不振ホンダは責任問題にどう対処する? 新リーダー指名で姿勢を見せるか
シーズン前の目標には遠く及ばず
苦戦が続くマクラーレン・ホンダに欧州メディアは厳しい。批判にさらされるホンダは今後どのように対応するのか 【写真:ホンダ】
マクラーレンにパワーユニット(PU)を供給するホンダは、このロシアGPで残り4枚となっていたトークンをすべて使用し、最後のアップデートを行った(アロンソがフリー走行1で使用し、結果は14位)。2014年から新たに加わった「トークン」という仕組みは、高騰する開発費用を抑制するために導入されたもので、PUを42にわたる要素と66のトークンに分割されている。各PU供給メーカーは、FIA(国際自動車連盟)が決定したトークン数に限って改良が認められている。
ロシアGPで、チームは「大きな前進があった」と手応えを示したものの、2台のマシンは予選Q2に進出するのがやっと。決勝レースでは2台ともトップ10入りしたが(アロンソの正式順位は11位)、最終ラップに接触して12位になったバルテリ・ボッタス(ウィリアムズ)、マシントラブルでリタイアとなったニコ・ロズベルグ(メルセデスAMG)、さらにはカルロス・サインツ(トロロッソ)やロマン・グロージャン(ロマン・グロージャン)といった具合に、入賞常連組のリタイアによって繰り上がった結果という感が強い。
シーズン前にホンダのF1プロジェクト総責任者である新井康久氏が公言していた、「日本GPあたりでは表彰台争いがしたい」という目標には、日本GPはおろか、その次のレースでも遠く及んでいないのが現状だ。
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メディアに攻撃される総責任者の新井氏
ホンダのF1プロジェクト総責任者を務める新井康久氏。不振の責任から「チームは更迭を要求」という報道も出ているが…… 【Getty Images】
というのも、常勝軍団だったマクラーレンは13年から未勝利が続いており、1966年のチーム設立以来4度目、13年シーズン以来の表彰台ゼロ(過去3度の表彰台ゼロは66年、67年、80年)に終わりそうだからだ。かつて黄金時代を築いた“マクラーレン・ホンダ”がプライベーターチームにも劣るコンストラクターズ9位という惨状は、当のホンダを含め、誰も予想していなかったはず。
こうした厳しい状況に陥ると、レースにおける日本の企業文化と欧米のレース文化との違いがハッキリとしてくる。ホンダやトヨタといったF1に挑戦した日本企業は、中長期的な戦略で人事を組んでいて、不振の責任を取って幹部人事の変更があることは少ない。F1はあくまでも日本本社から見て、活動のひとつであり、小さな部門でしかないからだ。当然、本社全体を見渡した定期的な人事発令が優先される。
不振の責任取って代表辞任がF1の常識
ひとつ例を挙げれば、96年にベネトンからフェラーリに移籍したミハエル・シューマッハに合わせるようにして、ロス・ブラウン、ロリー・バーンなどの中心人物が共に離脱していった(その後も現フェラーリのテクニカルディレクターであるジェームス・アリソンが00年にベネトンからフェラーリへ移籍するなど、多くの中核スタッフがフェラーリに引き抜かれた)。
当然、チームの舵取り役である代表であっても、不振の責任を負う。12年にウィリアムズのチーム代表を辞任したアダム・パー(代表在籍3年)、14年に辞任したマクラーレンのマーティン・ウィットマーシュ(代表在籍6年)とフェラーリのステファノ・ドメニカリ(代表在籍7年)がそうだ。ドメニカリの後を引き継いだマルコ・マティアッチはわずか7カ月でチーム代表の座を追われている。就任初年度の08年にコンストラクターズチャンピオンに輝いたドメニカリ以外、誰もタイトルは獲得していない。しかも、ドメニカリの成功は前任者のロス・ブラウンの遺産というのが正直なところだ。歴史をひも解けば、レースの世界では「勝者以外は全員敗者」という厳しい一面がハッキリ表れている。