PK戦を制したアルゼンチンがベスト4へ コロンビアの前線は最後まで機能せず

中田徹

オスピナの堅守が光るも及ばず

PK戦でコロンビアを下したアルゼンチンがベスト4進出を決めた 【写真:ロイター/アフロ】

 コパ・アメリカ準々決勝のアルゼンチン対コロンビアは0対0のままPK戦で雌雄を決することになったものの、試合内容では圧倒的にアルゼンチンが優勢だった。シュート数はコロンビアがわずか2本なのに対し、アルゼンチンは16本。しかし、コロンビアのGKダビド・オスピナの堅守が光っていた。とりわけ26分のセーブは特筆もの。セルヒオ・アグエロのシュートを足でストップした直後、今度は至近距離からのリオネル・メッシのヘディングを防いだ。オスピナのセーブは7本にのぼった。だから、PK戦に入る寸前、チリ人記者は「PK戦に入ったらコロンビアが勝つかもしれないぞ。オスピナにとっては忙しい試合だったが、今日のセルヒオ・ロメロ(アルゼンチンGK)はほとんど何もする必要がなかった」と読んでいた。

 オスピナはアルゼンチンのキッカーのコースをよく読んでいたが、触りきれなかった。一方、ロメロは6巡目のフアン・スニガのキックをストップした。しかし、およそ11分間にも及んだこのPK戦はGKの優劣ではなく、キッカーの度胸試しの勝負となっていた。コロンビアは2回、PKがゴール裏の観客席に飛び込むミスをした。一方、アルゼンチンには2度も勝利のリーチが訪れたが、共にキッカーが外していた。結局、最後は7巡目まで温存していたカルロス・テベスがさすがのシュートをみせ5−4で、アルゼンチンがコパ・アメリカのベスト4進出を決めた。

不振のファルカオを外すも効果なし

オスピナが堅守を見せるも、コロンビアは最後まで攻撃がかみ合わなかった 【写真:ロイター/アフロ】

 コロンビアの選手やサポーターには気の毒だが、試合内容を振り返るとアルゼンチンの勝ち上がりは妥当なものだった。驚くことなかれ、コロンビアのファーストシュートは67分まで待たねばならなかった。そして、この時間帯の2本のシュートがこの日の彼らの攻撃のすべてだった。

 アルゼンチン戦のコロンビアは不振のラダメル・ファルカオを外し、カルロス・バッカも出場停止だったことから、テオフィロ・グティエレスとジャクソン・マルティネスが2トップを組んだ。この2人は、大会初戦のベネズエラ戦(0−1)でコロンビアが負けてしまった頃、「ファルカオを先発させるより、所属クラブで好調だったこの2人を使ったほうがいいのに」とささやかれていたコンビである。

 しかし、今大会のコロンビアは4人のストライカーをどう組み合わせても結局機能しなかった。中盤の要となるエドウィン・バレンシアとカルロス・サンチェスが不在という不運もあったが、早くも24分にホセ・ペケルマン監督は動き、グティエレスを下げてエドウィン・カルドナを入れて中盤を強化せざるを得なかった。

 非常に残念な今回のコロンビアだったが、彼らはペケルマン監督のもと、ブラジルワールドカップの予選から本大会まで魅惑的な攻撃サッカーを続け、今大会では輝けなかったがハメス・ロドリゲスというスターも生まれた。「若手育成のエキスパート」としているペケルマンは現アルゼンチン代表の何人かの選手の恩師にも当たり、「メッシはペケルマンによって代表デビューを果たした。恩師との対戦となる今回のコロンビア戦はメッシにとって101回目の代表戦となる」と各国で報じられていた。

アルゼンチンの大会になるのか?

ペルー代表を指揮するガレカ監督もアルゼンチン人。今大会はアルゼンチンの大会となるのか? 【写真:ロイター/アフロ】

「今大会はアルゼンチンの大会になるのではないか」と思い続けてきた。今回のコパ・アメリカにはチリのホルヘ・サンパオリ監督、ペルーのリカルド・ガレカ監督、パラグアイのラモン・ディアス監督、コロンビア代表のペケルマン監督、そしてアルゼンチン代表のヘラルド・マルティノ監督と5人ものアルゼンチン人の監督がいて、彼らは全員ベスト8に進出したのだ(ちなみにエクアドルのグスタボ・キンテイロス監督は現役時代にアルゼンチンからボリビアへ帰化した)。中でも個人的にはガレカ監督の手腕に感嘆している。

 すでにチリ、ペルー、アルゼンチンがベスト4に進出した。もし、パラグアイがブラジルを下すアップセット(番狂わせ)を起こせば、コパ・アメリカはまさにアルゼンチン人の監督がベスト4を総なめすることになる。
  • 前へ
  • 1
  • 次へ

1/1ページ

著者プロフィール

1966年生まれ。転勤族だったため、住む先々の土地でサッカーを楽しむことが基本姿勢。86年ワールドカップ(W杯)メキシコ大会を23試合観戦したことでサッカー観を養い、市井(しせい)の立場から“日常の中のサッカー”を語り続けている。W杯やユーロ(欧州選手権)をはじめオランダリーグ、ベルギーリーグ、ドイツ・ブンデスリーガなどを現地取材、リポートしている

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント