MLSへ旅立つカカの栄光と挫折 今も謙虚さを失わないスーパースター
試合後、サポーターに感謝の意を伝えるカカ。今後はMLSでプレーする 【Getty Images】
試合後、ヒーローは爽やかな笑顔を浮かべてスタンドへ駆け寄り、頭上で拍手を繰り返して感謝の意を伝えた。サポーターは「フィッカ!(行かないで!)」と絶叫し、涙ぐむ者も少なくなかった。
世界の頂点を極めたキャリア
10代前半の頃は小柄で痩せており、せっかくのテクニックを発揮できなかった。特別なフィジカルトレーニングを施されたが、U−15でもU−17でも控え。下部組織の公式戦にほとんど出場できず、プロ契約を結べるかどうかも定かではなかった。
ところが18歳のとき、思いがけない幸運が訪れる。トップチームの紅白戦要員として練習に参加した際、当時の監督に潜在能力を見込まれ、以後トップチームに据え置かれたのである。
2001年2月、18歳9カ月でデビューすると、貴重な得点を挙げてほどなくレギュラーに。02年にはブラジル代表としてワールドカップ(W杯)に出場し、優勝を経験した。そして03年8月、ACミランへ移籍。イタリアでの生活とプレースタイルにもすぐに順応し、06−07シーズンの欧州チャンピオンズリーグで優勝の立役者となって、07年のクラブW杯も制覇。この年の世界最優秀選手に選ばれた。選手としてこれ以上ない高みに到達したのである。
ところが09年、舞台が暗転する。巨額の移籍金でレアル・マドリーに加入したが、度重なる故障に泣かされ、ジョゼ・モウリーニョ監督の信頼を勝ち取ることができず、ベンチを暖めることが多かった。
13年、出場機会を求めてミランへ復帰。まずまずのプレーを見せたが、熱望していたW杯出場は叶わなかった。そして今年7月、MLS(メジャーリーグサッカー)のオーランド・シティへ移籍。次のシーズンの開幕は来年3月であるため、年末までサンパウロでプレーすることを選んだ。
主として、2列目左サイドでプレー。全盛時のような爆発的なスピードこそ影を潜めたが、優れた状況判断と洗練されたテクニックで決定機を作り出した。ブラジル代表にも1年7カ月ぶりに復帰した。