女子ボクシング界を盛り上げるために〜世界王者・藤岡奈穂子の使命〜
メキシコで世界王者が地域王者に挑戦
日本時間3月15日、WBA女子世界スーパーフライ級王者の藤岡奈穂子がメキシコでメキシコ女子ボクシング界の大物マリアナ・フアレスと対戦する 【スポーツナビ】
「海外は賭け。次にやるなら、3本目のベルトを狙って、フライ級か、ライトフライ級で勝負したかった」
元WBC女子世界ミニフライ級王者でもある藤岡は昨年11月、3階級制覇を目指し、ドイツでWBA女子世界フライ級王者のスージー・ケンティキアン(ドイツ)に挑戦。判定でプロ初黒星を喫していた。アウェイの厳しさは身を持って知っている。だが、オファーを電話で伝えてきた柴田貴之マネージャー兼トレーナーには、その場で返事をする必要があった。
「無言のまま、すごく悩んだけど、相手がフアレスというメキシコで試合するなら、この人しかいないという選手。それにメキシコは女子ボクシングの本場で、男子で言えば、ラスベガスのような申し分のない場所。最高の舞台で最高の相手と戦える。そこだけに集中しようと」
人気と強さを兼ね備えたフアレス
メキシコの高地に合わせて低酸素トレーニングに取り組む藤岡。2500メートルに設定されたトレーニングルームでダッシュとミット打ちを繰り返した 【スポーツナビ】
「自分のなかで、燃え尽きたいというか、ドイツでは完全燃焼できなかったのでメキシコで爆発したい気持ちがある。それとポスターにはメキシコ対日本と書かれているし、日本を背負って、日本の女子ボクサーはこんなだぞ、というのを見せたい」
フアレスと日本人の対戦成績は通算4勝1敗。1敗は2年前に強打の元東洋太平洋女子バンタム級王者、東郷理代(アルファ)に初回TKO負けを喫したもので、3カ月後には戦い方を変えて判定で雪辱した。引き出しも多く、体格でも上のフアレスに対し、「機動力命で早い回で勝負を決めたい」と判定では分が悪いアウェイの戦いを見据えている。
山口と3階級上げての王座戦
「女子ボクシングを背負う立場であるチャンピオンの義務」と女子ボクシング人気向上の牽引役として数々の印象の残るファイトを見せてきた藤岡 【スポーツナビ】
その最たる例が、13年11月に行われたWBA女子世界スーパーフライ級王者の山口直子(白井・具志堅)との一戦だ。国内屈指の強打者である山口と藤岡の組み合わせは当時、日本女子ボクシング最高のカードと言われた。問題はその階級差だ。山口のスーパーフライ級と藤岡のミニフライ級では3階級、約4.5キロの体重差があり、藤岡にとっては“無謀な挑戦”であり“常識を超えた試合”でもあった。親交のあった2人に共通の思いは低迷する女子ボクシングの現状打破。人気向上の起爆剤となるべく、2度防衛したミニフライ級のベルトを投げ打ってまで藤岡は山口と拳を交えたのだ。
期待以上の激闘も厳しい現実…
「ぐっさん(山口)も『テレビがつくと思ったのに』って。で、実際にはつかなくて。そういう意味では複雑な思いを抱えながらの試合でした。もちろん、会場は盛り上がったし、試合自体は高く評価してもらえたけど、『だから何?』というか、その後が続かないというか。だったら、残った自分が話題をつくり続けるしかないな、と」