2年目の変化と成長、そして覚悟――日本ハム・有原航平が目指すエースへの道

ベースボール・タイムズ

先発投手としての“責任感”

打倒ホークスのキーマンとして周囲からの期待も大きい 【写真は共同】

 ゴロアウトを奪う姿とともに、今季の有原からは“責任感”というものを感じる。大学時代から抱えた右ひじ痛の影響で、昨季はシーズン初登板が5月15日までずれ込んだこともあり、今季開幕前から「去年出遅れた分、今年は開幕からチームに貢献したい」と、事あるごとに口にしていた。

 その決意通りの開幕ローテ入り。2勝目を挙げた直後に「腰椎ねん挫」で19日間の離脱を強いられたが、復帰後は再び力投を続けている。その姿は数字にも如実に表れており、今季の9試合中8試合で7イニング以上を投げ、QS(クオリティ・スタート)率は88.9%の高水準をキープ(昨季はQS率44.4%)している。

 6回5失点で降板した5月31日の東京ヤクルト戦では、「早い回で降板して申し訳ない」と唇を噛んだ有原。「長いイニング」「先発の責任」への拘りを強くしたのは、昨季のクライマックス・シリーズ(CS)だった。

 ファーストステージ第1戦に敗れた後のロッテとのCS第2戦。先発・メンドーサ、2番手・谷元圭の後を受け、有原はプロ入り後初めて救援のマウンドに立った。場面は1対2と1点ビハインドの7回。「中継ぎ専門の投手を差し置いて投げるからには絶対抑えなきゃいけない」。緊張感と責任感を感じながらも、有原は強気のピッチングで2イニングを打者7人1安打無失点に抑え、8回裏の逆転劇を呼び込んだ。

 だが、翌日の第3戦。今度は1対1の6回から登板すると、7回の先頭打者・デスパイネに痛恨の一発を浴びて敗戦投手に。同時にチームもCS敗退となった。ここで得た教訓こそ、「先発の責任」と「初回から強気でいく」ということだった。

壁を乗り越えて新エースとなれるか!?

 思えば、ダルビッシュ有(現テキサス・レンジャーズ)が日本ハムのエースへと変貌を遂げたのも、2006年シーズンの最終戦でプロ入り初の救援登板をしてからと言われている。救援登板後のCSで9回1失点、日本シリーズでは6回3失点&7回1失点の力投を披露すると、その翌年に前年の3完投から一気に12完投へと“責任感”を増して沢村賞を受賞した。ドラフト1位で4球団競合の末に入団した大器・有原も、“先輩”と同じルートを辿ってもらいたいところだ。

 もちろん、まだプロ2年目である。体力を消耗する梅雨入りから夏場にかけてのマウンドへのアジャストも必要。5連勝中は「0」だった被本塁打も、3連敗中は全試合で被弾しており、悪い兆候が出てしまっている。3敗目を喫した6月7日の降板後には「もう少しテンポのいい投球ができれば良かった。悔しさが残ります」と語った有原。今こそ、初志貫徹の「強気のピッチング」を思い出すときだろう。

 1メートル89センチ、100キロの体躯に搭載しているエンジン排気量は規格外のものだ。そして、今季のソフトバンク戦で3戦2勝(0敗・防御率2.22)の彼こそ、「打倒・ホークス」へのキーマンであると言える。まずは3連敗の壁を乗り越え、再び連勝街道に踏み入れたい。そうなれば、「エース」の称号を大谷と二分する日も近いはずだ。

(文・八幡淳/ベースボール・タイムズ)

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著者プロフィール

プロ野球の”いま”を伝える野球専門誌。年4回『季刊ベースボール・タイムズ』を発行し、現在は『vol.41 2019冬号』が絶賛発売中。毎年2月に増刊号として発行される選手名鑑『プロ野球プレイヤーズファイル』も好評。今年もさらにスケールアップした内容で発行を予定している。

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