脅威を与えられなかった今治スタイル 天皇杯漫遊記2016 讃岐vs.今治
52大会ぶりに関西で決勝戦
今年も天皇杯の季節がやってきた。1回戦はPikaraスタジアムでの讃岐対今治を取材 【宇都宮徹壱】
天皇杯は前回の95回大会で、大きなレギュレーションの変更があった。まず、高校やユースなどの第2種加盟登録チームの参加が不可となり、ACL(AFCチャンピオンズリーグ)に出場する4チームは4回戦からのシードとなった(今回、該当するサンフレッチェ広島、ガンバ大阪、浦和レッズ、FC東京は、いずれもラウンド16までに敗退となったが、このレギュレーションが適応される)。また、J2の22チームと昨シーズンのJ2・2位(ジュビロ磐田)とプレーオフ昇格チーム(アビスパ福岡)が1回戦から出場するのも前回と変わらず。J3勢は予選からの出場で、栃木SCとY.S.C.C.横浜、SC相模原、藤枝MYFCは県予選で敗退した。
基本的なレギュレーションは前回大会のものを踏襲する一方、若干の変更点もあった。アマチュアシードがJFLファーストステージ優勝チーム(前回はヴァンラーレ八戸)から、全日本大学サッカー選手権大会の優勝チーム(今回は関西学院大)になった。大学勢にシードが与えられるのは、第91回大会以来5年ぶりのことである(ただしこの大会までは、総理大臣杯全日本大学サッカートーナメントの優勝校が出場していた)。
そして今大会最大の注目点は、2017年1月1日の決勝が大阪の吹田スタジアムで開催されることであろう。決勝の会場については日産スタジアムという案もあったようだが、新国立競技場が建設中ということを考えれば、いったん関東圏を離れて開催するというのは妙案だったと思う。しかもサッカー専用スタジアムでの開催となれば、それだけでも話題性があるし、前回大会の覇者がG大阪であったことを考えても十分に説得力の感じられる決定と言えよう。ちなみに関西圏での天皇杯決勝は、神戸の王子運動場で開催された第44回大会以来、実に52大会ぶりのこと。八幡製鉄対古河電工による決勝戦は、延長戦を終えても0−0のスコアのままとなり、両者優勝となっている。
四国リーグでしのぎを削ってきた讃岐と今治
ホームの讃岐はJ2リーグの19位。今治との公式戦は、四国リーグ以来6年ぶりの対戦 【宇都宮徹壱】
四国リーグが8チームによって開幕したのは、1977年のこと。当時の資料を読み返してみると、現在のJクラブとのつながりが発見できて興味深い。「オリジナル8」の中には、のちにJSL(日本サッカーリーグ)2部にまで上り詰める帝人松山、徳島ヴォルティスの前身である大塚製薬、讃岐の前身である高商OBクラブも、四国リーグのオリジナルメンバーとして名を連ねていた。ちなみに愛媛FCの前身、松山クラブが四国リーグに参戦したのは87年のことである。
1956年設立の高商OBクラブはその後、香川紫雲FC、サンライフFC(地元消費者金融と5年間のスポンサー契約を結んでいた)、高松FCと名前を変え、06年にカマタマーレ讃岐と名称変更。その香川紫雲時代の91年、初めて四国リーグに昇格した今越(いまお)FCこそ、FC今治の前身である。今越は1シーズンで県リーグに降格となったが、10年後の2001年に四国リーグに復帰。04年からは愛媛FCのセカンドチーム「愛媛しまなみFC」となり、讃岐がJFL昇格を果たす10年までの10シーズン、両者は四国リーグでしのぎを削ってきたのである。
確かにFC今治は、岡田オーナーを迎えた14年11月をもって、クラブの体制は大きく変わった。運営会社が変わり、スポンサーもチームカラーもエンブレムも変わった。しかし、今治を「設立されたばかりの新しいクラブ」と認識するのは大きな誤りだ。今越FCのさらに前身にあたる大西SCが設立されたのは1976年。何度か名称変更はあったものの、実は40年にわたる立派な歴史を有したクラブなのである。そんな紆余曲折(うよきょくせつ)を経た讃岐と今治。10年の四国リーグ以来、実に6年ぶりとなる公式戦で、両者はどんなサッカーを見せてくれるのだろうか。