オランダが「ロッベン・システム」へ回帰 ウェールズ戦で見せた現実的な戦い方
消えた「賢くサッカーをする」という長所
守備的な布陣で戦うも、セットプレーから簡単に失点を喫するなど課題も多い 【写真:ロイター/アフロ】
ただし、ガレス・ベイルもアーロン・ラムジーもいないウェールズに2失点を喫したのはいただけない。流れの中ではそれほど崩されなかったオランダ守備陣だったが、セットプレーでの集中力に欠けた。前半アディショナルタイムの失点はCKからハンドでPKを与え、そのPKをGKヤスパー・シレッセンがストップしたものの、リバウンドを蹴り込まれてしまった。「PKだから、失点は仕方ないではないか」という声も出そうだが、リバウンドに対してウェールズがしっかり詰めたのにオランダの選手は傍観者になっていた。
後半、2−2とされた時の失点は、ウェールズのショートコーナーに気づかず、オランダの選手たちがボールに背を向けている内にリスタートされ、まったく守備組織ができておらずに失点したもの。とてもサッカー大国の姿ではなかった。せっかく5バックにして自陣ゴール前を閉めても、セットプレーで崩壊してしまったら意味がない。近年のオランダ代表は「賢くサッカーをする」という彼らの長所が消えてなくなってしまったような気がする。
ともあれ、試合内容を振り返ればオランダ代表の順当勝ちである。これまでのオランダ人だったら、代表チームが伝家の宝刀とも呼べる4−3−3を捨てて戦ったらヒステリックに監督を責めたてる人も出てきたろうが、今回のユーロ予選敗退と負け方の酷さにかなり堪えたせいか、「5−3−2で守備にアクセントを置いて戦うのは、今のオランダ代表にとって現実的」と見る声が多い。しかし、これも「ロッベンがいなければ機能しないだろう」とガラスの足を持つエースのコンディションを気にするメディアもいる。また、「試合途中に5−3−2から4−3−3にスイッチするのは、W杯でも見られたようにオランダ代表にとって簡単」という意見には、久しく忘れていたオランダ人のビッグマウスの匂いがして少しうれしかった。
試したかった「ロッベン抜きの5−3−2」
ストライカーの層が薄いオランダ。ロカディアら新戦力も試しておきたかった 【写真:ロイター/アフロ】
「オランダ代表の5−3−2はロッベン・システムである」と書いておいて矛盾しているようだが、ユーロ予選のほとんどをロッベンは負傷で欠場しており、W杯予選でもそのケースは予想される。だが、爆弾を仕込まれたという噂がある以上、試合開催どころではない。「テロにサッカーが負けた」という声もあったが、ドイツ当局の決断は正しかったと思う。
個人的に一つ惜しんでいるのはウェールズ戦後、急きょ招集されたFWユルゲン・ロカディアを試す機会を失ったこと。3トップを採用するPSVではルーク・デ・ヨングというストライカーの存在が絶対的なため、ロカディアは左サイドで起用されることが多いが、2トップシステムを採用するオランダ代表なら本来のポジションで力を発揮できるのではないかと期待していた。ウェールズ戦では先制ゴールを決めるなどバス・ドストが頑張ったが、今のオランダ代表はストライカーの層が薄い。途中出場でもいいから、ロカディアとクラース・ヤン・フンテラールの2トップを見てみたかったと思う。