中京制するはコリオリの力“コリベリ”=乗峯栄一の「競馬巴投げ!第101回」
台風は何で動くんだ?
[写真1]オープン特別から交流重賞かきつばた記念と連勝中のコーリンベリー、プロキオンSも差す! 【写真:乗峯栄一】
誰も答えないから、自分でトボトボ勉強するしかない。ぼくが調べた範囲では、赤道付近は熱い。熱いから上昇気流が起こる。上昇した熱い空気は上空で冷やされて、今度は下降する(空気の対流)。この下降気流は、上昇気流の起きているその場に降りることは出来ないから、北と南に分かれて下降する。これがたぶん、赤道より北で発生した台風が北へ行き、赤道より南で発生した台風が南へ行く理由だ。
たとえば、赤道付近から北へ行こうとするとき、赤道付近は一日で地球一回転する高速で動いているのに、北極は動いていない。これは走っている電車から制止しているプラットホームに飛び降りるようなもので、真横に降りようとしても、前に飛び出てしまう。赤道付近の上昇気流は下降するとき、少しでも前(東)に行こうとする。これが偏西風(一年中、西風が吹く)の原因で、北半球でも南半球でも中緯度地帯ではこの風が吹く。
逆に上昇気流が起きて、気圧が低くなった赤道地域に流れ込む風は、プラットホームから動いている電車に飛び乗るようなものだから、どうしても目の前より後ろ(西)に乗ってしまう。これが赤道付近に一年中吹く東風(貿易風)ということになる。
競馬場からATMへの“ツバメ返し”が辛い
[写真2]一昨年のフェブラリーS勝ち馬グレープブランデー、GI馬ゼッケンがカッコいい 【写真:乗峯栄一】
ぼくらは、ただ気づいていないだけで、もっと土台となる大きな力のことを考えに入れないといけないのではないか。大航海時代まで「海の果てまで行くと、そこには巨大な滝があって、全員地の底まで落ちる」などと考えていたと、笑い話にして終わらせる。でもその笑い話を現代でもやっているのでないか。やっていないと本当に断言できるのだろうか。
「北へ行くときは電車からプラットホームに降りるのだから、前に出る」
「南へ行くときはプラットホームから電車に飛び乗るのだから、後ろに退く」
つまり、我々が南北に動くときは「多少なりとも右にヨれる」のだ。
いまは場内ATMが出来たからマシになったが、阪神競馬場は今までは現金がなくなると準メインからメインレースの間までに「クッソー、10Rのあの××のヘタクソが」などと騎手をなじりながら、仁川駅前のATMまで走らなければならなかった。これを個人的には“ツバメ返し”と呼び、競馬道のための修行の一つと考えてきたが、しかし辛いものがある。
何が辛いかというと、阪神競馬場から仁川駅は南方向にあるからだ。「何で××はオレの言う通り走らんのや」などと、ただひたすら10Rの怒りに燃えて走っていると、思わず“右にヨれる”コリオリの力のことを忘れてしまい、地下道の右壁に激突してしまう。
「駅行きは南行き、右にヨれやすいから左に重心、北に行く帰りも同じく右に行きやすいから左に重心」といつも念じていないといけない。
場内ATMが出来たから安心だなどと思うのも安易だ。阪神のATMは北向きに並ぶ配置になっている。機械に近づいていくうちに知らず知らずのうちに右にヨれ、隣の列に入り込み、そこのオッサンとケンカになる可能性がある。
「コリオリの力」を忘れてはいけない
[写真3]ドリームバレンチノは昨秋JBCスプリントを制するなど、最近はダート専門だ 【写真:乗峯栄一】
阪神の3、4コーナーは北から南に進むから、右にヨれやすく(ラチにぶつかりやすく)馬が右回転しやすい。京都の3、4コーナーは南から北に進む(台風と同じ)から右にヨれやすく(ラチにぶつかりやすく)馬が左回転しやすい。
中京は左回りで、3、4コーナーは北から南に向かっているから、馬は右にヨれて(これはいつでも同じ)外ラチ方向に逸走しやすく、馬自体も右回転しやすい。
もちろん、コリオリの力は人が走ったり、馬が走ったりする分には十分無視できる作用だと言われる。しかし無視できるものであっても、力が働いていることは確かだ。もしも馬がまったく同じ力なら、中京のように外に逸走しやすいコースだと、外にいるより、内にいて、右側に馬群の壁がある方が有利だと言える。