緊張感溢れるテニスを生で見てみたい! 「松原渓のスポーツ百景」

松原渓

【Getty Images】

白熱した全米オープンテニス決勝

 静かなコートに響き渡るボールの音。全身の筋肉を駆使した緊張感溢れるラリー。テニスの全米オープン男子シングルス決勝 錦織圭(日清食品)vs.マリン・チリッチ(クロアチア)は、頂点を決めるにふさわしい、白熱したゲームだった。

 世界が注目する舞台で、錦織選手の前に立ちはだかったのは、準決勝では世界ランク3位のロジャー・フェデラー選手(スイス)を相手にサービスエースを連発して完勝したチリッチ選手。この決勝でも、チリッチ選手の198センチの長身から振り下ろされる高速サーブがさく裂した。

 最高時速は216キロで、スローのリプレーでなければ軌道が見えないようなスピード。このサーブには、錦織選手の持ち味であるリターンエースも見せ場なく……。それでも、粘り強いレシーブから打ち合いに持ち込んだ時は錦織選手の強さが光った。プレーが終わるたびに会場から聞こえる声援からは、錦織選手を応援する人の多さが伝わってきた。

 今回の錦織選手の活躍で、テニス観戦の面白さに目覚めた人も多いのではないだろうか? もちろん、私もその1人。テニスを観るには有料チャンネルに加入しなければ見られないため(ウィンブルドンは地上波でも放送がある)、観戦のハードルは低くはない。それでも、錦織選手が勝ち進むにつれて申し込む人は相当な数になり、決勝に進出してからは申し込みの電話がつながらなくなったほどだという。

競技それぞれの観戦の楽しみ方

自分の名前を入れたユニフォームを着て応援 【松原渓】

 今はさまざまな競技が、有料チャンネルなどで見られるようになった。卓球、柔道、スキー、モータースポーツ、MLB……海外サッカーに至っては、英・仏・伊・独・西など、各国リーグのチャンネルがあるほど。

 でも、今回全米オープンテニスを見ていて感じたのは、「やっぱり、一度は生で見てみたい!」ということ。スタジアムや球場やコートに行けば、テレビ画面に映らない好プレーも見られるし、競技ならではの観戦マナーも知ることができたりして、楽しみ方が広がる。

 私は仕事柄、サッカースタジアムに行くことが多い。10年ほど前から各地のスタジアムに通っているけれど、今でもスタジアムに行けば新鮮な発見がたくさんある。
 サッカーは観戦する際のスタイルがテニスとは正反対かもしれない。たとえば、テニスではラリー中の声援や大きな音はプレーの妨げになるため禁止される。以前、伊達公子選手が観客の大きなため息を指摘したというニュースがあったけれど、「試合中にそれほど音が鮮明に聞こえるものなのか!」と驚いた。極限まで神経を研ぎすませてプレーしている、その緊張感を観客として共有できるのは貴重な体験だと思う。試合中の「音」に敏感になるという点では、ゴルフも同じだ。

 一方、野球やサッカーの試合は賑やかで、観客の歓声は常に鳴り止まない。サポーターの応援合戦も見どころだ。観る「場所」によって観戦スタイルが違ってくるのも面白い。最も賑やかなのが、熱いサポーターが集まる「ゴール裏」。中でもその中心は比較的コアなサポーターが集まる場所で、試合中は90分間、ほぼ座ることがない。

 大きな旗を揺らしたり、小刻みにジャンプしたり、大きな声で選手に気合いを送り続ける。横断幕もさまざまに工夫が凝らされていて楽しい。一方、「メーンスタンド(テレビカメラと同じ視点)」と「バックスタンド(テレビに映る逆側の席)」は、初めてスタジアムに来るお客さんも含めた一般向けだ。2階や3階席など上の方はフォーメーションや全体の流れがよく見えるし、1階席は選手の表情や試合中の声なども聞こえてきたりと、違った楽しみ方ができる。

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著者プロフィール

サッカー番組のアシスタントMCを経て、現在はBSフジにて『INAC TV』オフィシャルキャスターを務める。2008年より、スポーツライターとしての活動もスタート。日テレ・ベレーザの下部組織であるメニーナのセレクションを受けたことがある。『キャプテン翼』の原作者である高橋陽一先生が監督を務める女子芸能人フットサルチーム「南葛シューターズ」にて現在もプレー。父親の影響で、幼少時から登山、クロスカントリー、サイクリングなど、アウトドア体験が豊富。「Yahoo!ニュース個人」(http://bylines.news.yahoo.co.jp/matsubarakei/)でも連載中

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