新たなスキャンダルとドナドーニの試練 ホンマヨシカの「セリエA・未来派宣言」

ホンマヨシカ

新生イタリアの中心はデ・ロッシか

司令塔として抜群のプレーを見せたデ・ロッシ(上段左端)。新生イタリアの中心選手となるか 【Photo:FAR EAST PRESS/AFLO】

 4日後に行われたグルジア戦では、マテラッツィに代わってネスタが、累積警告で出場停止になったガットゥーゾに代わってペッロッタが、イアキンタに代わってカモラネージが、そしてデルピエロに代わってディナターレがそれぞれ出場した。ウクライナ戦での4−3−3から、トーニをトップに置く4−5−1(もしくは4−1−4−1)に変更した。

 試合は前半18分にデ・ロッシがペナルティーエリア外の左寄りの位置からロングシュートを決め先制するが、8分後の前半26分にシャシアシュビリに同点ゴールを決められ、その後は一進一退の攻防が続いた。
 状況が変わったのは、後半15分に2枚目のイエローカードでグルジアのカンカーバが退場してからだった。数的有利になり相手のプレッシングが緩むと、イタリアは素早い球回しで攻撃を仕掛け、後半18分に左サイドからディナターレがゴール前へクロスを供給。右寄りからゴール前へ走り込んだカモラネージがヘッドで合わせて追加点を決めた。さらにその8分後にはペッロッタがゴールを奪い、試合を決めた。

 この試合でのデ・ロッシの質と量が伴ったプレーは圧巻だった。ゲームメーカーとしても、コンディションの悪かったピルロは完全に食われていた。今回の2試合では見せなかったが、時々顔を出す、切れやすい性格さえ修正できるなら、デ・ロッシは司令塔もこなせるオールラウンドなMFとして、新生イタリアの中心選手になるだろう。

 しかし、この試合でも何人かの中心選手のコンディション不足が目に付いた。もしグルジアの選手が退場処分を受けていなかったら、最後まで苦しめられていたに違いない。コンディション不足の選手の中でも、特にむごかったのはネスタだ。ミランにおいても今シーズンのネスタからはプレーに自信というものが感じられず、この試合でもイージーミスを繰り返していた。逆にこの2試合での収穫の1つは、左サイドアタッカーとしての高い能力を見せたディナターレと、右サイドバックで攻守ともに安定したプレーを見せたオッドの2人だ。
 いろいろと問題が多いイタリア代表だが、ドナドーニにとっては満足できる結果で終わった2連戦だった。

選手から信頼を得られていないドナドーニ

 最後に代表監督としてのドナドーニの気になる点について書きたい。
 ご承知のように代表監督は戦術的な能力以上に、各クラブから選出されたスター選手の信頼を得る能力、これらの選手をうまく束ねるカリスマ性が必要とされるが、ドナドーニはまだまだ選手から信頼を得ていないのでは? というシーンを何度か見た。

 それはパリで行われたフランス戦だった。カンナバーロが相手選手との接触プレーで頭を強打し、時々苦しそうに頭を抑えながらプレーしていた時だ。ベンチのドナドーニは何度もカンナバーロに大声で大丈夫かどうか聞いていたが、カンナバーロは完全にドナドーニを無視していた。キャプテンとしてW杯を獲得し、代表でもクラブでもドナドーニ以上に経験豊富な名監督の下で試合をしてきたカンナバーロは、ドナドーニを青二才と侮っているのかもしれないが、この時のカンナバーロの態度を見ていて非常に不愉快に思った。

 また同じフランス戦で、ドナドーニは後半に入って動きが鈍ったカッサーノに、試合を続けられるかどうか何度も聞いていた。こちらのシーンはドナドーニの性格の弱さが表れているように感じられた。カッサーノが負傷でもしていたのなら別だが、監督自身がカッサーノは疲れていると判断して、すぐに交代させればよいことだ。

 トッティが年内ではなく来年から代表に復帰すると身勝手な宣言をしたことも、ドナドーニを甘く見ているからかもしれない。
 このように代表監督ドナドーニの行く手には、まだまだ厳しい試練が待ち受けているようだ。

<この項、了>

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著者プロフィール

1953年奈良県生まれ。74年に美術勉強のためにイタリアに渡る。現地の美術学校卒業後、ファッション・イラストレーターを経て、フリーの造形作家として活動。サッカーの魅力に憑(つ)かれて44年。そもそも留学の動機は、本場のサッカーを生で観戦するためであった。現在『欧州サッカー批評』(双葉社)にイラスト&コラムを連載中

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