カーリング女子、世界に最も近づいた1日 予選リーグ敗退の悔しさを今後の糧に

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長野五輪に並ぶ最高成績

最終戦でスウェーデンに敗れ予選リーグ敗退となった日本。しかし、負けたら終わりの状況から見事な追い上げを見せた 【写真は共同】

 世界ランク1位のスウェーデンに勝てば、準決勝進出を懸けたタイブレークに進出。カーリング女子日本代表は世界4強への扉に手を掛けていた。しかし、あと一歩及ばなかった。

 ソチ五輪のカーリング女子・予選リーグが現地時間17日に行われ、日本はスウェーデンに4−8で敗れた。通算成績は4勝5敗で5位。予選リーグ敗退となったものの、1998年長野大会に並ぶカーリング女子最高順位となった。

 最終戦では勝負どころのミスが響いた。2−2の同点で迎えた第4エンド、スキップ小笠原歩のショットはやや強く、ハウスの中心を通過してしまう。これでスウェーデンに2点を勝ち越されると、第5エンドでもドロー(ハウスの中にストーンを止める)ショットが弱く連続失点。格上相手に3点差をつけられて前半を終えたのは痛恨だった。同日午前中の中国戦では89%のショット成功率を記録した小笠原だったが、スウェーデン戦ではその数字を56%まで落とすなど明らかに精彩を欠いた。

「(開催国の)ロシアの試合がなかったことでお客さんも少なく、アイスコンディションが、これまでとは違っていました。それに順応するのに時間がすごくかかってしまった。少ないチャンスをモノにするにはドロー合戦になるので、その部分で私もしっかりできなかったと思います」(小笠原)

 最後まで粘り強く戦った。4−8とリードされ敗色濃厚の最終エンド。しかも先行の日本はスチールで4点を奪わなければいけない。現実的に考えて逆転はほぼ不可能なミッションだった。それでも選手たちはギブアップをせずに戦い続けた。「もっともっと試合がしたかった」(小笠原)。その思いが選手たちを突き動かした。

負けられない状況から見せた追い上げ

 今大会は初戦の韓国戦を7−12で落とし、敗戦からのスタートだった。デンマーク、ロシアに連勝したものの、米国、英国、カナダと3連敗。2勝4敗と崖っぷちに立たされた。だが、負けたら終わりの状況から見せた追い上げは実に見事だった。

 世界ランク4位のスイスとの一戦は、序盤こそ劣勢に立たされたが、徐々に盛り返し逆転。最後は延長戦の末に勝利をつかんだ。さらに昨年11月のパシフィック・アジア選手権と同12月の世界最終予選で計5連敗していた同5位の中国相手にも、終始ペースをつかみ、2試合連続で金星を挙げた。「カーリングはどこが勝つか分からない、日本にもチャンスがあることを証明したい」。小笠原はそう思い続けながら戦っていた。

 結婚・出産を経て現役に復帰した小笠原と、サードの船山弓枝は共にこれが3度目の五輪。2002年のソルトレークシティ大会は8位、06年のトリノ大会は7位に終わった。今大会への出場権は世界最終予選を勝ち抜いた末につかんだが、相手はランキング上では格上ばかり。見通しは厳しく「どの国に勝っても下克上」と、選手たちも口をそろえていたほどだ。

 それでも、いざふたを開けてみれば、最終戦前の時点で4勝(4敗)を挙げた。初戦前日にインフルエンザで離脱した小野寺佳歩の穴も、セカンドで出場した吉田知那美が埋めてみせた。あどけない笑顔を見せる22歳の吉田は「自分たちがやることをやれば、どのチームも勝てない相手ではないというのがこの五輪で分かりました」と言い切る。大会序盤は小野寺の不在を嘆いていた小笠原も「彼女(吉田)は自分の仕事をきっちり果たしている」と、その成長ぶりに目を細めた。

「チームとして急成長した」

 スウェーデンに敗れたあと、小笠原の目は赤かった。船山は時おり涙で言葉を震わせた。選手全員が悔しさをあらわにした。だが、それは決して後ろ向きな感情ではなかった。
「あと1つ勝てば良かったので本当に残念です。でも現役に戻ってきて本当に良かった。娘にはこっちに来るときに手紙をもらったんです。『負けないでね』と書かれていたんですが、半分以上負けちゃいました(苦笑)。ただ頑張っていた姿はちゃんと伝わっていたと思います」(船山)

「去年の日本選手権で負けたのがちょうど今日だったので、まさかその1年後に五輪の舞台で決勝トーナメントに絡める試合をしているなんて想像できませんでした。チームとしても急成長しましたし、自分もみんなのおかげでこの舞台でプレーできて本当に幸せだったなと思います」(小笠原)

 大粒の涙を流した吉田は、この悔しさをバネに早くも次を見据える。不慣れなセカンドで出場したこともあり、技術不足を痛感。成長を感じながらも「基礎的な部分から徹底的にたたき直したい」とさらなる向上を目指す。

 チーム結成から約3年とまだ日は浅い。そんな彼女たちが世界の4強を懸けて、五輪2連覇中の女王と相まみえた。惜しくも及ばなかったが、その奮闘ぶりは多くの人の胸を打つものだった。「今大会は良い試合ができました。世界に近づけたなという自信にはなったので、ここでやめちゃいけないなと思いました」。小笠原の力強い言葉は、今後への意志を確かに含んでいた。

<了>

(取材・文:大橋護良/スポーツナビ)
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