初入賞ホンダの次なるポイント マクラーレンとの一体感は本物か

田口浩次

2台同時入賞の力も見せたモナコGP

モナコGPでバトンがチーム初ポイントを獲得したマクラーレン・ホンダ。メルセデス、フェラーリに続く、実力伯仲の中団グループで争う力があることを証明してみせた 【Getty Images】

 前戦のスペインGPまで5戦連続で入賞を逃し、マクラーレンのワースト記録更新という不名誉な責任の大部分を占めると指摘されたホンダとのコンビが、伝統のモナコGPでチーム初ポイントを獲得。チームスタッフはもちろん、多くのホンダファンにとっても溜飲が下がる思いとなった。

 スペインGPでホンダはパワーユニット(PU)をアップデートしたものの、予選は13位と14位、決勝レースも16位完走と26周リタイアという悔しい結果に終わった。そのため、果たして、ホンダのPUは相対的にライバルとの差を縮めたのか、それが分からない状態だった。

 そんな思いが残った中でのモナコGPは、予選でバトンが12位、アロンソが15位につけた。特にバトンの12位は、上位10番手までが進出できる最終予選Q3の突破ライン、10番手フォース・インディアのセルジオ・ペレスが記録した1分16秒999に対して、1分17秒093と、その差はわずか0秒094だった。コンマ1秒速ければ最終予選に進出できるほどの接戦だった。そして、決勝レースではバトンが8位入賞、アロンソはギアトラブルでリタイアしたものの、それまで10位を走行しており、2台同時入賞の力は十分に可能だった。

競争できる「スタートラインに立った」

 では、今回、マクラーレン・ホンダは大きく進化したのだろうか? それともモナコというストリートサーキットでたまたま良い結果が転がり込んだのだろうか? その疑問について、元F1ドライバーの中嶋一貴が解決のヒントとなりそうな話を教えてくれた。

「モナコGPはエンジンパワーが少なくても勝負できるサーキットなのか、という疑問ですが、もちろん、他のサーキットと比較したらエンジンパワーを必要とする割合は多少は少ないです。ただ、それでもパワーがあるエンジンの方が、やはりモナコGPであっても有利な点は変わりません。それと、今回、ウィリアムズの2台は後方に沈んだ印象がありますが、実はここ数年のウィリアムズのマシンは、高速サーキット向きというか、低速サーキットよりも高速サーキットの方が向いている空力特性だと、チーム関係者から聞いています」

 空力特性。中嶋によると、どのチームも優れたマシンを開発するため、日々努力しているが、実際にデザイナーがアイデアを出し、それを風洞実験など繰り返して実際にサーキットでシェイクダウンしたとき、マシンにはある種の個性というか、空力特性があるという。それは、あるマシンではより低速なサーキットでポテンシャルを発揮したり、また、あるマシンではより高速なサーキットの方でポテンシャルを発揮するといった、微妙なあんばいの違いだ。

 もちろん、どのデザイナーも、すべてのサーキットで速いマシンを想像して開発しているのだが、実際に走り出すと、そうした空力特性とも言うべき個性があるのだという。それがウィリアムズの場合は、ここ2〜3年、高速サーキット向きな仕上がりになることが多かったため、モナコGPの不振も中嶋には奇異には映らなかったという。

「モナコGPはストリートサーキットで、すべてのチームがウイングを立て、できる限りのダウンフォースを生みだそうと空力パーツを取り付けます。しかし、同じようにモナコ向け空力パーツを取り付けても、もともと高速サーキットでよりポテンシャルを発揮するマシンの場合は、より低速サーキットでポテンシャルを発揮するマシンと比較すると、結果を得られるダウンフォースに違いが生じてしまいます」

 つまり、今回のウィリアムズの不振は、たまたまモナコGPがそれほど得意ではなかったということになる。それでも、メルセデスのPUは強力で、フェリペ・マッサが14位だったことを考えると、トップを快走するメルセデスと、それを追うフェラーリ、その後ろに続く集団の差はほぼないに等しいほど、実力伯仲状態になりつつあると言える。

 そう考えると、マクラーレン・ホンダは、間違いなく中団グループで入賞を争う力をつけ、ホンダのF1プロジェクト総責任者を務める新井康久氏の「ようやくポイントを獲得し、(競争をする)スタートラインに立った気がする」という言葉にも力強さが感じられる。

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