ベルトを取って“大谷色”に染める 船木に挑戦の大谷晋二郎インタビュー

リアルジャパンプロレス

船木船木の持つレジェンド王座に挑むZERO−1の大谷晋二郎 【リアルジャパンプロレス】

 リアルジャパンプロレスの『GOLDEN AGE OF THE TIGER』(9月10日、東京・ディファ有明)で第10代レジェンド王者・船木誠勝に挑むZERO−1の大谷晋二郎。“大谷晋二郎のストロングスタイル”をぶつけ王座を奪わんと意気込むが、五輪の話題から熱を帯びた話は、プロレスラーとしての思い、そして自身のメッセージへと広がっていった。

ベルトを取って“大谷色”に

プロレスラーになる前から意識していたという船木との一戦を熱く語る大谷 【リアルジャパンプロレス】

――リアルジャパンプロレスには実に11年ぶりの参戦となります。

 旗揚げ戦とその後もう1度出させてもらって、やっぱり旗揚げ戦でメインで出させてもらって、初代タイガーマスクと戦ったっていうのはずっと残ることですから、僕の中では特別な感じがあります。その団体からまた声が掛かった、求められたっていうことがうれしいですよね。だからこそ結果を出さなきゃと思います。会見では佐山(聡)先生も船木さんもいい試合とか、ストロングスタイルっていうことにこだわっていましたけど、僕は1番に勝つこと、勝利という結果にこだわります。そしてこのリアルジャパンという団体を“大谷色”に染めてみたいなっていう気持ちがあります。

――その“大谷色”ということになるのでしょうか、会見では大谷選手なりのストロングスタイルを見せるという言葉も聞かれました。

 でも「ストロングスタイルって何?」って言われて、正確な答えを言える人っていないと思うんです。けど僕の中にも新日本プロレスで培ったストロングスタイルがあるし、新日本以外のリングで身につけたものとか染みついたものがたくさんある。そういったものをトータルして、新しいストロングスタイルができていると思うので、そういったみんなが思うストロングスタイル以外のスタイルだったら僕はいろんな選手と戦ってきましたし、船木さんよりはるかに自信があります。だから僕はチャンピオンが持っていないものを持っているし、それが何とは言わないですけど、一個人、プロレスラー、いち男として勝負したいです。

――同じく対戦発表の会見では、プロレスラーになるより前、早くから船木選手を意識していたと話をされていました。

 今の時代だったら分からないですけど、あの時代で中卒でプロレスラーになるってなかったんですよね。僕は小学2年の時からずっとプロレスラーになりたいと思っていたので、船木さんが中学を卒業して新日本プロレスに入ってるっていうのが、まだいちファンなのにすごくジェラシーを燃やしていた時期がありました。

――自分の先を越されたというか。

 はい。俺も中卒でプロレスラーになってやるっていう気持ちがあったけど、体が弱かったし当然、中卒ではなれなかった。なので船木優治(当時)って人はスゲえなと。でも、いつか俺の方がすごいレスラーになってやるっていう気持ちを幼い子どもの頃から持っていました。それが今こうやってベルトを懸けて戦うようになったっていうのは感慨深いものがありますけど、とにかくベルトを奪うという、それを最優先にして試合に挑みたいです。

――その上で“大谷色”にリアルジャパンを染めていきたいと。

 ベルトを獲ったら当然そういう色に染めていかないといけないと思います。大谷晋二郎のストロングスタイルが中心になる、リアルジャパンをそういう形にしていかなきゃいけないし、これはチャンピオンになったら誰であっても背負わなきゃいけない宿命だと思います。

船木プロレスを押さえつける

――ファンの時代から長く見てきて、実際に対戦した船木選手の印象はいかがでしたか?

 2年前ですか、うちのベルトのタイトルマッチで戦いましたが、やっぱり己を通すというか、“船木プロレス”というものを誰が相手だろうと押し通している印象があります。だからこそ僕は“この人を倒したい”と思って、その時は負けてしまったんですけど、試合の後で必ずこの人に勝つぞと。その機会を今回佐山先生が運んできてくれたっていうことでしょうね。

――前回の対戦では“船木プロレス”が感じられた?

 僕にだって“大谷プロレス”というものがあると自信を持っていますけど、“船木プロレス”というものを体感できました。僕も誰が相手であろうと我を通すっていう気持ちがありますので、そういった意味で大谷プロレス対船木プロレスの真っ正面からの勝負じゃないですかね。でも、心のどこかに大谷プロレスが船木プロレスを押さえつける、そういう光景を作り上げたい気持ちがあります。

本当に強い人は再び立ち上がる

五輪を見ていて一番気になったのが唯一メダルを獲れなかった渡利選手だと話す大谷 【リアルジャパンプロレス】

――対戦の発表された8月はちょうどリオ五輪開催シーズンでした。大谷選手はご覧になっていましたか?

 はい、五輪もスゴかったですよね。プロレスに近いというとレスリングになりますけど、吉田沙保里選手はみんなも言っていますが、なぜそこで謝るのと。すさまじいプレッシャーに、ある意味打ち勝って、みんなが称えるべき結果だったと思います。

――ほかにも大谷選手独自の視点で注目された選手がいたそうでね。

 僕の中で印象に残っているのは女子レスリングの中で唯一メダルを獲れなかった渡利(璃穏)選手です。女子のレスリングを2日間見ていて、みんなが金と銀を獲って、要はみんな階級の決勝まで行った訳ですよね。その中で渡利選手は唯一1回戦で負けてしまった。めちゃくちゃ悔しいだろうなと思いましたし、僕はやっぱりそう見ちゃうんです。負けた人間を見てしまうというか。金メダルを獲った選手や吉田選手は本当みんな素晴らしい努力をして頑張った。でも、そういった選手たちの声がいろんなところに出ている中で、渡利選手の声はあまり出てこなかった。僕は実際に聞いてみたかったし、彼女は絶対悔しい思いをしているはずです。凱旋するみんながメダルを持っている中、1人なんですよ。でも、何回やられても立ち上がる人が本当に強い人なんだと僕はいつも言っていて、だから渡利選手は絶対これから強くなると思います。アマレスの猛者でもない僕が偉そうに言うことではないですけど、渡利選手はこの悔しさをバネにできるし、武器にしたらこれからスゴくなると思います。こういう言い方は失礼かもしれませんが、渡利選手はここから伸びていくチャンスじゃないかとも思います。

――そういう悔しい思いをバネにして戦ってきた、大谷選手ならではのお話です。

 僕ももうプロレス生活25年目になりますけど、ここぞという時に負けが多いんです。でも、負けた時に“絶対何年掛かっても借りを返すぞ”っていつも思っています。“何年掛かっても俺は借りを返すからな”って、僕に勝った奴みんなに思っています。そういう意味では船木選手もそれにあたると思うし、借りを返さなきゃいけない、倒さなきゃいけない標的の1人です。

――ではプロレスラー大谷晋二郎のメッセージとしては、日常生活の中で悔しい思いがあったら、いずれその借りを返してやると思って自らを奮い立たせて生きていくべきというか。

 僕はいつも子どもたちに、「本当に強い人ってどういう人か分かる?」って聞くんです。そうすると、やっぱりケンカが強い人とか、走るのが速い人とかって子どもたちは言うんですけど、でも僕の考え方はちょっと違って、本当に強い人って何度倒されても立ち上がる人のことを言うんだって。人間誰だっていつかは負けます。そこで立ち上がった人が本当に強い人なんだよと僕は言うんです。だから今回船木さんに関して言えば、1回やられて倒された僕が立ち上がる、ここで立ち上がって船木選手に勝ってベルトを奪い取れば、またたくさんの人に勇気を与えられるんじゃないかという気がします。

――そういったメッセージのこめられた試合でもある訳ですね。


 今回は会見でも言いましたけど、いい試合、ストロングスタイルより勝ちを優先する、そういう思いで向かいます。でもプロレスというのはいろんな戦いがあって、勝敗があって、共通しているのはプロレスを通して元気とか勇気を発信することなんです。だから大谷晋二郎のストロングスタイル、“大谷プロレス”でこのリアルジャパンのリング上でもたくさんの人に勇気と元気を与えたい、そういう試合をしたいと思います。ぜひ会場に足を運んでください。
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