誰が出ても勝ち続ける。
　強い『個』が集結した、強い『チーム』になることを目指す。その中心にいたのは、新鍋だった。
「私が打つのは、崩れた時とか苦しい時。サーブレシーブが（崩れずセッターに）返った時は、自分にトスが上がってくることはないと思っています。だから、自分は絶対崩れちゃダメだ、私が崩れたら負ける。今シーズンは特にそう思い続けてきました」

　踏み切り位置を変えて、外から中に打ってみたり、反対に中から外へ開き、スパイクコースを瞬時に変える。得意な攻撃ばかりでなく、クロスに打ったら次はストレートへ打ったり、相手の守備の穴を見つけ、そのコースを的確に狙う。

　ラリー中の攻撃や、二段トス。「何とかしてほしい」という場面で、難なく『何とかしてくれる』存在であり、加えて、守備の面でも、新鍋はチームの中心だった。

　昨シーズン、コートの中の精神的支柱でもあったリベロの座安琴希が、ケガで今季は試合に出場することができず、３年目の筒井さやかがリベロとして１シーズンを戦い抜くこととなった。

　東九州龍谷高校でも１年時から全国優勝に貢献するなど、経験は豊富だが、Ｖリーグでこれほど多くの試合に出場することはなかった。
　まずは拾い、つなげることに精いっぱいになるのは当たり前。「コトキさんだったら、といつも比べてしまったし、連敗した時はどうしていいか分からなくなってしまった」と言うほど、追い込まれていた。

　不安を抱えていたのは筒井だけでない。中田監督から、ディフェンス面で石井や筒井をカバーすることを責務とされた新鍋も同様だった。
「コトキさんがコートにいないのは、すごく大きくて、苦しかった。今までどれだけ引っ張ってもらっていたのか、甘えていたのか思い知らされました」

　自分のプレーができればＯＫではなく、周囲に目を配り、声をかける。リーダーシップを発揮することは苦手だが、その分はプレーで見せることを意識した。たとえ攻撃が決まらなくても、ボールを追い、次へつなげるのも自分の役目。
「“責任”と言えるかは分からないですけど、少しずつ、自分のことだけじゃなく、チームのことを考えられるようになりました」

　もがき続けながらも壁を越え、新たな境地へ。
「もっともっと、上を目指したいです」

　たくましさが増したエースと、チームの戦いは世界へと続いて行く。苦しんで勝ち取った連覇という栄誉を携え、最強軍団は、１７日にタイで開幕するアジアクラブ選手権大会へ日本代表として出場する。

　目標は１つ。アジアでも、勝ち続けるだけだ。