12年MVP・日本ハム吉川に復活の兆し 戻るのではなく、上を行く新スタイル

ベースボール・タイムズ

不振の2年間を覆す開幕5連勝

吉川は開幕から無傷の5連勝。四球から自滅する姿はなく、力でねじ伏せる“らしさ”を取り戻している 【写真は共同】

「今は自信と余裕を持ってマウンドに上がれています」

 北海道日本ハムの吉川光夫は自身の状態を尋ねられるとニヤリとそう答えた。自信の表れは、今季の投球内容に起因している。初登板は開幕5戦目、4月1日の千葉ロッテ戦(QVCマリン)。そこで5回2/3を6安打3失点、味方打線の援護を借りて幸先よく白星を手に入れると、同8日の埼玉西武戦(東京ドーム)では6回7安打1失点で2勝目、さらに同15日のロッテ戦(札幌ドーム)では7回3安打無失点の快投を披露し、早くも昨季の自身の勝ち星に並ぶ3勝目を挙げた。

 勢いは止まらない。続く同24日のオリックス戦(札幌ドーム)で勝敗つかずも7回2安打1失点と安定したピッチングを見せると、月が変わった5月1日のロッテ戦(QVC)で8回4安打3失点の好投で4勝目。さらに同8日のオリックス戦(京セラドーム)では5回1/3を5安打3失点ながら、相手のバットを3本もへし折る力技で、開幕から無傷の5連勝を飾った。

 高校生ドラフト1巡目での入団からプロ6年目の2012年に14勝5敗、防御率1.71の好成績でチームを優勝に導き、自身もシーズンMVPを受賞するなど一躍、時の人となった。しかし、その年の日本シリーズで左ひじを故障してからは調子が上がらず、13年は7勝15敗、翌14年は3勝4敗と自慢の剛腕は影を潜めた。しかし、今季はここまで5勝0敗、防御率2.54の好成績(5月13日現在)。長く続いたトンネルに、ついに光が見え始めた。

ストライク先行から取り戻した“らしさ”

 今季の吉川は四球から自滅する姿がない。本人は「昨年までは勢いだけで投げていました。今は追い込むまではアバウトに投げていますが、追い込んでからはキャッチャーの構えたところに意識しています」と投球のメリハリを語るとともに、自身のフォームについて「2年間は上半身と下半身のバランスが合わずに苦労しましたが、今は合ってきている」と手応えを話す。

 ここまでの登板6試合、すべてバッテリーを組んでいる女房役・近藤健介に聞くと、その効果は顕著だ。「四球から失点していたのが少しずつなくなっていますし、球に勢いがあるのでカウントを整えられる。ストライクが先行できているのが良いところです」。その分析通り、今季は無駄な四球から失点を繰り返す悪癖がなくなった。

 さらに、厚澤和幸投手コーチも続ける。「真っすぐでファウルを取れるし、状態は良い。ストライクゾーンで勝負しても力負けしない。良かったころのボールに近づいてきている」。ストライクが先行することでピッチング全体に余裕が生まれ、四球を出してからも冷静に打者と向き合って勝負することができている。それが、ここ2年間とは異なる“粘りの投球”につながっている。不調時には140キロ台後半にほとんど乗ることがなかった球速も、今季は最速151キロを計測。力でねじ伏せる“らしさ”を取り戻している。

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著者プロフィール

プロ野球の”いま”を伝える野球専門誌。年4回『季刊ベースボール・タイムズ』を発行し、現在は『vol.41 2019冬号』が絶賛発売中。毎年2月に増刊号として発行される選手名鑑『プロ野球プレイヤーズファイル』も好評。今年もさらにスケールアップした内容で発行を予定している。

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