歴史的な快進撃をけん引するカリー 杉浦大介のNBAダイアリー ウォリアーズ編
魅力が凝縮されたネッツ戦の2分間
開幕から破竹の21連勝を続けてきた昨季王者ウォリアーズも、ネッツ戦では第3クォーター途中時点で最大5点のリードを許していたが…… 【Getty Images】
現地時間6日に行われたブルックリン・ネッツ対ゴールデンステイト・ウォリアーズ戦は、第3クォーター途中時点でネッツが最大5点をリード。開幕からリーグ記録の21連勝を続けてきた昨季王者ウォリアーズだが、そろそろ疲れが見えても不思議はない。連勝記録はブルックリンで終わるのか……
しかし、昨季MVPを受賞した名シューターがここで立ち上がる。74−76で迎えた第3クォーター残り2分10秒という場面でレイアップを決めて同点に追いつくと、その後に3点シュート、再びレイアップを立て続けに成功。最後はクォーター終了間際に3点シュートを打ち込み、会場のファンを驚嘆させた。
「ゲームにインパクトを与えられるか、あえて狙ってみた。その後に物事は僕たちにとって良い方向に進んだ。チームには勢いが必要だったし、クォーターを力強く締め括りたかったんだ」
このクォーターだけで16得点を挙げたエースは、試合後に事もなげにそう語った。ここで流れを取り戻したウォリアーズは、結局は114−98でネッツに圧勝。開幕からの連勝記録は22に伸びた(その後、8日のインディアナ・ペイサーズにも勝利し23連勝とした)。1971〜72年にロサンゼルス・レイカーズが挙げたリーグ最長記録の33連勝に近づいている。
「22勝0敗なんてこれまでの人生ではなかったから、難しいことをやっているのは分かっている。過去に誰も成し遂げていないのだから、特別なことをやっているということには気づいているよ」
カリーがしみじみと振り返っていた通り、ウォリアーズの快進撃はすでに歴史的な域に達している。そして、その立役者となっているのが、この27歳のスーパースターであることはもう言うまでもない。
2年連続MVPを視野にさらなる高みへ
シュートアラウンドを終えてロッカールームに戻る途中、カリーはサインをほしがるファンに通路で囲まれていた 【杉浦大介】
そんなカリーの姿を一目見ようと、ブルックリンでの試合前も、開始75分前の時点でシュート練習をする背番号30の周囲にファンが鈴なり。シュートアラウンドを終えてロッカールームに戻る途中には、サインをほしがるファンに通路で囲まれてもみくちゃになった。
「(カリーは)NBAのエルビス・プレスリーだ」
『サンノゼ・マーキュリーニュース』紙のティム・カワカミ記者はそう記していたが、実際に今ではカリーの人気、知名度は完全に全国区になった。
10代の少年のように童顔のカリーは、レブロン・ジェームス、コービー・ブライアントのような超人的な凄みは感じさせない。身長191センチとNBA選手としては小柄で、親しみやすいことも魅力の1つになっているのだろう。最高級のシュート力、軽快なボールさばき、好感の持てる全力プレーでファンを魅了し続ける。
「シュートを打つときでも、他の選手たちを巻き込むときでも、ボール運びをする際も、コート上で創造力が必要なんだ。僕は周囲を圧倒するほどに速いわけではない。スペースを作り出すために、違うやり方を見つけ出す。クリエイティビティー、創造力、洞察力こそが僕が頼りにしている能力なんだ」
依然として謙虚な姿勢を崩さないカリーだが、周囲の誰もがその超越的な能力を認めている。現在の成績を保てば、2年連続となるMVP受賞も有力。そんな偉業を成し遂げれば、今季が終わる頃、レブロンに匹敵する現役ベストプレーヤー候補に名前が挙がり始めても驚くべきではない。