新監督就任で変化する香川、内田らの立場 正念場を迎えるドイツのサムライたち

ドルトムントの新監督に就任したトゥヘル(写真)ら、日本人選手が所属するチームで指揮官が代わっている 【写真:ロイター/アフロ】

 夏の欧州移籍市場において、ドイツはイングランドから始まる大きなドミノの最初の動きを待っている(ホッフェンハイムのフィルミーノのリバプール移籍が、その初手となり得る)。一方で、監督という名のメリーゴーランドは早くも回り始めていた。

 トーマス・トゥヘル(ドルトムント)、アルミン・フェー(フランクフルト)、アンドレ・ブライテンライター(シャルケ04)、アレクサンデル・ツォルニガー(シュツットガルト)という4クラブでの、新監督の地すべりも起こった。さて、これら新指揮官は、香川真司や内田篤人らの状況に、どんな変化を加えるだろうか? 監督を通して、サムライたちのブンデスリーガでの今後を予想してみよう。

大きなチャンスがある香川

技術が高く、スピードと規律を備える香川にはトゥヘルの下で大きなチャンスがある 【写真:フォトレイド/アフロ】

 まずはユルゲン・クロップの後をトゥヘルが継いだ、ドイツ西部のクラブから話を始めたい。クロップ同様にマインツでブレークしたトゥヘルには、ドルトムントに新たな風を呼び込むというタスクが課されている。この監督は再生工場、モチベーター、そして教師として知られている。マインツの記者の間で、トゥヘルは「教授」と呼ばれていた。しばしば長く考え込み、複雑な話をすることがあるからだった。選手たちは、新監督のことを理解できるだろうか?

 ドルトムントの地元紙『ルール・ナハリヒテン』の記者であるマティアス・デルシュは、確信していることが一つある。「すべてはゼロからのスタートになる」ということだ。トゥヘルの下でゲタを履かせてもらえる選手はいない。香川もその例外ではない。「全員、まずは自分自身を示すことから始める必要がある」。新指揮官のプレースタイルから考えて、香川はフィットするかもしれないとデルシュは言う。プレッシングとゲーゲンプレッシングは、香川のレパートリーに入っているからだ。

 だが、トゥヘルのプランが最終的にどんなものになるか、正確には分からない。指揮官はドルトムントを「すべての大会においてチャレンジャー」と位置付けている。どのような選手たちで、どのような戦術を展開していくかは、今後数週間で準備の様子が見えてくる。ただし技術が高く、スピードと規律を備える香川にはトゥヘルの下で大きなチャンスがあると言えるだろう。

内田の手術に不満を抱くシャルケ

内田に求められるのは、新監督の下でもポジション争いの先頭に立つことだ 【写真:ムツ・カワモリ/アフロ】

 シャルケの本拠地であるゲルゼンキルヒェンは、ライバルのドルトムントとほんの数キロしか離れていない。だが、雰囲気は別物だ。連綿と続くこのクラブの歴史に名を記した監督たちは、この労働者たちのクラブのアイデンティティーを反映してきた。高貴なる青いユニホームに忠誠を誓うファンたちは、またもごつい作品を目にすることになる。袖をたくし上げ、戦い、そしてもちろん勝利する最高クラスの選手たちを、だ。スポーツディレクター(SD)のホルスト・ヘルトは、アウクスブルク監督のマルクス・ヴァインツィールに誘いを断られた後、プランBとしてパーダーボルンからアンドレ・ブライテンライターを招へいした。

 近年ヴェストファーレン東部でチームを率いてきた元ウインガーは、少額の投資と平均的なチームから、最大限の効果を引き出してきた。これまで見せてきたその手腕が、シャルケでも期待されている。5年前まで現役選手だった指揮官が手にするのは、クラース=ヤン・フンテラールやユリアン・ドラクスラー、内田といったスター選手を擁する、ヨーロッパリーグを戦うには豪華すぎる、ブンデスリーガでも有数の予算を擁するチームだ。経験こそ少ないものの、この魅惑の掛け算に大きな期待を抱くのも無理はない。

 だが、日本人サイドバックにとっては良い話ばかりではない。「全般的に、ウッシー(内田)のシャルケでの重要性は低くなっている」。『スカイ・スポーツ』のシャルケ担当記者、ディルク・グロス=シュラーマンはこう続ける。「負傷箇所を手術したことに、クラブ首脳は現状では不満を抱いているんだ」。

 シャルケのドクターのアドバイスに反して、内田は手術を受けたというのだ。「負傷については保存療法の方が良さそうだということで、われわれは了承していた」と、ヘルトSDは驚きを隠さなかった。内田はフェルデンでの夏のトレーニングキャンプに参加せず、合流するのは7月上旬となる。

 この事態に対しての措置なのかどうかは分からない。だが、クラブはすでに動きを見せた。内田に待ち受けているのはポジション争いである。ブルガリアのルドゴレツ・ラズグラトからブラジル人のジュニオール・カイカラを手に入れるにあたり、クラブは「大金を使ったようだ」とグロス=シュラーマンは言う。その額は、600万ユーロ(約8億円)に上ると推定される。「カイカラについては、われわれを助け続けてくれるであろう内田に次ぐ新たな右サイドバックと考えている」とヘルトSDは語っているが、本心は分からない。まず内田に必要なのは、その言葉が真実であると証明すべく、新監督の下でもポジション争いの先頭に立つことだ。

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著者プロフィール

フランソワ・デュシャト 1986年生まれ。世界最大級のサッカーサイト「Goal.com」でドイツ語版の編集長を務め、13年からドイツで有数の発行部数を誇る「WAZ」紙のサイト(http://www.derwesten.de/)でドイツ西部のサッカークラブを担当する。過去には音楽の取材もしていた。ツイッターアカウントは@Duchateau。自身のサイトはwww.francoisduchateau.net。 ダビド・ニーンハウス 1978年生まれ。20年以上にわたり、ルール地方のサッカークラブに焦点を当て、ブンデスリーガの取材を続ける。09年からは「WAZ」紙のサイト(http://www.derwesten.de/)で記者を務める。ツイッターアカウントは@ruhrpoet。自身のサイトはwww.david-nienhaus.de。

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