新監督就任で変化する香川、内田らの立場 正念場を迎えるドイツのサムライたち

難しい状況が予想される乾

フェーが指揮した時期、乾の出場試合数は限られていただけに、難しい状況に立たされることが予想される 【写真:フォトレイド/アフロ】

 内田と同じように、フランクフルトの乾貴士も難しい状況に陥ることが予想されている。フェー監督が戻ってきたのだ。のちに紹介するシュツットガルトの監督に就任するために、フェーは昨年5月に一度フランクフルトを離れた。だが、愛する古巣へとフェーは帰還した。フェーが指揮した時期の乾の出場数は多いものではなかった。「誰であろうと、全力を尽くさない選手に拘泥することはない」と、指揮官は語っている。もちろん長谷部誠と同様に、乾も献身していないわけではない。だが議論の種にならずに済むことはない。むしろ、その逆である。

 ブルーノ・ヒュブナーSDは新聞紙上でのインタビューで、乾とは「まだ契約が残っている」ことははっきりさせている。だが同時に、乾に興味を持つクラブがあるならば、「彼を売却することもあるだろう」とも語っている。指揮官も「タカ(乾)は残るかもしれない」と態度を明確にしない。「素早くて、このチームにはあまりいないタイプの選手だ」と、乾への評価は口にしているが……。

 一方の長谷部は、フランクフルトでトップのパフォーマンスを示した一人である。この日本代表主将は地元紙に「本物のヒット」と評されている。フェーにとっても、長谷部はなじみの選手だ。ボルフスブルク時代には、中盤中央の他に最終ラインの右サイドでも起用した。長谷部にとってはそれなりのシーズンだった昨季を、「ややサイドでプレーし過ぎるすぎた感もあるが、まったく問題ない」と評している。長谷部はバカンスの後、クラブの主柱になるだろう。ただし、乾はそうはなりそうもない。

酒井高徳には放出の可能性も

買い手が現れた場合、酒井には放出の可能性もある 【写真:フォトレイド/アフロ】

『スカイ』のアレクサンダー・ボネンゲル記者は、「良い左サイドバックは、自然と木に実るわけではない」と話す。ツォルニガー新監督の下での酒井高徳について語った時のことだ。この言葉にはいくつかの解釈方法がある。一つは、酒井なら新監督の下でもチャンスを得るだろう、というものだ。酒井は「メンタル的にも個性も、良いものを持っている」と同記者は言う。「さらに技術もあるし、スピードにも優れているから、ツォルニガーには重宝されるだろう」というのがボネンゲルの見方だ。つまり、良い土壌はあるということだ。

 ただし、酒井は昨シーズンを忘れ去る必要がある。シュツットガルトでの最初の半年は酒井にとって素晴らしいものとなり、地元メディアは「第2のフィリップ・ラーム」と呼ぶほどだったが、継続性は失われた。「特に昨シーズンは明らかに物足りなかった」とボネンゲルは語る。凡ミスを繰り返す酒井は、残留争いの力になれなかった。成功体験だけを残す剪定(せんてい)作業をしなければ、収穫が約束され続けることはない。

「ゴウ」と呼ばれるこのレフトバックは足元の技術も高く、活力があり、現代のサイドバックに求められるものをすべて備えている。だが、決して手放すことができない存在ではないのだと、シュツットガルトのロビン・ドゥットSDは6月上旬に話している。フロリアン・クライン、ダニエル・シュワーブら、酒井のポジションを埋める選手はそろっている。だからもしも買い手が現れたなら、300万ユーロ(約4億円)と引き換えに酒井を放出する可能性は十分にあり得る。

期待がかかる武藤

マインツに移籍する武藤には首脳陣から大きな期待がかけられている 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】

 冒頭でも記したように、選手移籍のメリーゴーランドはまだ十分に加速していない。だが、すでに岡崎慎司のレスター・シティ移籍が決定した。これは日本のファンにも、マインツにとっても大きな決断だった。1000万ユーロ(約13億5000万円)と言われる移籍金もクラブにとって大きいが、岡崎離脱の穴をしっかり埋められるかも大事なポイントだ。

 もう一つ決まっている日本人の移籍が武藤嘉紀の加入だ。彼についてはすでに加入決定時、クリスティアン・ハイデルGM(ゼネラルマネジャー)が、「われわれが探していたサイド攻撃における質を備えていると確信している」と語っている。マルティン・シュミット監督も武藤のことは理解しており、さらにはドイツ語の習得というピッチ外での期待もかけている。日本代表の新たなるプリンスが、マインツにおけるキングの座を継げるのか、ぜひ注目したいところだ。

(翻訳:杉山孝)

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著者プロフィール

フランソワ・デュシャト 1986年生まれ。世界最大級のサッカーサイト「Goal.com」でドイツ語版の編集長を務め、13年からドイツで有数の発行部数を誇る「WAZ」紙のサイト(http://www.derwesten.de/)でドイツ西部のサッカークラブを担当する。過去には音楽の取材もしていた。ツイッターアカウントは@Duchateau。自身のサイトはwww.francoisduchateau.net。 ダビド・ニーンハウス 1978年生まれ。20年以上にわたり、ルール地方のサッカークラブに焦点を当て、ブンデスリーガの取材を続ける。09年からは「WAZ」紙のサイト(http://www.derwesten.de/)で記者を務める。ツイッターアカウントは@ruhrpoet。自身のサイトはwww.david-nienhaus.de。

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