春高バレーで躍動する201センチの新星=雄物川高校1年 鈴木祐貴

米虫紀子

春高バレーで躍動する身長201センチの1年生、雄物川高の鈴木祐貴 【アフロスポーツ】

 1月5日に開幕した第66回全日本バレーボール高等学校選手権大会(春高バレー)は、7日に準々決勝を終え、男女ともベスト4が出そろった。

 男子では2年連続の三冠(インターハイ、国体、春高バレー)へと突き進む星城(愛知)と、東福岡(福岡)、鹿児島商(鹿児島)、雄物川(秋田)が、11日に行われる準決勝へと駒を進めた。

走れて守れる201センチの逸材

 低迷の続いている全日本男子バレーだが、2020年の東京五輪を見据えた時には、明るい光もある。その一つは、星城のエース石川祐希。そしてもう一つ、大きな星が輝き始めた。雄物川の身長201センチの1年生、鈴木祐貴だ。石川に比べればまだ荒削りで、パワーもジャンプ力もこれからというところだが、世界に通じるスケールの大きさと可能性を秘めた選手である。

 鈴木をひと言で表すならば『動ける2メートル』。日本人としては規格外の身長2メートルともなると、素早い動きや低い姿勢での守備を苦手とする選手が多い。しかし、鈴木はバレー歴4年目の1年生ながら、動きがしなやかで、守備もそつなくこなす。

 雄物川の宇佐美義和監督は言う。「あれだけ動けて、拾えて、180センチ台の選手と同じプレーができる。私は30年以上指導者をやっていますが、あんな2メートルの選手は、日本の中では今まで見たことがありません」

 小学生時代は少年野球でピッチャーをしていたと言うから、そのあたりが運動能力の高さに影響しているのかもしれない。それに加えて、高校に入ってからは本格的にトレーニングを行い、少しずつジャンプ力、パワーを増してきた。大型の選手は高校ではミドルブロッカーとして起用されることが多いが、宇佐美監督は、「ミドルで使う気はまったくなかった」と言う。

「世界と戦うには、あの子はウイングスパイカーじゃないと。点取り屋だし、レシーブをしたい人間ですから」

 鈴木本人も、「(後衛でも)ずっとコートに立っていられるから」とウイングスパイカーにこだわる。

オールラウンダーとして、東京五輪へ

 今大会はオポジットだが、中学時代はサーブレシーブもしていた。長い手足を持て余すことなく、バランスのいい動きで無難に返していた。

 中学3年の全国都道府県対抗中学バレーボール大会(JOCジュニアオリンピックカップ)の時には、「オールラウンダーな選手になりたい。目標とする選手は、米山裕太選手です。何でもできるので、すごいと思う」と目を輝かせた。
 華やかな攻撃型の選手ではなく、サーブレシーブの名手、米山(東レ)を目標に掲げていたことからも、守備への意識の高さがうかがえる。今大会ではサーブレシーブには入っていないが、高校でも練習は続けているという。

 宇佐美監督は、「素直さ、謙虚さという、人間として一番大事なものを持っている選手。あと2年間、彼を育てられると思うと楽しみです。キューバのレオンのような選手に育ってほしいと、私は夢見てるんですよ」と顔をほころばせた。

 キューバのウイングスパイカー、ウィルフレド・レオンは、14歳で代表入りし、15歳で早くもエースとなった。17歳だった2010年の世界選手権(イタリア)では銀メダル獲得の原動力となり、翌年のワールドカップでは18歳で主将を務めた。鈴木と同じ身長201センチで、高い跳躍力とうまさ、機敏さを備え、サーブレシーブも安定している。

 2メートル以上の長身、しかもあの若さで、あんなプレーができる。キューバ人の能力は桁外れだと、別世界のことのように感じていたが、日本の選手ももしかしたら彼に近づけるのか……と期待は膨らむ。

 鈴木の頭の中にはもちろん、東京五輪がある。「絶対出たいです。東京五輪が決まってから、トレーニングももっと頑張ろうって、気持ちが入りました」。6年後のその舞台までに、「もっと器用な選手になっていたい。レシーブももっとうまくなって、筋力とジャンプ力もつけて、体自体も強くしたい」と貪欲だ。

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著者プロフィール

大阪府生まれ。大学卒業後、広告会社にコピーライターとして勤務したのち、フリーのライターに。野球、バレーボールを中心に取材を続ける。『Number』(文藝春秋)、『月刊バレーボール』(日本文化出版)、『プロ野球ai』(日刊スポーツ出版社)、『バボちゃんネット』などに執筆。著書に『ブラジルバレーを最強にした「人」と「システム」』(東邦出版)。

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