大野倫が考える日本野球界に必要なこと 「球数制限よりも組織の一本化」
けがを抱えながらも、1991年に夏の甲子園で準優勝した大野倫は現在の甲子園をどのように見ているのか 【写真:岡沢克郎/アフロ】
今年から準々決勝後だけではなく、準決勝後に休養日を設けたのもその一つだ。では、かつてのヒーローは現状をどのように見ているのか。けがを抱えながらも、1991年に夏の甲子園で準優勝――。そこで今回は巨人などでプレーをした沖縄水産高のエース・大野倫に話をうかがった。
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「高野連もある程度改革に取り組んでいる」
今年から準々決勝後だけではなく、準決勝後にも休養日が設けられているので、高野連もある程度改革に取り組んでいる印象を受けます。
――大野さんが甲子園に出場された時期はほとんど休みがなく、非常にタイトな日程でした。
僕らの頃は3回戦から決勝まで休みがなかった。僕はそこでうまく最大4連投のスケジュールにハマってしまったので、一番酷な日程で戦ったんです。
でも、今年から最大で2連投ぐらいになったので、十分に選手も守られるようになりました。今後は投手のイニング制限や球数制限に取り組んでもらいたいです。
――日本の夏は年々暑さが増しています。そもそも9イニングではなく、7イニングにするなど、回数を制限して選手の負担を減らすのは難しいのでしょうか? インターハイのサッカー競技は試合時間を短くして暑さに対応していました。
野球は9回のスポーツ。7回にするのは現実的ではない。そうなるのであれば、僕は反対をしたい。複数のピッチャーで1試合のプランをすれば、9回で試合はできます。サッカーはずっと動きっぱなしですが、野球は小休止があるスポーツなので。
「プロから下まで野球界も組織として一つになってほしい」
丸刈りではなく長髪の高校も増えてきました。時代に沿った高校野球になってほしいです。野球だけが取り残されているところはあるんです。ベースボールだったら、世界的な視野で動いている。米国であれば、スマートピッチとか、シーズンオフ制。野球をやらない時期はサッカーやアメリカンフットボールもするんです。
ベースボールは世界的に見ても育成面でも最先端をいっている。だけど、野球はまだ軍隊方式の名残があるし、入場行進も軍隊行進です。確かにそういう厳しさを追求して強くなるのはあるけれど、違う視点もあるのが今の時代。伝統だけを守り続けていくと、野球を始める子供達がいなくなる。そこまでの危機感を持ってやってほしい。
実際に今、野球をやっている子供達が減っている。今まではあぐらをかいて、何もしなくても野球をやっていた。その前提のもとで野球の歴史は作られてきたけれど、いまは子供達に野球を選択してもらう時期にきている。最高峰のプロから下まで野球界も組織として一つになってほしい。サッカー界から学ぶこともたくさんあると思います。球数制限よりも、組織の一本化。野球を始めて続けてもらい、育成をしていくこと。それを将来につなげていくべきです。
――他のスポーツから学べるとのことですが、具体的にサッカーからは何を学べそうでしょうか?
やっぱり、一貫性ですね。上から下までの組織があって、育成ができる。上から下まで目がいき届いています。野球は団体によってルールも考え方も違っています。
「12球団がJリーグのようなユースを作るべき」
極端に言えば、Jリーグのようなユースチームを作って、そこで育成するのもありだと思うんです。12球団がチームを持てば、リーグ戦もできますし、登板間隔もあけて投げられます。高校野球みたいに連戦連投という負担が大きい道を選択しなくてもいい。12球団がユースを作るべきではないでしょうか。
――それは高校レベルから作ったほうがいいのか、それとも中学レベルからやったほうがいいのでしょうか?
楽天はシニア(東北楽天リトルシニア)を持っていますが、小学校レベルからあるといいと思います。小学校レベルで12球団がチームを持っているけれど、これは一定期間、大会のためにやっているだけ。年間を通じて、育成に取り組んで見てもいいと感じます。
子供たちが選択できるように、カテゴリーを作ればいいんですよね。今言ったみたいなユース、現状の甲子園に行きたい子供は高校野球。中には趣味程度にやりたい高校生もいるはず。カテゴリーを増やせば、それもできる。現実的にはまだまだ難しいけれど、日本のプロ野球が高野連に気を使わなければ、僕はユースを作れると考えています。
でも、まだ野球界が一本化されていない。子供達のコンディショニング、けが、疲労、酷使から守るためには日程的な幅を広げるのが一番です。いまは約3週間ほどで大会をやっていますけれど、1カ月から1カ月半まで伸ばせるのか。そこは難題ですが、それができれば、連投をしなくても良くなる。一旦、球数制限も棚上げできるのではないでしょうか。
大野倫
【松尾祐希】
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