日本ハムが3年連続盗塁王を輩出した理由 環境、メンバー構成、そして伝統――

ベースボール・タイムズ

受け継がれる“全力疾走”

14年限りで引退した稲葉氏。10年間の日本ハム在籍でチームに“全力疾走”という伝統を植えつけた 【写真は共同】

 広くなった本拠地球場とドラフト戦略、若返ったメンバー構成…。ここまで挙げた環境の変化が3年連続での盗塁王輩出の大きな要因であることは確かだろうが、それ以上に日本ハムのチーム内に根付いている、ある“伝統”が理由になっていると推測される。

 その伝統とは、「全力疾走」――。その教科書になったのが、日本ハムがFAで唯一獲得した男、稲葉篤紀(現チームSCO)である。現役生活20年、05年に日本ハムに加入した稲葉は、ヒットを打っても、凡退しても、攻守交替の場面でも、どんな時でも常に全力疾走を怠らなかった。

「決して諦めず、常に先の塁を狙う」

 稲葉が貫いたこの姿勢は、若手陣の手本となり、日本ハムのチームカラーとして今も受け継がれている。日本を代表するスラッガーへと成長した4番・中田翔であっても、この励行を怠らない。稲葉がチームに植え付けた「全力疾走」は、メンバー全員に植え付けられた共通認識になっている。今後、この“伝統”が受け継がれていく限り、走塁に対する高い意識は保たれ、盗塁王も輩出され続けるだろう。

4人目の盗塁王候補は……

“伝統”が息づく中、若き才能が次々と開花の時を迎えたことで、チーム内のライバル関係には拍車がかかっている。

 5月26日現在、西川がリーグ1位の13盗塁をマークしており、12盗塁で2位の糸井の後、3位には中島が10盗塁で続いている。4秒未満が“俊足”の指標とされる一塁到達速度で3.17秒、12秒未満がそれとされる三塁到達速度で10.68秒をそれぞれ計測するなど、高い身体能力を誇る西川。14年の43盗塁から、昨季は精彩を欠いて30盗塁に止まったが、今季は再びチーム内&パ・リーグの盗塁王レースを先頭に立って引っ張っている。

 この西川が“4年連続”の本命であることは間違いない。仮に“4人目”を探すならば、15年に101試合に出場して18盗塁をマークした岡大海だろう。けがが多く、今季も出遅れているが、右打者ながらルーキー時のオープン戦で見せた、遊撃内野安打3本のみでの「猛打賞」は強烈なインパクトだった。この岡に限らず、若手が新たに頭角を現すことで、チーム内に刺激が生まれ、伝統の“全力疾走”も継続されることになる。

 現在、札幌ドームの契約上の問題を伴って新球場の建設も検討されているというが、チームの戦い方、補強戦略の方針は変わらない。今季、5月26日現在での日本ハムのチーム盗塁数は、リーグトップの37盗塁。このままリーグトップをキープすることが“ストップ・ザ・ホークス”への足掛かりになる。4年連続の盗塁王輩出なるか――。ファイターズの“走攻撃”が、ペナントレースの鍵を握っている。

(文・八幡淳/ベースボール・タイムズ)

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著者プロフィール

プロ野球の”いま”を伝える野球専門誌。年4回『季刊ベースボール・タイムズ』を発行し、現在は『vol.41 2019冬号』が絶賛発売中。毎年2月に増刊号として発行される選手名鑑『プロ野球プレイヤーズファイル』も好評。今年もさらにスケールアップした内容で発行を予定している。

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