日本一胴上げ投手が笑顔のトライアウト プロで輝きを放った強気の投球を披露

田尻耕太郎
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「甲子園で家族に見せられて良かった」

2010年日本シリーズ第7戦、最後の打者をショートゴロに打ち取り、マウンドで高々と右手を突き上げた伊藤を中心に、日本一の歓喜の輪が出来上がった 【写真は共同】

 その日の甲子園は季節外れの陽気に包まれていた。暖かくて、そしてとても温かくもあった。

 11月12日、プロ野球12球団合同トライアウトが行われた。ファンのために開放されたスタンドはバックネット裏と内野席のみだったが、まるで公式戦のようにぎっしり超満員になった。だが、普段の熱気とは違う雰囲気。汚いヤジは飛ばない。どのチームのユニホームに対しても登板する投手やバッターボックスに向かう打者の名前がアナウンスされるたびに大拍手が沸き起こり、それが銀傘に反響して大音量を作り出した。独特な雰囲気だった。

「楽しかったです。本当に楽しんでやれました。甲子園という素晴らしい球場で投げている姿を妻と3人の子どもにも見せることができて良かったと思っています」

 笑顔でそう振り返ったのは、今オフに9年間プレーした千葉ロッテから戦力外通告を受けたリリーバーの伊藤義弘だった。

 楽しかった――。この人生を懸けた大一番でどうしてそんな言葉が出せるのか。妙な緊張もしなかったという。やはり経験がものをいうのか。
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著者プロフィール

 1978年8月18日生まれ。熊本県出身。法政大学在学時に「スポーツ法政新聞」に所属しマスコミの世界を志す。2002年卒業と同時に、オフィシャル球団誌『月刊ホークス』の編集記者に。2004年8月独立。その後もホークスを中心に九州・福岡を拠点に活動し、『週刊ベースボール』(ベースボールマガジン社)『週刊現代』(講談社)『スポルティーバ』(集英社)などのメディア媒体に寄稿するほか、福岡ソフトバンクホークス・オフィシャルメディアともライター契約している。2011年に川崎宗則選手のホークス時代の軌跡をつづった『チェ スト〜Kawasaki Style Best』を出版。また、毎年1月には多くのプロ野球選手、ソフトボールの上野由岐子投手、格闘家、ゴルファーらが参加する自主トレのサポートをライフワークで行っている。

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