F1プレシーズンテストに全チーム集結 メルセデスは盤石、他チームの状況は?
ザウバー、マノーにも要注目
マノー「MRT05」 【Getty Images】
そして、マノーは昨シーズン、型落ちのフェラーリ製PUを搭載したマシンでシーズンを戦っていたが、今年はメルセデス製PUとウィリアムズ製ギアボックスを手にしており、「MRT05」は競争力がかなり向上すると見られている。ただし、ドライバーはパスカル・ウェーレインとリオ・ハリアントという新人コンビ。とくにリオ・ハリアントはインドネシア人初のF1ドライバーで、インドネシア国営石油会社プルタミナとインドネシア政府がシート獲得費用をサポートする形でデビューにこぎつけたもので、注目度は高いのだが、その才能はまだ未知数だ。
新参戦ハースは仕上がり上々
新たに参戦するハース。新車「VF−16」は仕上がりの良さを見せる 【Getty Images】
ハースはノースカロライナ州に拠点を持つ、米国で一番人気のNASCARで有名なレーシングチーム。新たにF1チームの拠点を隣の敷地に設立した。経営母体はハースオートメーションという全米最大規模の工作機械メーカーである。工作機械メーカーは世界的には日本メーカーの独壇場で、ファナックや安川電機、マキタなどが世界をリードしているが、ハースオートメーションは年間売り上げ1000億円強ほどあり、世界トップ10を目指す規模の会社である。
NASCARの経験など、レースとの関係は深く、F1参戦に向けてフェラーリとアライアンスを組み、シャシー製作はダラーラが協力、フェラーリ製PUとギアボックスを導入するなど、事実上フェラーリBチームというスタンスで初テストに乗り込んできた。新車「VF−16」は、初日の走行中にフロントウイングを落とすトラブルがあったものの、車体自体には大きな問題もなくテストを進め、テスト3日目には2番手のタイムを出すなど、新チームらしからぬ仕上がりの良さの周囲を驚かせている。
マクラーレンは順調なスタートを切るも…
マクラーレン・ホンダとして2年目のシーズン。「MP4−31」で巻き返しなるか? 【Getty Images】
そうした苦渋を噛み締めたシーズンを経験し、テスト初日に登場した「MP4−31」は、大きなトラブルもなく86周を走り、順調なスタートを切った。ただしトップチームと比べるとまだ競争力には差があり、テスト4日目はノータイムに終わるなど、ここからさらなる開発でどこまでトップチームとの差を詰めることができるのか、開幕戦までのアップデートが気になるところだ。
このように全車そろい踏みで迎えた16年シーズン初テスト。どのチームも、レースに集中し、それ以外のマーケティング的要素は無理をしないスタンスが見えた。というのも2000年前後には、どのチームも派手な新車発表会を行い、その後もリーマンショックが起きた08年までは、派手な新車発表が当たり前だった。
その後、どのチームも新車発表予算を抑えるようになったのだが、今年は本当に質実剛健というか、ネット上での公開と、テスト会場での実車お披露目が全チームに浸透した感がある。トップチームであっても、新車発表予算は削減したか開幕後のマーケティングに割り振ることを公言するなど、予算の割り振りがより実戦的になったようだ。
ただ、質実剛健は大事だが、ファンにとっては派手なイベントも開幕に向けて楽しみたいところ。そんななか、日本のファンには気持ちを高ぶらせるイベントが今年も開催される。鈴鹿サーキットで3月12日、13日の両日に開催される、「2016 モータースポーツファン感謝デー」だ。今年は87年の日本GPに勝利したフェラーリのマシン「F187」をジャン・アレジがドライブする。このマシンは88年まで許された前ターボ時代のマシン。鈴鹿サーキットに行くチャンスがある人は、現在のF1では聞くことができない爆音を満喫し、その翌週に始まる16年シーズンを準備万端迎えられそうだ。