全勝の韓国U-18代表は“プロ予備軍” 特徴は「欧米に近い」体格の良さ
投打がかみ合い1次ラウンド全勝で突破
8月24日に行われた韓国の新人ドラフト。代表では3年生18人中、17人がプロから指名された 【ストライク・ゾーン】
今回のU−18韓国代表に関して、現地野球記者による前評判では「投手力の高さに対し、野手陣は落ちる」という声が多かった。しかし、1次ラウンドでは、打者の活躍が目立っている。1番打者の崔元準(チェ・ウォンジュン=ソウル高3年)は20打数10安打。俊足を生かし、2戦目のカナダ戦では5盗塁を決めるなど、予選では6個の盗塁を決めている。また初戦の南アフリカ戦に9番で出場し、4打点を挙げた李振栄(イ・ジンヨン=善隣インターネット高3年)は連日ヒットを重ね、4戦目の台湾戦では6番に抜てき。3安打をマークするなど、予選で9本のヒットを放っている。
3戦目のキューバ戦では3対3でタイブレークに突入した延長10回裏、1死満塁で2番の安尚鉉(アン・サンヒョン=馬山龍馬高3年)がセンター前にサヨナラヒット。韓国は予選5試合中、2試合が1点差勝利と接戦をものにしてきた。
一方の投手陣は持ち前の実力を発揮している。今大会一番の注目株、崔忠然(チェ・チュンヨン=慶北高3年)はカナダ戦に先発し7回2/3を投げ被安打6、1失点でチームを勝利に導いた。また、崔忠然の高校の同期で左腕の朴世津(パク・セジン)は、南アフリカ戦、カナダ戦に2番手で登板。台湾戦では先発起用され、5回を被安打1、1失点、7つの三振を奪う好投を見せた。加えて2年生投手で、横手投げの金彪勝(キム・ピョスン=慶州高)が、先発したキューバ戦で7回まで無失点ピッチング。8回に3点を奪われるも、過去11度の優勝を誇る強豪相手に堂々たる投球を見せた。
3年生は18人中17人がドラフト指名選手
韓国の新人指名は大きく2種類に分かれている。全10球団がフランチャイズ地域を中心とした指定校から1人を選ぶ「1次指名」と、各球団がウェーバー方式で10巡目まで指名する「2次指名」の2つだ。1次指名は日本の「ドラ1」に相当するが、その10人のうち6人が今回代表入りしている。
韓国のドラフトの特徴として、指名される高校生の割合が日本より高く、日本の高校生指名が全体の約38.3%(2014年)なのに対し、韓国は58%に上る。その背景には多くの球児が「即プロ」を望んでいることがある。韓国には趣味的要素を含む部活動がほぼ存在せず、スポーツを行う高校生の大半は、その道のトップアスリートを目指す者に限られている。スポーツ全体の競技人口は少なく、韓国の高校野球部はわずか67校。部員の数は約2400人しかいない。この数を日本に置き換えると青森県の69校2411人、栃木県の69校2485人とほぼ変わらない規模にとどまっている(日本高等学校野球連盟調べ、15年5月末現在)。
「エリート主義」とも言える韓国の高校スポーツの現状だが、それを改善する取り組みも行われている。ひとつは「週末リーグの導入」だ。以前は年間通して、曜日を問わず行われていた野球大会を再編成し、11年からは週末にリーグ戦を行うことで、野球部員が学業に関わる機会を増やすようにした。
また、巨額を投じた底辺拡大のための支援も進められている。プロのコミッショナー組織である韓国野球委員会(KBO)は、野球部を新設した小、中、高校にこの3年間で総額35億ウォン(約3億5000万円)を支援。そして既存の高校野球部53校に、指導者の人件費として2年間で21億2000万ウォン(約2億1200万円)のバックアップを行った。これらの底辺拡大策により、高校では新たに11校の野球部が誕生。KBOでは20年までに高校野球部を70校まで増やすことを目標にしている。