規格外の走りを見せたサニブラウン 16歳“衝撃”デビューに世界が熱視線
記者たちも驚き「一体どこまでいくんだ」
男子200m予選で世界陸上デビューを果たしたサニブラウン。ガトリンに次ぐ組2着で、予選を突破した 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】
“衝撃デビュー”となった男子200メートル予選の第4組、サニブラウンは大外の9レーンに入った。同組には今大会の100メートル決勝でウサイン・ボルト(ジャマイカ)を100分の1秒まで追い詰めた男、ジャスティン・ガトリン(米国)が3レーンに並ぶ。
苦手なスタートを決め、前半からスピードに乗ったサニブラウンは、カーブを抜けると3番争いで最後の直線へ。臆することなくグングンと加速すると、最後に200メートル19秒台の自己記録を持つニッケル・アシュミード(ジャマイカ)をかわして、ガトリンに次ぐ20秒35の2位でゴールした。
その頃、多くの日本人記者は、レースの行方を取材エリア内にあるテレビの前で見守っていた。ゴールが近づくにつれて、大きくなる報道陣の歓声。準決勝進出を決めるフィニッシュを見届けると、それは驚きと感嘆の声に変わっていった。
「信じられない。一体どこまでいくんだ」
口々に興奮を述べる記者たちのざわつきが、狭い取材エリアに広がっていった。
大舞台で見せた“普通の走り”
取材陣が取り囲む中でも落ち着き払って言葉を発する。大舞台でも普通でいられるところに大物の片鱗が見える 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】
「ちょっと緊張したんですけれど、普通の走りができたのでよかったです」
その第一声に、思わずうなってしまった。日本の第一人者たちですら、大舞台で“普通の走り”をするのは難しいというのに、デビュー戦でそれを成し遂げられるのは、大物の片鱗(へんりん)以外の何者でもない。思い返せば、シニアの選手と初めて肩を並べたのは、5月の静岡国際。たった3カ月間で一体何度、彼に驚かされただろうか。
戦前、ボルトらスター選手たちとの対戦を熱望していた。実際は、1番外側のレーンで走ったために、途中まではどの選手の姿も見えなかったという。ガトリンとも「あまり一緒に走ったという感じはしない」と残念がったが、その分、「(周りを)気にせず自分の走りをしよう」と思い切りよく飛び出せた。
本人にとっては「ラストはとにかく(足を)回すイメージだったのですが、悪い癖が出て、オーバーストライドになり、少しバラバラになってしまいました」と、課題も残るレースだった。それでも、「今の予選の走りを見直して、修正できるところは修正して、ベストなパフォーマンスができるように挑みたい」と力を込める。26日の準決勝がますます、楽しみになってきた。
海外報道陣にも流暢な英語で回答
準決勝では世界中から熱視線が送られることになるだろう 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】
その様子を見ながら、最近雑談をした米国人記者に「陸上関係者なら、サニブラウンのことはみんな注目しているよ」と言われたのを思い出す。予選でこれだけの関心の高さだ。今回ガトリンに次ぐ2位に入ったことで、準決勝後のサニブラウンには、さらなる熱視線が世界中から送られそうだ。
(取材・文:小野寺彩乃/スポーツナビ)
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