走る前にすべてが決まる!? 正しい走りは「走らないトレーニング」から!

青山剛

【青山剛】

 前回までに走れるカラダ、そしてモノの準備を紹介してきました。走りやすいこの季節、まずはせっかくですから「気の赴くままに」走ってみましょう。

 ペースや距離などはあまり決めず、まずは近所の公園、河川敷などを探索です。今まで通らなかったような道をあえて探して走ってみると、驚くほど近所でいろいろな発見があるのもランニングの醍醐味(だいごみ)のひとつです。

ランニングは正しいかどうかの判断が難しいスポーツ

 しかし、走り出して数日すると、今度はその「フォーム」が正しいのかどうか気になり始めます。実はランニングはとても「それが正しいかどうか」を判断するのが難しいスポーツです。

 健康な方であれば、1キロくらいなら走れてしまいます。しかし水泳だとそうはいきません。ゴルフも同じく、いきなりクラブを振ってボールがしっかり飛んでいくことはまれでしょう。

 私はよくセミナーでこのことを「できてしまうスポーツの落とし穴」と呼んでいます。水泳、ゴルフのように、すぐ「できた、できない」が判断できるスポーツはきちんとその正しさ、やり方を知ろうと努力するけれど、ランニングのようにすぐに判断できないスポーツは、なかなかそれを知ろうとしない。もしくは、知り方が分からないというわけです。

いかに足を節約して効率よく走るかが重要

【Getty Images】

 では、正しいランニングとはどんなフォームなのでしょうか? コーチの私からスバッといえば「いかに足を節約して効率よく走るか」となります。

 走ることが速い人のことを「足が速い」といいます。野球で速い球が投げることができたり、遠投できる人を「肩が強い」といいます。実はこの日本語が間違ったイメージの始まりです。

 この言い方だと、ランニングは足で走るから足を鍛え、投げるには肩で投げるから肩を鍛え、となってしまいます。ランニングは足の節約、投げることも(私の専門外ですが)おそらく肩の節約がその正しさの追求なのです。

正しく走れるようになる3Sとは?

 ランニングの「足の節約」とは、もっと簡単に言えば、いかに「体幹」を使って走るかということです。体幹とは、頭、腕、足を除いた胴体の部分です。字のごとく体の幹の部分に当たります。腕、足は枝葉のイメージです。枝葉(足)を動かして走るのではなく、幹(体幹)を動かすと枝葉(足)が「つられて動いてしまう」、これが体幹で走る、となるのです。

 では、その体幹で走れるようになるには、どうやってトレーニングを進めていけばいいのでしょうか? それは「3S」の順番がカギとなります。

 正しく走れるようになる3S
1)ストレッチ
2)スイッチ
3)ストレングス

伸ばす→入れる→使うが、正しいフォーム習得の流れ

 まずは「ストレッチ」。体幹がきちんと使えるように各パーツをしっかり「伸ばす」ことからスタートです。

 次に「スイッチ」。聞き慣れないと思いますが、これは私が10年前に付けたトレーニングの名称で、もっと詳しく言えば「体幹にスイッチを入れる」となります。
 走る前に簡単なエクササイズを行い、良い動きを体に染み込ませ、またその部位に「軽い筋肉痛」を起こさせておくことで、正しいランニングフォーム(=体幹が使えたフォーム)に勝手になる、これが私のメソッドのまさにコアとなる部分です。

 そして最後に「ストレングス」。直訳すると「強化する、鍛える」となりますが、ここでは「走る」になります。水泳なら「泳ぐ」、野球なら「投げる、打つ」などですね。

【ストレッチ→スイッチ→ストレングス】とは、【伸ばす→入れる→使う】となり、これが正しいランニングフォームを習得する流れになります。

 走る前に最低限10分間ストレッチ、10分間スイッチ(11種目)を推奨しています。私がパーソナル指導しているチームでは、速い、遅いにかかわらず、このストレッチ、スイッチを行わないと「走るのは禁止」とまで徹底しています。

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著者プロフィール

元プロトライアスリート。大学時にプロ活動を開始し、1999年世界選手権日本代表に選出される。その後トライアスリート中西真知子選手のコーチとなり、指導者としての活動をスタート。同選手を2004年アテネ五輪出場に導く。現在は、ランニング、トライアスロン、クロストレーニングのコーチとして競技者から初心者、子供、タレントまで幅広く指導。著書に『ランニング・コアメソッド』『DVDパーフェクトストレッチ100』など多数。(社)日本トライアスロン連合強化チーム・指導者養成委員 元日本オリンピック委員会・強化コーチ

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