不振ホンダは責任問題にどう対処する? 新リーダー指名で姿勢を見せるか
責任者の交代は考えにくいが……
ロシアGPではバトン(手前)の9位入賞が精いっぱい。PUは明らかに他チームに劣り、元世界王者であっても厳しい戦いを強いられている 【写真:ホンダ】
さらに言えば、F1パドックでは、いつの時代もメディアをロビイストとして利用してきた歴史がある。「チームが新井氏の更迭をホンダに求めた」といった報道の裏には、チーム内にホンダに対して不満を持つ人間がいて、メディアにネガティブな情報を提供することで政治的に圧力をかけている可能性も捨てきれない。
では、ホンダは今後どのような戦略を取っていくのか。一般論から言えば、日本企業の過去の事例からもF1プロジェクト総責任者を交代することは考えにくい。しかし、16年シーズンに向けたPUも表彰台を争えるレベルに達しないと判断したり、開発の途中経過に不満を持つ場合、チームは何かしらのアクションをホンダに強く求めるだろう。現在のレギュレーションでは、PUによるギャップをシーズン中に埋めることは不可能であり、2年連続で“戦えないPU”という状況では、チーム内のモチベーションが下がってしまうからだ。
そこで考えられる対応としては、やはり新たなリーダー、F1プロジェクト総責任者を指名して、マクラーレンや周囲に対してテコ入れをした姿勢を見せるか。あるいは、直近にロータスを買収したルノーのように、チームを買収して一体化したプロジェクトとしてF1に挑むしかない。しかし、再びホンダがチーム運営を直接行うことはないと見られている。
変化の兆し見えるか、最終戦前後に注目
なぜなら、一般的な日本企業のスタンスで年度末を越えてから新たな活動を行うとなると、16年4月からの活動は3月18〜20日に予定されている開幕戦オーストラリアGPに間に合わない。9月末の第2四半期決算までに10月以降、さらには翌年度の活動に関して方針を決定していると判断する方が自然だ。
そしてワールドワイドな広告活動となると、その準備期間も含めて数カ月は必要だ。参戦初年度は8年ぶりの復帰とあって、実際にかかったコストや世界各国のホンダ子会社との連携を含め、どのような予算計上が必要か、想定と違っていた部分も多いはず。どれだけの予算規模が全世界的に必要で、どのような方針でF1活動をアピールしていくのかを含め、データ収集の初年度だったと、好意的に読み取ることもできる。
くしくも本田技研工業本社では、10月1日に定期的な人事異動が行われ、F1活動に精通した人物が広報部門の四輪モータースポーツ統括に就任するなど、池の波紋のごとく動きも見え始めている。願わくば、新しいホンダの顔に就任した八郷隆弘社長が、7月6日の初めての記者会見で発言していた「キーワードはチームホンダ」「お客様視点でホンダらしい商品をつくる」という姿勢が、“世界のホンダファン視点”に立ったホンダらしいF1活動へと浸透すること、「早く1勝を挙げたい」という熱意が目に見える形で表れることを期待したい。