、ショックを払拭。早くも次を見据えて動き出した。

GHCタッグ前哨戦は挑戦者組が圧勝

タッグ王座戦を前に王者組は挑戦者の勢いに苦戦 【t.SAKUMA】

 5.23新潟市体育館でGHCタッグ王座を懸けて戦う王者・丸藤正道&杉浦貴組と挑戦者のバイソン・スミス&齋藤彰俊組が6人タッグマッチで前哨タッグ激突。前シリーズに開催された「グローバル・タッグリーグ戦」(GTL)で優勝したバイソン組が勢いの差を見せつけた。

 両チームは昨年11.25札幌でもタッグ王座を懸けて対戦しているが、このときは王者組が勝利。しかし、GTL公式戦として対戦した4.13博多では30分時間切れに終わっている。杉浦も4.27日本武道館で現GHCヘビー級王者の森嶋猛からピンフォールを奪い、6.14横浜文化体育館で王座挑戦が決定。勢いとしては決して負けていないはずだが、それ以上にバイソンと齋藤の気迫には鬼気迫るものがあった。

 ゴングと同時に場外乱闘を仕掛けていったバイソンは丸藤を鉄柵の外へと投げ捨て、杉浦にはエルボー。さらに杉浦組のパートナーである伊藤に集中攻撃を浴びせていく。王者組も杉浦のジャーマン&丸藤の顔面キック、杉浦のパワーボム&丸藤のトラースキックといった合体攻撃を次々と繰り出し、杉浦のオリンピック予選スラムがバイソンに決まるが、直後に齋藤がラリアット。齋藤は丸藤の不知火も強引に振り切り、王者組の勝機を叩き潰すと、バイソンが同時アイアンクローで場外へ投げ捨てる間に齋藤が伊藤に変形バックドロップで快勝。わずか13分足らずで嵐は過ぎ去っていった。

 王者らしい戦いをできなかった丸藤は「勢いを認めざるを得ない」と挑戦者組の強さを認めた上で、「いつも試合ではひらめきに頼ってるけど、何か考えないと」と行き当たりばったりでは通用しない相手であると警戒。GHC2冠王のかかる杉浦も、「ベルトを防衛して、勢いをつけてヘビーも取りにいきたい」と意気込みを語り、1週間後の新潟決戦へ向け、さらなる連係の強化を誓い合った。

青木が強敵ダニエルソンに大健闘

青木(奥)がダニエルソン相手に奮闘 【t.SAKUMA】

 青木篤志が“閃光十番勝負”第4戦で、ROHの強敵ブライアン・ダニエルソンを相手に大健闘。KENTA、丸藤をも倒したことがあるテクニシャンに20分近くも食らいついていった。

 闘志を前面に押し出すタイプのファイターである青木だが、この試合ではさらにその気合が大爆発。チョップ、エルボーの打ち合いでは全身で闘志を見せつけると、雪崩式バックドロップを食らった直後に決められたダニエルソンの必殺技キャトルミューティレーションを必死にロープエスケープで脱出。「何度もこの技で負けてる」という技を返すことで、確かな成長の証を見せつけた。しかし、必殺技を封じられたダニエルソンは即座に別の引き出しを開け、三角絞めで完勝。青木の十番勝負の戦績は1勝3敗となった。

「何をするにしても上手」とダニエルソンの技術力の高さに舌を巻いた青木だが、次の6.14横浜文化体育館で迎える第5戦の相手は「ダニエルソンより上手で、ダニエルソンのように真っ向から受けてくれないと思う」という小川良成。青木は「小川さんの戦術にはまらないようにしたい」と、さらなる課題を自らに課し、貪欲に勝利を狙った。

■ノア「Northern Navig.’08」
5月15日(水)東京・後楽園ホール 観衆2100人(超満員)

<第9試合 6人タッグマッチ 60分1本勝負>
小橋建太、本田多聞、●谷口周平
(27分07秒 逆さ押さえ込み)
秋山 準、力皇 猛、○志賀賢太郎

<第8試合 ROH世界選手権 3WAYマッチ 60分1本勝負>
[第10代選手権者]ナイジェル・マッギネス
[挑戦者]KENTA
[挑戦者]BJホイットマー

○マッギネス(13分09秒 ジョーブレーカーラリアット→片エビ固め)●ホイットマー
※第10代王者が15度目の防衛に成功

<第7試合 青木篤志“閃光十番勝負”第4戦 45分1本勝負>
●青木篤志
(18分10秒 三角絞め)
○ブライアン・ダニエルソン

<第6試合 6人タッグマッチ 30分1本勝負>
丸藤正道、杉浦 貴、●伊藤旭彦
(12分28秒 変形バックドロップ→片エビ固め)
バイソン・スミス、○齋藤彰俊、平柳玄藩

<第5試合 6人タッグマッチ 30分1本勝負>
三沢光晴、○小川良成、リッキー・マルビン
(18分05秒 ジャックナイフ式エビ固め)
田上 明、川畑輝鎮、●井上雅央

<第4試合 タッグマッチ 30分1本勝負>
森嶋 猛、○モハメド ヨネ
(7分56秒 キン肉バスター→エビ固め)
佐野巧真、●菊地 毅

<第3試合 シングルマッチ 30分1本勝負>
●石森太二
(12分26秒 前方回転落とし固め)
○鈴木鼓太郎

<第2試合 タッグマッチ 30分1本勝負>
金丸義信、●太田一平
(13分01秒 ラストライド→片エビ固め)
○マグニチュード岸和田、ラプター

<第1試合 シングルマッチ 30分1本勝負>
○泉田純至
(7分30秒 前方回転エビ潰し→片エビ固め)
●百田光雄
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著者プロフィール

静岡県沼津市出身。埼玉大学教養学部卒業後、新聞社に勤務し、プロレス&格闘技を担当。退社後、フリーライターとなる。スポーツナビではメジャーからインディー、デスマッチからお笑いまで幅広くプロレス団体を取材し、 年間で約100大会を観戦している 。最も深く影響を受けたのは、 1990年代の全日本プロレスの四天王プロレス。

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