タイは日本に勝てるとは思っていない? チョンブリFCマネージャー・小倉氏に聞く

宇都宮徹壱

タイ代表とW杯アジア最終予選第2戦を戦う日本代表。ライバルの実力は? 【写真は共同】

 6日の21時15分(日本時間)にキックオフを迎える、ワールドカップ(W杯)アジア最終予選第2戦で日本はタイと対戦する。初戦のUAE戦を落としている日本としては、是が非でも勝たなければならない試合だが、アジアにおける日本の優位性が揺らぐ中、かつてはさほど脅威を感じていなかったタイについても、われわれは警戒しなければならなくなった。

 では、タイ代表の実力はどの程度のものなのか。フォーマットは違うものの、彼らが2002年以来、久々に最終予選に進出した要因は何だったのか。注意すべき選手は誰か。そしてどのような試合展開が予想されるのか――。それらの疑問に答えていただいたのが、チョンブリFCのインターナショナル・マーケティング・マネージャーを務める小倉敦生さんである。

 小倉さんは2012年、ひょんなことからタイの名門クラブのチョンブリのスタッフとなり、以来4年にわたりタイのサッカー界の動向を俯瞰してきた。チョンブリはたびたびACL(AFCチャンピオンズリーグ)にも出場しているので、タイと日本との相対的な力関係にも知悉(ちしつ)している。多忙を極める小倉さんに、決戦前夜に話を伺うことができたので、ここに公開することとしたい。

タイ代表の躍進をもたらした要因とは?

──A代表での対戦は8年ぶりとなるタイ代表ですが、現在の実力はどのようなものでしょうか?

 私は現場寄りの人間ではないので、あまりうかつなことは言えませんが、昔に比べると組織的になってきていると言われていますね。実際、国内リーグでも組織的なサッカーを志向するクラブは増えていますし、選手のメンタルも変わりつつある。タイの選手はよく内弁慶と言われてきましたけれど、ブリーラム(・ユナイテッド)などはACLのアウェーで結果を残しているので、メンタル面での変化も感じられます。あと、タイのサッカー協会が変わったのも大きい。今年になって、ビタヤ(・ラオハクル)さんがテクニカルディレクターになりましたし。

──ビタヤさんはかつてヤンマーディーゼルサッカー部やヘルタ・ベルリンでプレーして、チョンブリやガイナーレ鳥取でも監督をされていた、あのビタヤさんですよね? 確かタイの協会とは、あまり関係がよくなかったと聞いていますが。

 ところがトップががらりと変わって、ビタヤさんを受け入れたんですよ。外を知っている人間が上に立つと、組織も変わりますからね。これまでタイのサッカー協会は、内輪の人間で運営されていた傾向が見られましたが、今ではチョンブリやブリーラムやバンコク・グラスの人間も関わるようになりました。この変化は大きいと見ています。

 加えて言えば、最近のタイの代表は女子が初めてW杯に出場したり、日本が出場を逃したフットサルのW杯予選を突破したり、まさに上り調子です。今後の彼らのテーマは、A代表で結果を出すことになると思います。

──最近のタイ代表の成長は、協会の変化というのも確かにあると思いますが、一方でタイ・プレミアリーグの成功というのも原動力になっていると思います。いかがでしょうか?

 それはありますね。リーグが注目されて、国内の資産家たちがクラブオーナーになって、それでお金が入ってきたので競技環境もかなり整備されました。実際、お金って大事ですよ。中国のスーパーリーグも資産家が投資するようになって、ACLで優勝するチームが出てくるようになりましたからね。国内リーグが盛り上がって、それが代表人気にも好影響をもたらすというのは、かつての日本を見ているような気分になります。

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著者プロフィール

1966年生まれ。東京出身。東京藝術大学大学院美術研究科修了後、TV制作会社勤務を経て、97年にベオグラードで「写真家宣言」。以後、国内外で「文化としてのフットボール」をカメラで切り取る活動を展開中。旅先でのフットボールと酒をこよなく愛する。著書に『ディナモ・フットボール』(みすず書房)、『股旅フットボール』(東邦出版)など。『フットボールの犬 欧羅巴1999−2009』(同)は第20回ミズノスポーツライター賞最優秀賞を受賞。近著に『蹴日本紀行 47都道府県フットボールのある風景』(エクスナレッジ)

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