「わが家」に帰還したサビオラの挑戦 古巣バルサへの思いを胸にクラブW杯へ

藤坂ガルシア千鶴

監督の評価に堂々と反論

バルセロナでは監督の評価に対しても堂々と反論。どのような状況でもサビオラの自信は揺るがない 【写真:ロイター/アフロ】

 幼少期からとても小柄で、ぶかぶかのユニホームを着てピッチに登場するたびに、相手チームの選手たちに笑われたというジュニア時代。だが毎試合、同年代の子どもたちとは比較にならないほどの才能を発揮してチームを勝利に導き、育成の現場で指導者たちから「天才」と絶賛された。リーベルの下部組織では、身体が小さいことを理由に控え要員に甘んじることが多かったが、「お前の目標はジュニアの試合で勝つことではなくトップチームでタイトルを取ること」というコーチの言葉を理解して焦ることなくトレーニングに打ち込み、最終的には16歳でプロデビューを果たした。当時のコーチたちは、サビオラについて「真の目的を見据えることのできる賢明な少年だった」と声をそろえる。

 168センチ、61キロという小さな身体から漲る自信は、かつてバルセロナに所属していた頃、フランク・ライカールト監督による厳しい評価に堂々と「反論」した態度にも表れていた。03年12月、スペイン国王杯の試合でシウダ・デ・ムルシア(現在のグラナダ74CF)と対戦した際、先制点を決めたもののゴールのチャンスをいくつか逃したサビオラについて、ライカールト監督が「得点のあとはほとんど何もしなかった」とコメント。4−0と圧勝しながらも「FWの選手たちのパフォーマンスが良くなかった」と語ったため、報道陣から「監督に何をアピールしたいか」と聞かれたサビオラだったが、「自分は誰にも何もアピールする必要などない」と言い切った。

 当時のバルセロナはメンバーが定まらず、ライカールト監督による試行錯誤が繰り返されていたが、そのような状況下でもサビオラには揺るがない自信があった。

「監督もコーチも、自分がどのようなプレーをするのかよく分かっている。何もかも計画どおりうまくいくゲームもあれば、まずまずの結果だったり、全てにおいて失敗するゲームもある。自分では満足のいくプレーができたと思っているが、もし自分が批判されているうちの一人なのだとしたら、次の試合ではミスを少なくし、より良い内容にするために努力するのみだ」

夢のような夜を再現するために

レアル・マドリーに所属していた時期でもバルセロナのファンからは声援を受けた。サビオラは「第2の故郷」と語り、古巣への思いを隠さない 【写真:ロイター/アフロ】

 01年、ワールドユース(現U−20ワールドカップ=W杯=)優勝直後に移籍が決まったバルセロナには、モナコとセビージャへの期限付き移籍期間を経て06−07シーズンまで在籍した。レギュラーの座を奪うことができず、移籍直後に父が病死したことも重なって「選手としては辛い時期だった」と語っているが、バルセロナという街、そしてサポーターに抱く愛着心は相当なものだ。

「バルセロナは素晴らしい人々が住む美しい街。自分がレアル・マドリーのメンバーとしてカンプ・ノウに行ったとき、バルセロナのサポーターは拍手をしてくれた。自分にとっては第二の故郷さ。機会があるごとにプライベートでも訪問しているよ」

 復帰直後に南米王者に輝き、12月にはクラブW杯に参戦するというチャンスを得たサビオラ。同大会では、バルセロナと対戦する可能性もある。

「バルセロナの偉大さは、誰もがよく知っている。そういうクラブと一緒に世界一を決める大会に出場できることはとても光栄だし、誇りに思う。もし対戦することになったら、その瞬間を存分に楽しみたい。そのような絶好の機会は、日々巡ってくるわけじゃないからね。自分が敬愛するクラブとの対戦が実現したら素晴らしいと思うけれど、その前に準決勝で勝たなければいけない。とにかく、今のリーベルのサッカーを世界中の人々に見てもらうなんて、素晴らしいことだ。まずは自分がピッチに出られるように努力しなければならない。リーベルに復帰したのはメンバーに名を連ねるためではなくて、チームと一緒に練習に励み、チームのために自分のプレーを生かし、若い選手たちに自分の体験を伝授するため。高いモチベーションをこのまま維持して、クラブW杯でもプレーできるようにしたい」

 マジカルで夢のような夜を日本でも再現するため、昔よりも一層情熱的なサポーターたち、そして自分を育ててくれたクラブにまだまだ祝福し続けてもらうため、サビオラの古巣での新たな挑戦は、今始まったばかりなのである。

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著者プロフィール

89年よりブエノスアイレス在住。サッカー専門誌、スポーツ誌等にアルゼンチンと南米の情報を執筆。著書に「マラドーナ新たなる闘い」(河出書房新社)、「ストライカーのつくり方」(講談社新書)があり、W杯イヤーの今年、新しく「彼らのルーツ」(実業之日本社/大野美夏氏との共著)、「キャプテンメッシの挑戦」(朝日新聞出版)を出版。

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