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全勝の韓国U-18代表は“プロ予備軍”
特徴は「欧米に近い」体格の良さ

投打がかみ合い1次ラウンド全勝で突破

8月24日に行われた韓国の新人ドラフト。代表では3年生18人中、17人がプロから指名された
8月24日に行われた韓国の新人ドラフト。代表では3年生18人中、17人がプロから指名された【ストライク・ゾーン】

 8月28日から、大阪で行われている18歳以下の野球の国際大会、第27回WBSC U−18ワールドカップ。1次ラウンドB組を5戦全勝で1位通過した韓国はスーパーラウンドに進出し、9月4日にA組1位の日本と対戦する。決勝進出を目指す両チームの大一番を前に、韓国の代表メンバーについて、そして韓国の高校野球事情についてまとめた。


 今回のU−18韓国代表に関して、現地野球記者による前評判では「投手力の高さに対し、野手陣は落ちる」という声が多かった。しかし、1次ラウンドでは、打者の活躍が目立っている。1番打者の崔元準(チェ・ウォンジュン=ソウル高3年)は20打数10安打。俊足を生かし、2戦目のカナダ戦では5盗塁を決めるなど、予選では6個の盗塁を決めている。また初戦の南アフリカ戦に9番で出場し、4打点を挙げた李振栄(イ・ジンヨン=善隣インターネット高3年)は連日ヒットを重ね、4戦目の台湾戦では6番に抜てき。3安打をマークするなど、予選で9本のヒットを放っている。


 3戦目のキューバ戦では3対3でタイブレークに突入した延長10回裏、1死満塁で2番の安尚鉉(アン・サンヒョン=馬山龍馬高3年)がセンター前にサヨナラヒット。韓国は予選5試合中、2試合が1点差勝利と接戦をものにしてきた。


 一方の投手陣は持ち前の実力を発揮している。今大会一番の注目株、崔忠然(チェ・チュンヨン=慶北高3年)はカナダ戦に先発し7回2/3を投げ被安打6、1失点でチームを勝利に導いた。また、崔忠然の高校の同期で左腕の朴世津(パク・セジン)は、南アフリカ戦、カナダ戦に2番手で登板。台湾戦では先発起用され、5回を被安打1、1失点、7つの三振を奪う好投を見せた。加えて2年生投手で、横手投げの金彪勝(キム・ピョスン=慶州高)が、先発したキューバ戦で7回まで無失点ピッチング。8回に3点を奪われるも、過去11度の優勝を誇る強豪相手に堂々たる投球を見せた。

3年生は18人中17人がドラフト指名選手

 今回の韓国代表は20人中、18人が3年生。韓国ではすでに、来年のプロ野球新入団選手を選ぶ、ドラフト指名が終了し、代表メンバーの3年生では1人を除く17人が指名を受けている。U−18韓国代表は正真正銘の「プロ予備軍」だ。


 韓国の新人指名は大きく2種類に分かれている。全10球団がフランチャイズ地域を中心とした指定校から1人を選ぶ「1次指名」と、各球団がウェーバー方式で10巡目まで指名する「2次指名」の2つだ。1次指名は日本の「ドラ1」に相当するが、その10人のうち6人が今回代表入りしている。


 韓国のドラフトの特徴として、指名される高校生の割合が日本より高く、日本の高校生指名が全体の約38.3%(2014年)なのに対し、韓国は58%に上る。その背景には多くの球児が「即プロ」を望んでいることがある。韓国には趣味的要素を含む部活動がほぼ存在せず、スポーツを行う高校生の大半は、その道のトップアスリートを目指す者に限られている。スポーツ全体の競技人口は少なく、韓国の高校野球部はわずか67校。部員の数は約2400人しかいない。この数を日本に置き換えると青森県の69校2411人、栃木県の69校2485人とほぼ変わらない規模にとどまっている(日本高等学校野球連盟調べ、15年5月末現在)。


「エリート主義」とも言える韓国の高校スポーツの現状だが、それを改善する取り組みも行われている。ひとつは「週末リーグの導入」だ。以前は年間通して、曜日を問わず行われていた野球大会を再編成し、11年からは週末にリーグ戦を行うことで、野球部員が学業に関わる機会を増やすようにした。


 また、巨額を投じた底辺拡大のための支援も進められている。プロのコミッショナー組織である韓国野球委員会(KBO)は、野球部を新設した小、中、高校にこの3年間で総額35億ウォン(約3億5000万円)を支援。そして既存の高校野球部53校に、指導者の人件費として2年間で21億2000万ウォン(約2億1200万円)のバックアップを行った。これらの底辺拡大策により、高校では新たに11校の野球部が誕生。KBOでは20年までに高校野球部を70校まで増やすことを目標にしている。

室井昌也
室井昌也
1972年東京生まれ。韓国プロ野球の伝え手として、2004年から発行の著書『韓国プロ野球観戦ガイド&選手名鑑』は今年で13年目を迎える。韓国では2006年からスポーツ朝鮮のコラムニストとして韓国語でコラムを担当し、その他、取材成果や韓国球界とのつながりはメディアや日本の球団などでも反映されている。現在「室井昌也の韓国野球を観に行こう!」(ラジオ日本)に出演中。有限会社ストライク・ゾーン取締役社長。