広島球団通訳が語る助っ人マル秘裏話 成功する外国人選手の共通点は?
活躍を共有できることが幸せ
広島助っ人陣の“先輩的存在”であるエルドレッド 【写真は共同】
「『日本に興味を持つ選手』『日本食が食べられる選手』『自分の力で切り拓こうとする選手』ということがポイントですね。移動ではタクシーしか使わず、電話してきて『ドライバーに行き先を伝えてくれ』という選手はなかなか成功できない。『どうやったら新幹線のチケットを買える?』『レストランではどう注文すればいい?』と自分から聞いてくるような小さな積み重ねが、彼らの日本での生活をスムーズにしてくれます」
そうやって多くの経験をともにしてきた選手が試合でヒーローになることこそ、通訳のやりがいだ。目前で一緒に苦しみを乗り越えてきた選手が、一振りや1球で試合を決めたシーンを共有できること。それが最も幸せを感じる瞬間だという。
今季はさらにうれしい知らせがあった。2年目のジョンソンがシーズン中には異例の来季からの3年契約のオファーを受け、17年からも広島でプレーすることを選択したのだ。
「契約のオファーをもらえたのはチームに貢献してきたという証しだと思います。昨季は1安打完封勝利という素晴らしいスタートでしたが、苦しんだ時期もありました。助っ人として日本に来ている以上、僕らには想像できない苦労があります。アメリカに残してきた家族や友人と離れて生活するなど、さまざまな犠牲を抱えて来日しているはず。しかし、彼は一番に『決断には時間がかからなかった。ファンのことを考えればすぐに決断できた』と言ってくれました。その言葉を聞いたときにはすごくうれしかったですね」
カープでプレーする助っ人の多くが口にする言葉がある。
「世界のどこに行っても広島のようなファンはいない。雨が降っていても、負けていても、次の日には仕事があっても、ナイターで夜10時を過ぎても応援してくれるんだ」
選手がカープを誇りに思ってくれるよう、そしてファンが選手を心から応援してくれるように、これからも陰で支えていく。
松長通訳が思い出の助っ人を語る
日本文化に精通していたフェルナンデス 【写真:BBM】
07年に在籍したナックルボーラーのフェルナンデスとは野球以外のことも多く話しましたね。彼から教えてもらったフライフィッシングのタイイング(フライの作り方)は今も続けています。彼はアメリカのユタ州出身で、オフの間はずっとフライフィッシングをしていたそうです。ユタ州がどれだけ素晴らしい場所かということも力説していました。
すごく驚かされたのが、春のキャンプでマッサージを受けていたときのこと。当時の東国原英夫宮崎県知事がテレビで所信表明演説をしていたのですが、それを見て「オレ、この人知っている!『タケシズキャッスル』で見たことがある」と言ったんです。アメリカでは日本のコメディ番組がDVDになっていて、「風雲!たけし城」も見ていたということ。「王貞治さん、サニー千葉(千葉真一)さん、東国原さんからサインをもらうんだ!」と言って、実際にその後に東国原さんとお会いしたときに、サインだけではなくハグまでしてもらっていました。彼は空手や忍者、映画など日本の文化にとても興味があって、その話もよくしましたね」
(取材・構成=吉見淳司)