女子バド日本人対決、笑顔なき勝利 山口を破った奥原がメダルへ突き進む

平野貴也

山口が「当たって砕けろ」で果敢に挑んだ好ゲーム

攻める姿勢を貫いて奥原に果敢な勝負を挑んだ山口 【写真:ロイター/アフロ】

 試合は、過去の対戦成績で6戦全敗の山口が第1ゲームから飛ばして見応えのある展開となった。五輪開幕前の7月に福井県で行われた全日本実業団選手権の決勝戦(奥原が21−14、21−18の2−0で勝利)のことを考えても、普通に戦っていては勝ち目がない。山口は「いつも最初からラリーをして我慢比べで点を取っていかないといけないという気持ちでしたが、今日は『どうせ今まで勝ったこともないし、当たって砕けろ』という感じでいった」と作戦を変更して臨んだことを明かした。

 結果、第1ゲームは山口が素早い出足でネット前のヘアピン勝負を制し、奥原がクリアに逃げたところでクロスへスマッシュを決めるなど試合の主導権を握って圧倒することに。続く第2ゲームでも山口のショットは、冴えていた。奥原の甘くなったクリアを逃さずにスマッシュでたたき、サイドステップから跳び付いてクロスへドロップを打つなど持ち前のトリッキーな武器をさく裂させた。

 しかし、果敢に向かってくる山口の闘志を受けて勇気とパワーをもらったという奥原は、山口との決定的な差であるフィジカル勝負へと持ち込んでいった。どちらも小柄で、外国人選手と戦う際には、レシーブ力とコントロール力で勝負するタイプ。これにセンスあふれるショットを加えたのが山口で、フットワークとスタミナを持っているのが奥原だ。

「ガッツある、最後まで諦めないプレーを、応援してくれる人たちに約束してきた」と話した奥原は、第2ゲームまで相手をコート奥へ追いやるクリアを多用。山口に攻め続けさせながら、体力を奪っていた。山口も分かってはいたが、攻めなければ勝てない立場では応じるしかない。このゲームで山口が攻め切れず、奥原が耐え切ったところで勝負はあった。

 ファイナルゲームに入ると、奥原はコートの四隅に球を散らしてフットワーク勝負を挑む。疲弊した山口は付いていけず、ミスが増えた。最後は、奥原が打ったスマッシュを山口が返し切れず、ゲームセットとなった。

メダルを目指し、奥原が準決勝へ

一礼してコートを後にする奥原。メダルを懸けた戦いがここから始まる 【写真:ロイター/アフロ】

 試合後には悔し涙を流していた山口は「今の実力。相手が慣れてきたところで、もう少しパターンに変化を付けられれば良かったけれど、我慢して付いていけなかった。でも、自分らしいプレーをできたんじゃないかと思います」と、清々しく敗北を認めた。

 両者の持ち味が見られた好ゲームだったからこそ、余計にもっと上の舞台で見たかったという思いもある。しかし、この同国対決によって準決勝出場の1枠が確定し、日本がメダルへの挑戦権を得た。勝った奥原は、初のメダル獲得を狙って18日に行われる準決勝に臨む。

「思い通りにいかないなりに、自分の力は出せた。(山口とは)日本代表として直前合宿から一緒に頑張ってきた。2人とも持ち帰るものが(ある条件で)あってほしかった。だから、素直に喜べない。うれしいと言うより『この先、勝負だな』という覚悟を持って、一歩一歩踏み出さなければいけないと思う」

 力強く語った奥原がメダルを持ち帰ることができれば、この激闘の価値もおのずと高くなる。日本のエネルギーは一つに絞られた。

 いざ頂点へ、奥原が挑む。

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著者プロフィール

1979年生まれ。東京都出身。専修大学卒業後、スポーツ総合サイト「スポーツナビ」の編集記者を経て2008年からフリーライターとなる。主に育成年代のサッカーを取材。2009年からJリーグの大宮アルディージャでオフィシャルライターを務めている。

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