太田がハーフナーの勇姿に刺激を受ける 同級生との対戦で感じた結果を残す大切さ

中田徹

古巣との対戦で拍手を受けたハーフナー

古巣のフィテッセ戦でゴールを決めたハーフナー(左)。交代時には拍手を受けた 【VI-Images via Getty Images】

 ここ数年、フィテッセの観客動員は振るわず、現地時間4月9日の対ADOデンハーグ戦(2−2)も1万6298人と6割ほどの入りだった。だが、太田宏介(フィテッセ)とハーフナー・マイク(ADOデンハーグ)が出場することもあって、この試合にはオランダ、ドイツから多くの日本人が集まり賑わった。

 7分、早くもハーフナーがチームに先制ゴールをもたらした。前節のフローニンゲン戦(0−1)では数多くのチャンスを逃してしまったハーフナーだが、フィテッセ戦では相手のクリアミスが頭に当たるラッキーなゴール。「前の試合は全然入らなかったのに、よく分からないですね」とハーフナーも試合後に苦笑いをしていたが、それでもストライカーにとってゴールはゴールだ。

 このゴールシーン以上に、日本人ファンにとって忘れられないものになったのが87分、ハーフナーの交代場面だった。終盤、ADOデンハーグが2−1とリードし、ヘンク・フレーザー監督が逃げ切りを図ってハーフナーをベンチに下げようとすると、敵地ヘルレドームの観客から拍手が起こり、「マイキー・ハーフナー」のチャントが轟いた。満面の笑みを浮かべながらファンに拍手を返すハーフナーに、フィテッセのファンは「時間稼ぎだ」と怒ることもなく、しばし時が止まるのを楽しんでいた。これぞ、ハーフナーがかつてフィテッセでの2シーズン半で積み重ねてきたことの証しだろう。

 ハーフナーは感慨深げに語った。

「試合前のアップ(のスタメン発表)で自分の名前が呼ばれた時、何の反応もなかったので『(フィッテのサポーターは自分に対して)冷たいのか』と思っていたんです。だから交代の時、ああなるとは思ってなかったので感動しました。やっぱりうれしいですね。ここは良いスタジアムですし、芝もオランダの中で一番きれい。このチームには良い思い出しかない。今でも応援しています」

持ち味を発揮できない試合が続く太田

 90分にフィテッセはデニス・オリニクの同点弾で2−2に追いついた。アディショナルタイム3分には、FKの折り返しから太田がシュートし、これを相手GKマルティン・ハンセンがつかみ損ねてしまった。ロブ・マース監督をはじめ、フィテッセベンチは勝ち越しゴールが決まったと信じてガッツポーズしたが、相手DFにクリアされてしまった。

「俺も入ったと思ったんですけどね……」(太田)
 
 太田は、オランダに来た当初はハツラツとプレーしていたものの、最近は持ち味を発揮できない。前節のヘルダーラント・ダービーとなったNEC戦(1−2)は13分から途中出場したものの、戦術的な理由でベンチスタートだった。今回のADOデンハーグ戦は、左サイドにウイングを置かず、サイドバックの太田のためにスペースを作る戦術を採ったが、練習のようにはうまくハマらず、チームは中央から攻め続けてしまった。

「練習では俺が高い位置をとって、シンプルにボールを預けてもらってクロス……というのがあったんですけれど、試合になるとみんな『自分が』『自分が』となってしまっていた」(太田)

 そのイライラを払拭(ふっしょく)するかのように55分には右サイドへ気持ちのこもった大きく鋭いサイドチェンジのパス。これには「『ウー』ってなって湧きましたね」と太田に伝わるぐらいファンが反応した。

「ボールが自分に来ない中で、今日は来たほうだと思います。 いつもよりは10〜15メートル高い位置でボールをもらえて、くさびのパスだったり、前へ流すパスだったり、そういう展開に今日はちょっと加われたと思います。ここ何試合かよりはね……」(太田)

太田「拍手をもらったのは結果を認められている証拠」

最近は持ち味を発揮できていない太田だが、ハーフナーの活躍に刺激を受けた 【VI-Images via Getty Images】

 フラストレーションを溜めている太田にとって、年代別日本代表でもチームメートだったハーフナーの勇姿は刺激になっている。

「海外に来て、日本人とやるのは今日が初めてでした。特にマイクは同じ歳で仲も良く、近々会う予定です。マッチアップする場面はゼロに近かったですけれど、マイクが活躍して代表に入ったのは刺激になります。今日のマイクは全然目立たなかったけれど、ラッキーゴールでも結果を残すというのは、『僕もやっぱり結果を残さないといけない』と刺激になります。楽しかったです。マイクが交代する時、拍手をもらったのはここで結果を認められている証拠だと思う。俺もそういう存在になれるよう続けていきたいです」(太田)

 2人が取材を終えてスタジアムを出てきた時には、もう夜10時半になっていた。それでも待ち続けた多くの日本人ファンに、2人は丁寧にファンサービスを続けていた。
  • 前へ
  • 1
  • 次へ

1/1ページ

著者プロフィール

1966年生まれ。転勤族だったため、住む先々の土地でサッカーを楽しむことが基本姿勢。86年ワールドカップ(W杯)メキシコ大会を23試合観戦したことでサッカー観を養い、市井(しせい)の立場から“日常の中のサッカー”を語り続けている。W杯やユーロ(欧州選手権)をはじめオランダリーグ、ベルギーリーグ、ドイツ・ブンデスリーガなどを現地取材、リポートしている

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント