名手・四位が語る天皇賞・秋の“色気” 「今年は違う」ディサイファ

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天皇賞・秋制覇へ、ディサイファとのコンビで挑む四位洋文が大一番への“色気”を語る 【netkeiba.com】

 目下3連勝中のラブリーデイ、ヤンチャな逃げ馬エイシンヒカリ、オールカマーで男馬を一蹴したショウナンパンドラなど、役者がそろった感のある天皇賞(秋)。各陣営とも、まさに虎視眈々といったところだが、小島太厩舎が送り出すディサイファもその1頭。手綱を取るのは、名手・四位洋文。ディサイファとの軌跡を振り返りながら、大一番に向けた“色気”を語る。(取材・文:不破由妃子)

四位との初コンビを機に“何か”が変わった

ディサイファに初めて騎乗した際、四位は奥の深さを感じたという(撮影:佐々木祥恵) 【netkeiba.com】

「この馬と一緒にもっと上の舞台を目指したい」

 四位洋文がそう口にしたのは、2014年1月、中山金杯3着時のこと。コンビを組んで6戦目、ディサイファにとっては前走福島記念(4着)に続く二度目の重賞挑戦だった。ご存じの通り、四位といえば、ダービーのトップゴールを二度も味わっている名手。いわく「ダービーを2つも勝たせてもらうと、簡単に“この馬、走るね”なんて言えなくなる」そうで、必然的に馬への評価は辛口だ。そんな感覚の肥えた男の言葉だけに、先の言葉には妙に重みがあった。

 初騎乗は2013年5月25日、東京芝1800mの4歳上500万。欅S出走のアドマイヤロイヤルに騎乗するための東上だったが、そこにかねてより四位を重用する小島太師から騎乗依頼が舞い込んだかたちだ。この時点でのディサイファは、6人のジョッキーが手綱を取り、12戦1勝。500万での足踏みが続いていた。

「それまでに乗ったジョッキーたちから『いい馬だよ』とは聞いていたんだけど、助手さんいわく『みんな手応えに騙されている』と。あまりにも道中の手応えがいいので、後ろからいっても、直線でちょっと仕掛ければぶち抜いて勝つんじゃないかっていうね。実際、返し馬に行ったら、“なるほど。これは騙されるわ”と思った(笑)。いかにも終いが切れる馬のように感じたからね。でも、そういうイメージで乗ったらダメなんだなと思って、徐々にスピードに乗せていく競馬をしてね」

 道中は中団からジックリと。4コーナー手前から徐々にエンジンを掛けはじめ、坂を上がってからは、文字通り弾けた。それまで高い能力がありながら、好位につけても後方からいっても、もう一歩が足りなかった馬。しかし、この一戦を機に“何か”が変わった。

「後々わかったことだけど、結局は馬ごみが嫌だったんだろうね。前に馬を置かずに、あくまでも自分のペースで上がっていきたい馬なんだなって。“馬のなかに入ってしまうと、いざ“行け!”って合図を出してもなかなか行かない。でも、前に馬がいない見通しがいい状態で合図を出すと、スパーン!と伸びる”。そういうイメージで乗ったら、本当にその通りだった。評判通り、いい馬だなと思ったし、なんていうのか……奥の深さを感じたね」

 ちなみに、「今のディサイファは?」と聞くと、「安心してください、(前に馬を)置いてますよ(笑)」と即答。絶妙なタイミングでこの返し。四位さん、アナタはやっぱりおもしろい!

「去年はGIの壁に見事に跳ね返された」

昨年の天皇賞・秋はGIの壁に跳ね返された、しかし「今年は違う」と四位 【netkeiba.com】

 さて、東京の500万を皮切りに、函館の奥尻特別(500万)、日高特別(1000万)と3連勝。「馬が力を付けてきたときに、たまたま乗せてもらっただけ」と、本人はあくまで謙遜するが、それだけではないと思う。以前、安藤勝己がこんなことを言っていた。「四位くんは抜群に巧いけど、馬によって手が合う、合わないが絶対にある。手が合う馬に出会ったときに、四位くんの本当の巧さが発揮されると思う」。

 確かに馬の成長もあるだろう。四位が騎乗するまでの敗戦が、道しるべとなったのも事実だ。が、四位ならではの感覚が、ディサイファの能力を開花させたのもまた事実。こうした巡り合わせとタイミングが、馬と人の未来を変える。それが競馬の怖さであり、魅力でもあることを改めて実感する。

 準オープンを2戦でクリアし、オープン昇格後5戦目となったエプソムCで、念願の重賞初制覇。秋には「この馬と一緒にもっと上の舞台へ」という四位の言葉が現実となった。が、毎日王冠4着から挑んだ天皇賞(秋)は、勝ったスピルバーグからコンマ6秒差の12着。改めて敗因を聞いた。

「去年の天皇賞は、直線で前が詰まって追えなかったからね。12着といってもそれほど差はなくて、悲観するような内容ではなかったけど、まぁスムーズに前が開いていたとしても、掲示板までだったかなっていう気がする。去年の段階では、重賞でもまだいかにロスなく乗るかがカギだったし、天皇賞に関しては、GIの壁に見事に跳ね返された感じだったね」

 と、力不足を敗因としたが、次の瞬間、「今年は違うよ」とキッパリ。

「クラスが上がれば上がるほど、当然、超えなければならない壁も高くなるけど、ディサイファは経験を積みながらひとつひとつ超えてきてくれた。去年の天皇賞もそうだし、ブノワが乗ったジャパンC(15着)も、すべてが糧になっていると思う。一見すると、どの馬にも言えそうなことだけど、実際、ディサイファのような馬は珍しいよ。デビュー当初は、期待が大きい一方で、体質が弱くて思うように使えなかったようだけど、そこで厩舎サイドが無理使いせずに、大事に大事に使ってきたことが大きいと思う」

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