中日・福田が9年目で習得した独自打法 華麗なスイングで竜の“ゴジラ”へ

ベースボール・タイムズ

悪癖を矯正した独特のフォーム

編み出した独特のフォームが右肩の突っ込みを防ぎ、今季の飛躍につながっている 【写真は共同】

 この悪癖を矯正する手段としてたどり着いたのが、昨秋のキャンプに編み出した独特の打撃フォームだった。

「投手に正対することで右肩が背中側に入り過ぎず、ちょうどいいトップの位置にもっていけるんです。スイングも右中間方向に体重を移動させるような意識で、インコースに球が来ても体の回転で対応する。すべて感覚ですけど。今は1球1球で『ダメだったな』とか確認もできています」

 投手が捕手とサインの交換が終わりモーションを開始するまで、福田は投手に正対して腕を上下に揺らす。投球姿勢に入ると同時に体をねじって構えに入る。この一連の動作にはすべて意味がある。感覚的に編み出した新たな打撃フォーム。それにより、打席内で余裕も生まれた。

「去年までは力み倒してやっていましたが、今は冷静に打席に入れています。それができるようになったのもバッティングの技術に自信が持てたことです。あれこれ考えながらピッチャーに向かっていく必要がなくなりましたね。コースや球種を絞ることはない。どのピッチャーもストレートに合わせて振っていこうと。変化球は反応で打てるように。(変化球を)意識するとボールを迎えにいってしまうので。(打てなかった時は)相手どうこうじゃなく、自分で崩れているんです」

 福田がファンを魅了する理由の1つとして、豪快かつ華麗なバットスイングにある。特徴はボールをとらえた後のフォロースルー。大きく振り払うようにバットは美しい弧を描く。より華麗に見せる秘訣(ひけつ)があるとすれば、それはやはり右肩の使い方だという。

「土井コーチや、波留コーチから教わった足の使い方が実践できている時や、やっぱり右肩が突っ込まない時はバットもきれいに振れていると思います。悪い時はきれいに回らないですね」

雌伏の8年間を経て竜の“ゴジラ”へ

 プロ9年目。福田が、真のブレークを果たすために必要なこと。それは本人が感じている収穫と課題から見えてくる。

「1軍の試合にスタメンで出て、あまり言わないようにはしているんですが、『これほどまでか』というぐらい疲れました。気持ちが弱い僕が悪いんですけど、『これほどプレッシャーがかかるのか』って……。今までは1軍にいても代打ばかり。スタメンとして試合に出続ける中で、調子の良さを継続することがどれほど難しいかということが分かった。それが収穫です。これからの課題は、それを継続すること。結果もそうですけど、自分のバッティングの形を継続することですね」

 今季の活躍を支えている要因が、福田自ら導き出した打撃フォームであるならば、結果が出なくても、愚直なまでに今の形を継続することが真のブレークを果たすカギとなるだろう。それには福田自身も認める精神面の弱さを克服することも必要になる。打者は3割の成功で評価される職業。7割の失敗に動じることなく、「今の形で間違っていない」と堂々とした振る舞いでベンチへ帰ってくることができるかだろう。

「今は気分転換をするとかまったくないです。常に野球のことしか考えていないですね。食事をしている時も。今は時間がないです」

 雌伏の8年間を経て、ようやく今、福田は自らの野球人生を懸けた真剣勝負に挑んでいる。ただひたすら自らのバッティングを極めようとしている福田の姿に、大きな期待を抱かずにはいられない。9年目であるが、まだ26歳。まだまだ活躍できる年齢だ。そして願わくば、同じ「55」の背番号で世界に名を残した大打者・松井秀喜氏のような高貴な風格を求めたい。かつての“ゴジラ”に匹敵するほどの高揚感が、福田のスイングにはある。8年間くすぶり続けた殻を完全に破ることができれば、その姿は“ゴジラ”と呼ばれるにふさわしいものとなっているはずだ。

(取材・文:高橋健二/ベースボール・タイムズ)

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著者プロフィール

プロ野球の”いま”を伝える野球専門誌。年4回『季刊ベースボール・タイムズ』を発行し、現在は『vol.41 2019冬号』が絶賛発売中。毎年2月に増刊号として発行される選手名鑑『プロ野球プレイヤーズファイル』も好評。今年もさらにスケールアップした内容で発行を予定している。

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