広島球団通訳が語る助っ人マル秘裏話 成功する外国人選手の共通点は?

週刊ベースボールONLINE

ジャクソン(左)と会話を交わす松長通訳 【写真:BBM】

 25年ぶりのリーグ制覇までマジック9に迫っている広島。13勝(6敗)でハーラートップのジョンソンを筆頭に、外国人選手の活躍は頼もしい限りだが、彼らのプレーは、グラウンド内外で支えてくれる通訳の存在があるからこそ。通訳として広島に在籍13年目の松長洋文氏にこれまでの思い出を語ってもらった。

異色の経歴から通訳に転身

 松長通訳は異色の経歴の持ち主だ。2004年に広島で通訳を務めるまではニュージーランドに在住し、日本から自動車を輸入・修理し、現地のディーラーに販売するエンジニアの職業に就いていた。

 日本に帰国し、英語を使った仕事をしたいと就職活動を行っていたところ、知人からの紹介で広島の通訳に応募し見事合格。帰国から2カ月足らずでのとんとん拍子だった。

 それまで通訳の経験はなく、野球部に所属していたのは高校まで。助っ人だけではなく日本人の選手やコーチからも多くのことを教わりながら、毎日が勉強の日々を送っていた。

「最初、特に戸惑ったのが野球独特の言い回しですね。例えば打撃コーチに『カベをつくって打て』と言われた場合、英語で『メイク・ア・ウォール』と直訳しても、選手は『は?』という感じで(苦笑)」

 つまりは「体を開くな」ということなのだから、この場合は「ステイ・スクエア(直角に保つ)」という言い回しになる。そんなすり合わせをしながら、徐々に通訳としての経験を深めていった。

 大きな影響を受けたのが06年に監督に就任したマーティ・ブラウン氏だった。「ブラウン監督は野球に関してとにかく真剣で熱い。何事も包み隠さずすべて話す方でしたね」

 ブラウンはほめて伸ばすアメリカ式。だが、持ち上げる言葉をそのまま選手に伝えても、日本人は構えてしまうところがある。就任1年目は文化の違いに戸惑っていた部分もあったというが「アメリカはこうだ」「日本はこうだ」と話し合いながら次第に距離を詰めていった。

「いまだに強く印象に残っているのが、『変化というものは待つものじゃないんだ。自分の手で起こせ』とよく教えてもらったことですね。そういった勇気づけられる言葉をもらいました」

 日米のさまざまな違いを身をもって体験しながら、外国人とチームの橋渡し役を務めてきた。

選手それぞれの性格に応じて対応

 現在、1軍ではジョンソン、ジャクソン、ヘーゲンズ、エルドレッドと4人の助っ人が活躍している。「ジョンソンは寡黙な職人タイプ。野球に関してすごくプロフェッショナルで、ルーティンは崩さず、自己管理を徹底しています。ジャクソンは反対にとにかく明るいですね。ヘーゲンズは漢字の起源などを教えるとすごく喜んでくれます。シーズン中にはチームから先発転向の指示がありましたが、『十分に対応可能だ』と即答したのも驚きでした。日本でのプレー経験が長いエルドレッドは助っ人たちの先輩的存在。何かあるとまずはエルドレッドを立てて、ほかの選手に伝えてもらうようなこともたまにお願いしています」とそれぞれの性格を明かす。

 だが、在籍している助っ人は彼らだけではない。ルナやプライディ、デラバーなど、ファームで汗を流す選手がいるからこそ、1軍選手の活躍があると語る。

「以前はファームを担当していた分、昇格できない選手の気持ちも分かります。冗談のメールを送って、反応を見ながら『最近どう?』と聞いてみたりもしますね。プライディは子どもに日本語のミドルネームをつけようと考えていて、漢字を交えながらアイデアを交換したりもしています。1軍の戦力は、ファームの選手層の厚さがしっかりしているからという部分も大きい。ファームにいる外国人選手も大切なカープの一員として、全力でサポートしていきたいですね」

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