呼吸を観察する瞑想法に挑戦 基礎・第4回「瞑想」

村上華子

【Getty Images】

瞑想のメリット

 前回、前々回の「ヨガポーズ(アーサナ)」、「呼吸法(プラーナヤーマ)」のレクチャーに続いて、今日はヨガの三大要素を構成する最後のひとつ、「瞑想」についてお伝えします。

 瞑想はサンスクリット語で「ディヤーナ」と呼ばれ、自分自身と対話しながら自己実現する、悟りを開くための行法。“ヨガ本来の目的=瞑想をすること”と言われるほど、ヨガの実践のなかで大切に扱われています。最近ではアスリートのメンタルトレーニングや、ビジネスマンの自己啓発など、幅広いフィールドで瞑想のテクニックが実践されるようにもなりました。実際に、瞑想にはどんなメリットがあるのでしょうか?

 私たち人間は1日に約6万回という膨大な数の考えごとをしていると言われ、これはほぼ毎秒休みなく考え続けて、頭の中がフル活動している状態。さらに、置かれている状況によっては、考え事の60%以上がネガティブな内容という場合も……。

 これは感情のコントロールが苦手な人にとってみると、たとえば、遊園地のコーヒーカップに乗せられ、ぐるぐると“雑念”という回転に振り回されている状況。集中力も散漫になるし、本来やるべき目の前のことが手につかないなんて、苦い経験をお持ちの人も多いのではないでしょうか。そんな時こそ、瞑想の出番です。

“今という瞬間”一点に意識を集中させる

【Getty Images】

 一日のうちでほっとひと息つけるタイミングに、数分間、目を閉じてゆったりと呼吸を感じながら、頭のなかを空っぽにしましょう。高ぶった感情や五感が鎮まり、疲れたココロがリセットされます。そして、雑念が取り除かれて整理されたココロのスペースには、冷静な判断力や直観力、記憶力や集中力、創造性や幸福感が訪れます。とはいえ、いざ、瞑想にチャレンジ!と目を閉じても、次々と雑念が湧いたり、眠気が襲ったり、ただ“無”になる作業は案外難しいもの。

 瞑想は“今という瞬間”一点に意識を集中させるココロのエクササイズ。毎日こつこつ実践することで、集中の持久力を伸ばし、ココロと体の微細な変化や陥りやすい感情の癖など、自分をコントロールするための気づきを得ることができます。

 そして、その自分を客観視する訓練が、ぐるぐると回るコーヒーカップから自主的に降り、回り続けるコーヒーカップを外側から見つめるという“巻き込まれない冷静な自分”を培います。瞑想の習慣を身につけたら、すべてのものと心地よく調和した感覚を味わいながら、幸せの感度を上げていきましょう!

Let's TRY「呼吸を観察する瞑想法」

【坂本清】

“集中の対象”を持つことで、瞑想をスムーズに深めてくれる「呼吸を観察する瞑想法」をご紹介します。この行法は名前の通り、呼吸のリズムや、体の微細な動きを観察することで、今の状態・瞬間にフォーカス。呼吸の善し悪しは考えず、ありのままの自分を見つめる作業が、ココロと体の心地よい調和を育みます。まずは、1日5分間からスタート。毎日続けていくうちに、10分、15分、20分……と、無理なく瞑想タイムが伸びていきます。

【瞑想法を実践するにあたって】
・なるべく食後2時間が経過してから行いましょう
・適温で気が散らない静かな場所を選びましょう
・体を締め付けない楽な服装で行いましょう
・特別な指示がない場合は基本、鼻呼吸で行います

チンムドラー(智慧の印)の形 【坂本清】

【瞑想の手順】
(1)あぐらで座り、軽く目を閉じる。両手は膝の上に
※手の形を「チンムドラー(智慧の印)」にしても良い

長時間座るのが苦痛な人は、折り畳んだブランケットに半分だけ座ることで高さをつけて 【坂本清】

(2)下腹を軽く引き締め、頭頂で天井を軽く押し上げるようなイメージで背筋を整えたら、軽くあごを引き、顔は正面。首の後ろをすっきりと伸ばす
(3)吐く息で、上半身の緊張を緩める。特に眉間やまぶた、肩をリラックス
(4)心地よい自然な呼吸を行いながら、ただ観察する。たとえば息を吐いた時・吸った時、体のどこが動きどんな感触があるか? どんなリズムで呼吸しているか?
(5)瞑想を終える時は、胸の前に合掌を作り、しばらく余韻を感じる。その後ゆっくりと目を開き、斜め下の床一点を見つめる

【バリエーション】
・呼吸の数をカウントする。「吐く→吸う」動作10回を1セットとして、5セット繰り返す。慣れてきたら徐々に回数を増やしていく
・呼吸にイメージをつける。吐く息では要らないもの(怒り・疲れ・迷い・不安・焦り)を吐き出し、吸う息ではポジティブなエネルギー(光・生気・生命エネルギー)を体内に満たすようなイメージで呼吸を行う

【POINT】
あぐらを組んだ時に腰や背中が丸くなる人や、長時間座るのが苦痛な人は、折り畳んだブランケットに半分だけ座るような要領で高さをつけることで、体が安定し正しい姿勢を楽にキープすることが可能に。体が快適な状態で安定すると、瞑想への集中も深まります。
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著者プロフィール

ヨガインストラクター、ライター。2004年にヨガを始め、綿本彰氏のスクールで指導者としてのトレーニングを積む。仲間とともに設立したヨガスタジオ「HAS YOGA(ハスヨガ)」などで指導を行うほか、ヨガコラムの執筆など多方面で活躍。ヨガを通じ、人々の幸せの輪が広がることを願っている。2012年12月に第一子を出産後は、自身の経験を踏まえながらマタニティヨガの普及にも情熱を注ぐ

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