今こそ10円単位でWIN5を発売すべき=低迷する馬券売上げへのカンフル剤に

橋本全弘

WIN5払戻金の上限が6億円になるが

WIN5の購入額を10円単位に引き下げてみてはどうか(写真は11年6月26日、初めて2億円の払い戻しがでたとき) 【写真は共同】

 消費増税がスタートして、また1円玉の出番が多くなった。ポケットや小銭入れの中に1円玉が溢れ、日々の生活に煩雑さが増した感じだ。1円玉の“洪水”には消費税(3%)が初めて導入された当時(平成元年)を思い出させるが、そんな中、時代の流れを感じさせるのが各種カード。東日本に限ってではあるがJR、地下鉄などで、カードでの支払いに限って1円刻みでカウントされる。現金で払えば十円単位のため繰り上げになってしまう訳で、こんな時に“お得感”を感じる。改めてカードの利便性、“文明の発達”を実感するものである。

 ここまでは普段の生活に置いていたが、競馬の中にも文明の発達を実感したいことがある。それが馬券の発売単位のことである。

 3月初め、JRAより、WIN5馬券(5重勝馬券=指定された5レースの勝ち馬を当てる)の払戻金の上限が6月8日から100円に対して従来の2億円から6億円までアップされると発表された。12年6月の競馬法改正を受けての改革で、確かに上限2億円が3倍の6億円になるのというのは大きな話題とは思うが、果たしてその“恩恵”をうけるのは一体何人の馬券ファンなのか。果たしてこれが真のファンサービスと言える改革なのか……と感じてしまった。

発売から3年、2億円的中はわずか9票

 WIN5は指定された5レースの1着をすべて当てるという難解な馬券で、2011年4月にスタート。100円あたりの払戻金の上限は2億円でインターネット投票のみで発売されている。
 確かに「100円が2億円」という言葉は、刺激的であり、発売当初は反響も多かったが発売3年を過ぎ、売り上げも減少傾向にあることからの施策なのだろう。私の周りの馬券ファンの個人やグループ達からも「毎週挑戦はしているが滅多に当たらないし面白くない……」と冷ややかな感想を耳にする。

 過去3年で上限の2億円が出たことが一体どれほどあり、何人のファンがそれを享受したのか。最初に2億円の配当が出たのが導入から2カ月後の6月26日で3票。以後、約3年間で5回出ているが、それぞれの的中票は2票、1票、1票、1票、1票。計6回2億円配当が出て、的中票は9票。つまりこの3年間で延べ9人の人しか的中させられないのである。その2億円の上限が6億円に跳ね上がったとして果たして、これからその「配当6億円」という結果がでるのはどれほどの可能性があるのか……というのである。

 過去の的中と繰越金をチェックしてみてもいずれも6億円には達しておらず、いくら上限をアップしても配当6億円が出ることなど考えられない……ということではないか。上限アップでWIN5の売り上げが驚異的に伸びればその可能性がないわけでもないが、どう考えてもありえない確率とは言えないだろうか。

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著者プロフィール

 1954年生まれ。愛知県出身。早稲田大学教育学部英語英文学科卒業後、スポーツニッポン新聞東京本社に入社。87年、中央競馬担当記者となり、武豊騎手やオグリキャップ、トウカイテイオー、ナリタブライアンなどの活躍で競馬ブーム真っ盛りの中、最前線記者として奔走した。2004年スポニチ退社後はケンタッキーダービー優勝フサイチペガサス等で知られる馬主・関口房朗氏の競馬顧問に就任、同オーナーとともに世界中のサラブレッドセールに帯同した。その他、共同通信社記者などを経て現在は競馬評論家。また、ジャーナリスト活動の傍ら立ち上げた全日本馬事株式会社では東京馬主協会公式HP(http://www.toa.or.jp/)を制作、管理。さらに競馬コンサルタントとして馬主サポート、香港、韓国の馬主へ日本競馬の紹介など幅広く活動している。著書に「名駿オグリキャップ」(毎日新聞社)「ナリタブライアンを忘れない」(KKベストセラーズ)などがある。

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