バレー界初の挑戦はあっけない幕切れ 埋まらなかった外国人監督と協会の溝
終えんはわずか1年で訪れた
全日本男子の監督に就任した南部正司氏(左から2番目)。 【坂本清】
事実上の解任だった。
その最も大きな要因は、昨年9月に行われた世界選手権アジア最終予選(愛知・小牧)で韓国に敗れ、14大会ぶりに出場権を逃したことだ。そして、互いが目指す方向性に大きなギャップがあった、と荒木田裕子・日本バレーボール協会強化事業本部長は言う。
「ゲーリーが見てきた米国のバレーボールは、最高に強い、技術も意識も高い選手がそろってできたバレー。彼の言う通りにできたら、日本は間違いなく強くなったはずです。でも、現状はそこまで育っていなかった。その状況で、ゲーリーの考えるバレー、方向性とこれからの日本代表が融合すること――同じ体制で進めていく中で、ここからまだのびしろがあると期待することは難しいと判断しました」
鳴り物入りで始まった、日本バレーボール界にとって初めての挑戦。終えんは、あまりにあっけないものだった。
翻された「覚悟」
ところが1年もたたないうちに、その「覚悟」が翻される。
昨年のワールドリーグは3勝7敗で最下位。9月の世界選手権アジア最終予選で韓国に完敗。さらに11月のワールドグランドチャンピオンズカップ(以下、グラチャン)ではわずか1セットしか奪えずに5戦全敗……。
結果だけを見れば、監督解任という声が出るのも決して不思議ではない。しかし、中野前会長の言葉にあるように、「すぐに結果が出ない」ことは想定内だったはずだ。
実際にサトウ監督自身も、グラチャンで最下位に終わった直後に「責任はすべて自分にある」としながらも、「選手の選考に制限があった。これから新しい選手を発掘したいし、そういう選手が全日本に参加してくれれば、もっといいチームが作れるんじゃないか」と2年目のシーズンへの展望を述べていた。加えて桑田美仁・強化事業本部全日本男子バレーボールチームゼネラルマネジャー(GM)も「16年までゲーリーに全権を託す、という方向性は変わらない」と続投を断言していた。
「バレー観に隔たりがあった」
わずか1年での退任となったゲーリー・サトウ前監督。現場からの支持は得ていたが…… 【坂本清】
世界選手権出場を逃した9月から数度に渡り、強化委員会を開催。当初はサトウ監督の続投も視野に入れ、翌年度に向けた強化方法が検討されたが、量より質を重視し「短い練習時間で十分」とボール練習は2時間半程度でいいとするサトウ監督と、「長時間の練習を重ねて技術が磨かれる」と考える協会側のギャップは広がるばかり。繰り返し、話し合いの機会は設けられたが、羽牟裕一郎・日本バレーボール協会会長は「バレー観に隔たりがあり、それを埋めることを怠った。将来へ向けた明るい兆しを感じてはいたが、ゲーリーが感じる危機感と、われわれが感じる危機感に温度差があった」と語った。
12月28日には自薦、他薦を含む5名の候補者がそれぞれの強化方針を発表する場を設けたが、その5名にサトウ監督はすでに含まれず。5時間におよぶプレゼンを受け、次期監督には「20年に向けた構造が最もしっかりしていた」という理由から、南部監督を推薦することが決定。1月29日の理事会で承認を受け、2月5日、南部新監督が誕生した。