急に走るのは危ない!? まずは通勤をエクササイズに変えよう!

青山剛

【青山剛】

 さあ、春もそこまできています。寒くて縮こまりがちだった身体も少しずつ、「動きたいモード」になってきました。前回までに正しい立ち方、そしてストレッチをいくつか紹介しましたので、そろそろ走り出したいところですが、ここでもう少し「待った!」です。

 社会人になって久しく運動から遠ざかり、体の硬さや肩こり、腰痛を少しでも感じている方は、残念ながら「走れるカラダ」になっていません。そのまま走り出すと、ケガをするリスクが相当高まります。

あなたは正しく歩けているか?

【Getty Images】

 では、まずはどうすればいいのでしょうか? それは「通勤でしっかり歩く」ことから始めればいいのです。「いや、私は通勤で歩いているよ!」という方も多くいらっしゃると思いますが、大事なことは「正しく」歩けているかどうかということです。

 正しく歩けていれば、それはランニングにつながる「エクササイズ」となりますが、正しくなければ、多少カロリー消費をしたとしてもランニングにつながらない、単なる「移動」になってしまいます。
 私が日ごろランニングを教えていて、そのフォームが正しくきれいな方は、レッスンの待ち合わせに歩いてくる時のフォームも正しくきれいになっています。それくらい普段の歩き方が、走り方とリンクしてくるということです。

 そこで今回は通勤時の正しい歩き方を行っていきましょう。まずは悪い(=正しいランニングにつながらない)通勤での歩き方の例です。

通勤時の悪い歩き方

【撮影:真崎貴夫】

 背中が丸く、下を見ている

【撮影:真崎貴夫】

 お腹を出し、のけぞっている

【撮影:真崎貴夫】

 ポケットに手を入れて、腕を振らずに歩いている
 これでは足は疲れるし、腰も痛くなるし、正しい立ち方の定義同様、楽でもなく、安定せず、疲れやすいので持続もできません。従って、正しいランニングには到底つながりません。ましてや「歩きスマホ」などしているのは、姿勢的にもマナー的にも言語道断なのは言うまでもありません。

 それでは、正しい(=正しいランニングにつながる)通勤での歩き方です。通勤時はもちろん手ぶらは少なく、カバンをどちらかの肩にかけたり、手で持ったりしていると思いますので、それを考慮した歩き方を行って行きましょう。

通勤時の正しい歩き方

【撮影:真崎貴夫】

 正しい立ち姿勢が出来ているか確認してスタート

【撮影:真崎貴夫】

 カバンを持っていない腕は、ひじを伸ばしたまま後ろに引く(曲げ伸ばしをしない)ここがポイント!

【撮影:真崎貴夫】

 前に戻した腕はひじを伸ばしたままキープ。視線は前方に保ち、足元は視界でとらえる程度。足は放っておく。

【撮影:真崎貴夫】

 5分ごとくらいでカバンを左右持ちかえる

【撮影:真崎貴夫】

 本来の正しい歩き方(手ぶら・運動着)はひじを曲げて、しっかり後方に引いて歩くのですが、それでは通勤時には目立ちすぎて、ちょっと格好が悪いです。その代わり「ひじの曲げ伸ばしをしないようにする」ことで、骨盤が連動して足が楽に一歩一歩前に出ます。

 また、カバンの持ち手を変えることで、左右のバランス崩れも防ぐことができ、また、片手ずつしっかり意識した「腕振り」を行えます。

階段を積極的に使うことが大事

 そして、通勤時にもう1つ行ってもらいたいことは、「階段を積極的に使う」ことです。私は駅などではエスカレーターを使わず、階段を積極的に使います。通勤時の一番の「トレーニングタイム」は階段です。一気に筋肉の活動量が増え、ランニングへの準備が進みます。

 電車を降り、上り階段が近づくと、9割の方はエスカレーターに乗ってしまいます。私はいつもそれを見て、もったいなあと思ってしまいます。階段はあまりフォーム的なことは難しく考えず、積極的に利用するようにしましょう。唯一チェックすると、それは上り階段は「かかとを落とさない」ことです。

【撮影:真崎貴夫】

 基本は平地同様の歩き姿勢

【撮影:真崎貴夫】

 かかとを落とさない

【撮影:真崎貴夫】

 かかとが落ちている
 かかとを落とさないで上ると、骨盤周りの大きな筋肉(体幹)を使えるので、足が疲れにくいですし、正しいランニングへつながるいい練習になります。逆にかかとが落ちた状態だと、ふくらはぎ、前ももという「走る時に多用したくない筋肉」を使うことになりNGです。

 ちょっと仕事で疲れていて「上りはちょっと……」という時でも、下り階段だけでも使うようにしましょう。後々、ランニングを始めた時に「着地時に使う筋肉の準備」をしておくことができます。

「忙しくて練習時間がない」と言っている方に限って、通勤で正しく歩かず、エスカレーターにすぐ乗ってしまっています。ちょっと慣れてきたら、ひと駅手前で下車して少し長く歩いたり、オフィスビルも階段を使うようにしていきましょう。きっと今後、ランニングを始めた時に、ケガのリスクも減り、正しいフォームに早く近づくはずです。

(撮影:真崎貴夫)

<次回は正しい歩き方(運動着=ジャージ編)>
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著者プロフィール

元プロトライアスリート。大学時にプロ活動を開始し、1999年世界選手権日本代表に選出される。その後トライアスリート中西真知子選手のコーチとなり、指導者としての活動をスタート。同選手を2004年アテネ五輪出場に導く。現在は、ランニング、トライアスロン、クロストレーニングのコーチとして競技者から初心者、子供、タレントまで幅広く指導。著書に『ランニング・コアメソッド』『DVDパーフェクトストレッチ100』など多数。(社)日本トライアスロン連合強化チーム・指導者養成委員 元日本オリンピック委員会・強化コーチ

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