虎の遊撃手に定着! 北條史也が語る 「自分の実力とは考えていない」

週刊ベースボールONLINE

「気持ち悪かった」初の遊撃スタメン

後半戦からショートのレギュラーに定着した北條 【写真:BBM】

 7月27日東京ヤクルト戦(甲子園)、阪神のスタメン表の遊撃手の欄に2004年から12年間その座を守ってきた鳥谷敬の名前は記載されておらず、大和の名でもなかった。代わりにあった名が、北條史也。開幕1軍を勝ち取り、冷静に自分の生きる道を見出した男の光に金本知憲監督は期待し、抜てきした。北條自身は、いまだに「自信はない」と言うが、圧倒的な練習量でシーズン最後までショートのスタメンを張り続けている。

――今季初めて1軍で1シーズン活躍して、疲れはありますよね。

 ……疲れがあるとか、言っていられないですね。ただ、ショートの先発で使ってもらいだしてから、試合後の疲れはすごいです。

――勝ったときも、負けたときも同じような疲れでしょうか。

 勝ったら「ああ終わったあ」という感じなんですが、負けたらその倍以上の疲れで、あまり多くを話したくないんです。

――しかし、その感覚が味わいたくて、プロで活躍したいと思っていた。

 僕が思い描いていた以上の疲労感があります。勝ったらもっと爽快感があると思っていましたから(笑)。2軍とも全然違いますし。

―― 試合前の準備の段階から、いろいろと1軍は違うと感じていますか。

 ショートは守備範囲が広いので、練習をするだけでも疲れます。でも試合前になると気持ちを高ぶらせて集中しているので、疲れは感じませんが、その分試合が終わった後、ドッとくる感じです。

――その疲れを取るためにしていることはありますか。

 試合直後は動きたくないのでロッカーのイスに座ってジッとして、スマホをいじったりして、気分転換をしています。

――ショートのスタメンを張る前は、二塁、三塁を守ることが多かったですが、やはりいずれショートを、という気持ちはあったんですよね。

 開幕時は、まずは試合に出ることができたらどのポジションでも守りたいと思っていたのが本音です。

――7月27日のヤクルト戦(甲子園)で先発ショートに抜てきされました。

 今季、まさかショートを守るとは思っていなかったので……「ショートでいくぞ」と言われたときは、練習のときから緊張と不安から気持ち悪かったです(笑)。

――やってやるぞ、という気持ちではなかった。

 それは試合が始まってから、そういう感じで切り替えられました。集中してやろう、思い切りやろうと思えましたので。でも試合が始まる前は……。

――スタメンを聞かされたのはいつだったのでしょう。

 全体練習前に言われました。そこから試合が始まるまでの3時間くらいは本当に気持ち悪かった。ただ、前日に言われなくてよかったなあ、と思います。多分、寝つけなかったと思いますので。

――それ以降、スタメンショートが続いています。あらためて難しさなどは感じていますか。

 ファームとは違い、捕ったらすぐに送球しなければセーフになりますし……。また、一瞬でも気を抜くとエラーにつながりますし、一歩目の反応が悪いと、間を抜かれてしまいます。もう、1球1球気が抜けないです。でも、難しさはどの試合でも一緒ですね。

――とにかく守備では一歩目を大事にしている。

 そうですね。一歩目が合えば難しい打球でも、自然と捕りやすい型に持っていけるので、そこは意識してやっています。投手が足を上げていったときに捕球体勢に入っていくのですが、ショートからは捕手のサイン、打者のバットの軌道が見えるので、集中していれば一歩目がうまく踏み出せると思っています。

――二塁もショート同様にバットの軌道などを見ることができます。

 見る角度が違いますよね。僕はプロに入ってから二塁をやり始めたので、ショートから見る景色がやはり一番なじみがありますし、見やすいです。

――スタメンで出場し続けることで、対戦打者のスイング軌道が分かり、守りやすくなる部分はあるのではないですか。

 そのとおりですね。最初は何も分からずに守っていた部分が多かったんですけど、もらったデータとともに、たとえば「この打者は思った以上に、二遊間の打球が多いなあ」という僕なりの経験も生かせるようになっている部分はあります。ある打者の傾向として、この変化球でこのコースにいった場合は、必ず同じ方向に打つ打者がいたりしますので、そういうのも経験となって守りの参考にはなっています。

「首脳陣からチャンスをいただいただけ」

レギュラーとして経験を積むことで、守備も向上しつつある 【写真:BBM】

――その中で、さらに課題が見つかったことはありますか。

 ときにですが、試合が始まって、送球をしたときに、うまく指にボールが引っかからない、イヤな感じがするときがあるんです。そういうことを減らしていきたい。常に同じような感覚でしっかり送球しなければいけないと思っています。

――感覚は常に同じにしておかないとレギュラーは務まらないということですね。

 そうです。また甲子園は、グラウンドが柔らかいなあ、と感じていても打球が跳ねたり、伸びたりすることがあるんです。1試合1試合土の状態が違うんですね。そこも試合の中で瞬時に見極めていかないといけません。

――人工芝のほうがいいですね。

 いや、実は昨年までファームが長かったので、人工芝の球場はあまり経験がないので……。なかなか慣れないですね。守りに関しては自信がないので、練習しかないです。

――でも、もともとは守備にも自信はありましたよね。

 プロに入って、先輩たちのプレーを見て、打撃を見て、大変な場所に来たと最初に思ったので、自信はなくなりました(笑)。練習するしかなかったです。あとは試合で思い切っていくだけですね。

――その中で、4年目でスタメンを張る選手にまでなりました。

 首脳陣の方々にチャンスをいただいただけなので、自分の実力で取ったなどということは考えたこともないです。もっとも、鳥谷さんやほかの先輩方やヘイグなどが本調子だったら、僕にはチャンスはなかったと思うんです。

――運も実力のうちです。

 そうなんですかね。でも、今年は運はあったのかなあ、とは思っています。

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