FC今治といわきFCが全社で敗退した理由 「本命」不在の大会から何が見えたのか?

宇都宮徹壱

地域CLの前哨戦としての全社

今回の全社では開催地枠として出場した今治。関大FCとの初戦では4−1で完勝したが2回戦で敗退 【宇都宮徹壱】

 J1リーグのセカンドステージが大詰めとなった10月29日、東京のJFAハウスにて、全国地域サッカーチャンピオンズリーグ(地域CL)2016の組み合わせ抽選会が行われた。

 昨年まで「地域決勝」もしくは「地決」の名で親しまれてきた全国地域リーグ決勝大会は、第40回大会を迎える今年から地域CLとして新たな歴史を刻むこととなったが、名称が変わってもレギュレーションの過酷さに変わりはない。北は北海道から南は九州まで、全国9つに分かれた地域リーグに所属する「上を目指す」クラブは、各地域で優勝し、なおかつこの地域CLで上位成績を収めなければ、全国リーグであるJFLに昇格することはできないのである。

 まずは抽選会の結果をご覧いただくことにしよう。今大会に出場する12チームは、以下の3つのグループに振り分けられることになった。

Aグループ(愛媛会場):ノルブリッツ北海道FC(北海道)、FC今治(四国)、ヴィアティン三重(東海/全社枠)、SRC広島(中国)

Bグループ(富山会場):三菱水島FC(中国/全社枠)、FC刈谷(東海)、コバルトーレ女川(東北)、アルティスタ東御(北信越)

Cグループ(山梨会場):鈴鹿アンリミテッドFC(東海/全社枠)、アルテリーヴォ和歌山(関西)、JFC MIYAZAKI(九州)、東京23FC(関東)

 ここで「全社枠」について説明しておく必要があるだろう。全社枠とは、全社(全国社会人サッカー選手権大会)の上位3チームに与えられた地域CLの出場権である。この全社は、32チームによる社会人チームのトーナメント戦なのだが、5日間連続で試合が行われる世界でも類を見ない過酷な大会として知られる。今年は10月22日から26日まで、愛媛県で開催されており、1位三菱水島、2位鈴鹿、3位三重が全社枠を獲得した。

 一方で全社は、この年の地域CLの行方を占う前哨戦と位置づけることも可能である。もっとも、すでに地域CLの出場権を得ているチーム(いわゆる「権利持ち」)は今治と東京23の2チームのみ。それでも、普段はなかなかニュースにならないカテゴリーの「今年のトレンド」は俯瞰することができる。本稿では、今年の愛媛全社を総括することで、11月11日から始まる地域CLを展望する手がかりとなれば幸いである。

夢破れた「全社懸け」の強豪たち

「全社懸け」で今大会に臨んだ福井。PKによる失点が決勝点となり、彼らの今シーズンは終わった 【宇都宮徹壱】

 全社という大会に出場する32チームは、そのすべてが全社枠の獲得を目指しているわけではない。「ウチはあくまで力試しとして参加しています」と言い切る監督もいるくらいである。一方で「権利持ち」のチームは、できればこの大会で連戦のシミュレーションはしておきたい。とはいえ、全社で5連戦もしてしまうと、対戦相手に研究されてしまうリスクもある(実際、地域CLの出場チームは、スカウティングのスタッフを愛媛に送り込んでいたようだ)。

 当然、この全社を勝ち抜いて、是が非でも全社枠を獲得しなければならないチームもある。北信越リーグ2位のサウルコス福井、関東リーグ2位のVONDS市原FC、東北リーグ3位のFCガンジュ岩手、中国リーグ2位の松江シティFC、四国リーグ2位の高知ユナイテッドSC、九州リーグ2位のテゲバジャーロ宮崎などなど。これらのチームは、将来のJリーグ入りを目指しながら、それぞれの地域でチャンピオンになることができず、全社枠獲得にすべてを懸けていたのである(地域リーグウォッチャーは、これを「全社懸け」と呼ぶ)。

 今大会の「全社懸け」のチームで、個人的に印象に残ったチームが2つある。まず福井。松本山雅FC、ツエーゲン金沢、そしてAC長野パルセイロといったライバルたちが「卒業」して以降、福井は北信越リーグで無敵の存在となっていた。12年から15年まで4連覇して地域決勝に連続出場。しかし、どうしても全国の分厚い壁を突破できないまま、今季はアルティスタ東御に5連覇を阻まれてしまう。「全社懸け」で臨んだ今大会では、2回戦で対戦した三重に決められたPKによる1点に沈み、その時点で彼らの今シーズンは終了した。

 もうひとつの印象的な「全社懸け」は、市原である。かつて清水エスパルスを率いたセルビア人指導者、ゼムノビッチ・ズドラヴコ氏を監督に迎えた市原は、福井とは違った意味で地域CLの舞台を渇望していた。今年の決勝ラウンドは、彼らのホームのゼットエーオリプリスタジアムで開催されるのだが、実は2年前の大会でも同スタジアムは決勝ラウンドの会場に選ばれている。しかし1次ラウンドで敗退していた市原の選手は、この時は運営スタッフとしてライバルたちの戦いを眺めるしかなかった。「今度こそ自分たちがあの舞台で」──そんな彼らの想いは、2回戦で潰えてしまう。延長戦の末に市原を打ち倒したのは、福島県2部ながら全社に出場して注目を集めていた、いわきFCであった。

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著者プロフィール

1966年生まれ。東京出身。東京藝術大学大学院美術研究科修了後、TV制作会社勤務を経て、97年にベオグラードで「写真家宣言」。以後、国内外で「文化としてのフットボール」をカメラで切り取る活動を展開中。旅先でのフットボールと酒をこよなく愛する。著書に『ディナモ・フットボール』(みすず書房)、『股旅フットボール』(東邦出版)など。『フットボールの犬 欧羅巴1999−2009』(同)は第20回ミズノスポーツライター賞最優秀賞を受賞。近著に『蹴日本紀行 47都道府県フットボールのある風景』(エクスナレッジ)

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