F1プレシーズンテストに全チーム集結 メルセデスは盤石、他チームの状況は?

田口浩次

「W07ハイブリッド」で3連覇を狙うメルセデス 【Getty Images】

 2016年のF1シーズンがついに始動した。開幕戦となるオーストラリアGPの決勝レースは3月20日と約1カ月先だが、開幕に向けた合同テストが2月22日から25日まで、スペインのバルセロナサーキットで行われた。今回の4日間と、3月1日からの最終合同テストが4日間、合計8日間のテストを経て、F1は開幕戦を向かえる。

 今年で3年目を迎えた1.6リッターV6ターボエンジンを搭載した各マシンは、全チーム大きなトラブルもなく走行できる状態でテスト初日を迎えた。こう書くと意外に思われるかもしれないが、じつは全チームが少なくともデータを取れる走行を初日に実現できたのは、新PUを採用した14年以降初めてのことだ。

 F1は世界最高峰のモータースポーツなのだから、本来であれば全チーム参加の合同テストに、全車そろった状態で走るのは当たり前だ……。しかし、PU改革が始まった14年はロータスとマルシャが初テスト欠席、4年連続王者のレッドブルとケータハムがPU不調でタイム未計測、マクラーレンは2日目から参加。15年もフォース・インディアとマルシャが初テストを欠席、名門のマクラーレン・ホンダはまともに走らずその日のトップから18秒遅れという散々な状態、そしてロータスが2日目からの参加となった。

 そうした過去があるからこそ、新規参戦チームも加わった16年シーズン最初のテスト初日から、大きな問題もなく全車が走行した様子に、世界中のF1メディアが「やっと普通になった」と安堵していたのである。(ザウバーは新車「C35」は次のテストから参加予定のため、「C34」をベースに改良を施したマシンでテストに参加した)

隙を見せぬメルセデス

フェラーリは「SF16−H」でメルセデスに迫れるか? 【Getty Images】

 そんな16年シーズンは注目すべき事柄が多いが、各チームを簡単に紹介してみたい。
 まずは横綱相撲を見せるメルセデスだ。マシンは2年連続で王座を獲得した「W05ハイブリッド」「W06ハイブリッド」のイメージをそのまま引き継いだ新車「W07ハイブリッド」。テスト初日156周、2日目172周、3日目162周、4日目185周走行と、ライバルたちを圧倒する走行距離を稼ぎ、PUとマシンの高い信頼性を見せつけた。ドライバーは3年連続王座を狙うルイス・ハミルトンと、今年こそ初戴冠を目指すニコ・ロズベルグの最強コンビ。まったくもって盤石で、現地にいたジャーナリストに様子を聞くと、今回のテストでは隙のひとつも見えなかったという。

「ストップ・ザ・メルセデス!」を掲げる最右翼は、セバスチャン・ベッテル、キミ・ライコネンが組むフェラーリだろう。新車「SF16−H」はPUだけでなく、車体もすべてに手が入れられたフルモデルチェンジとも言えるマシンで、初テストも初日、2日目とベッテルがトップタイムをマーク。昨シーズン3勝を挙げたチームは手綱を緩めることなく、メルセデスの追い落としを狙っている。また、速さには関係ないが、70年代、ニキ・ラウダがステアリングを握っていた時代の「312Tシリーズ」を思い起こす伝統的なカラーリングにも注目したい。

上位2チームを追うのは?

レッドブル「RB12」 【Getty Images】

 次に注目したいのが、レッドブルの新車「RB12」と、その姉妹チームであるトロ・ロッソの新車「STR11」だ。昨年まではどちらもルノー製PUを搭載していたが、パフォーマンスが向上しないルノー製PUを巡ってすったもんだあり、ルノーと一度は決別。新たなPU供給メーカーを模索したが、最新PUを獲得することはできなかった。結果、レッドブルはルノーとビジネス上のパートナーとして復縁(ただし、PUは新スポンサーとなったタグホイヤーというネーミングに)、トロ・ロッソはフェラーリと1年遅れのPU供給を受けることで合意した。

 テストが始まる前は、昨年までのルノー製PUが散々だったことから「トロ・ロッソの方が速いのでは?」と言われていたが、2日目までのテストを見る限り、レッドブルが搭載するルノー製PUの改善が進んだのか、フェラーリにも肉薄するパフォーマンスを見せている。昨シーズンもPUの差が出にくいハンガリーGPで2位と3位を獲得した高いレッドブルのシャシー性能が引き継がれており、ルノー製PUの改善がタイムに現れた形だ。一方、トロ・ロッソは、ルノー製PUよりパワフルと言われたフェラーリ製PUを搭載するが、テストではフェラーリとのタイム差が2秒ほどあり、たった1年とはいえ、型遅れのPUと最新PUとの進化の差を痛感する初テストとなっている。

 そして、レースの展開次第では、あわよくば優勝を狙える実力を持つウィリアムズの新車「FW38」と、ここ数年その良きライバルとなっているフォース・インディアの新車「VJM09」も外せない。どちらのマシンもPUはメルセデス製。ウィリアムズは昨シーズン4度表彰台に上り、フォース・インディアも高速サーキットを得意とするなど、台風の目となるチャンスがある。とくにフォース・インディアは、F1でもトップレベルの風洞施設と言われる、トヨタがケルンに持つTMGの風洞を昨年から使用開始。昨シーズン途中から投入された「VJM08Bパッケージ」は入賞を連発し、ロシアGPで3位を獲得するなど実績も十分。すべてが新しくなった今年はさらなる飛躍を目指している。

 もう1チーム、興味深いチームが、再びワークス体制となったルノーだろう。ルノーは09年シーズン後にチーム運営から撤退し、チームはその後ロータスF1チームとなり、15年シーズン後にルノーは同じチームを買い戻した。ただ、買収の完了が12月終盤まで掛かったため、16年シーズンを戦う新車「R.S.16」のシャシー部分には新たな血を入れる時間はなく、これからルノーの手によって、マシンのパフォーマンスを向上させていくことになる。

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