岐路に立つ部活動 大阪体育大学が運動部活動・スポーツ指導人材を養成 社会人講座4期生25人に修了証

大阪体育大学
チーム・協会

運動部活動指導認定プログラム JSPO公認スポーツコーチングリーダー資格を取得

 運動部活動が教員不足、国の地域移行方針で岐路に立つ中、大阪体育大学が主に社会人を対象に、中学校などでの運動部活動や地域のスポーツクラブで指導に携わる人材の養成に取り組んでいる。リカレント講座「運動部活動指導認定プログラム」を2023年から春秋の年2回、開講。スポーツ指導に初めてチャレンジする会社員、さらなるスキルアップや学び直しを目指す指導者らが、オンデマンド中心のプログラムを全国から受講している。受講修了者は日本スポーツ協会(JSPO)公認のスポーツコーチングリーダー資格が取得でき、これまでに約160人が修了証を取得した。

 2月9日(日)の最終演習では、4期生25名が対面とオンラインでワークショップに参加した。

最終演習には対面、オンラインで25名が参加した 【大阪体育大学】

★最終演習「グッドコーチの条件とは?」 「あなたの考えるグッドコーチの条件とは?」 最終演習「運動部活動の実践Ⅰ」では、土屋裕睦スポーツ科学部教授(スポーツ心理学)が受講者に問いかけた。土屋教授は実例に基づいてスポーツ・ハラスメント(スポハラ)の類型を紹介。受講者は4人前後のグループに分かれ、スポハラに頼らない優れたグッドコーチの条件を話し合って紙に書き、「態度・行動」「思考・判断」「共通知識」「専門知識」の4項目に区切られたボードに貼っていく。最後に土屋教授から「平凡な指導者は指示をする。良い指導者はうまく説明する。優れた指導者は自らやってみせる。偉大な指導者は心に火をつける」と聞かされ、大きくうなずいていた。

グッドコーチに求められる行動や判断を書いた紙をボードに貼り付けていく 【大阪体育大学】

 午後からの「実践Ⅱ」では、小林博隆スポーツ科学部准教授(体育科教育学)の指導で、コーチ役が板で隠れた選手役にカラーブロックの組み立て方を言葉だけで伝えるワークなどに取り組み、言葉と動作・行動による指導法を学んだ。体育館での「実践Ⅲ」では、3グループがバレーボール、ハンドボール、バスケットボールの練習メニューを自分たちで考え、大阪体育大学浪商中学野球部員を指導。講師の池上正客員教授と反省点を話し合った。

コーチ役は自分で組み立てたカラーブロックを言葉だけで伝え、選手役は同じ組み立て方をめざす。的確な指示の伝え方を学ぶ 【大阪体育大学】

受講者は練習のメニューやアップの仕方を考えて中学生を指導。村上客員教授と反省点を話し合った 【大阪体育大学】

★JSPO公認資格を取得 運動部活動指導認定プログラムは、春開講、秋開講の2期制で、オンデマンド50時間、ハイフレックス(対面・オンライン併用)10時間の必修科目計60時間を修了すると、大阪体育大学が発行する修了証、学校教育法に基づく履修証明書が交付されるほか、日本スポーツ協会(JSPO)公認のスポーツコーチングリーダー資格が取得できる。
 JSPOは、国の第3期スポーツ基本計画(2022~26年度)に基づいて、監督・コーチが各競技団体主催の大会に参加する際、JSPO公認資格所持の義務づけを予定している。
★科目は学習指導要領、事故対応など幅広い 科目は部活動の管理運営、学習指導要領から事故対応、メンタルヘルス、保護者対応、女子生徒への配慮、コーチング、ゲームパフォーマンス分析、スポーツ倫理、スポーツマーケティングなど多岐にわたる。
 講師陣の質が高く、土屋教授は日本スポーツ心理学会理事長で長年、日本オリンピック委員会(JOC)科学サポート部門員と日本代表選手のメンタルサポートに携わる。「実践Ⅱ」の小林准教授はNHKなどに多数出演して体力テストのコツや上達法を分かりやすく解説。「実践Ⅲ」の池上客員教授は元Jリーグ京都サンガ普及育成部長で、長年、子どものサッカー指導にあたった。

「運動部活動の実践Ⅰ」担当の土屋裕睦教授。長年、五輪代表選手らのメンタルサポートを担当する 【大阪体育大学】

★指導歴なし52%、50代以上40% 今回の4期生は、岩手県から熊本県までの25人。年齢は60代2人、50代8人、40代4人、30代5人、20代6人で、職業は会社員7人、公務員2人、教員2人など。12人にスポーツ指導歴があり、13人は経験なしだった。
★受講目的は「指導員を目指して」「再度勉強を」 受講の目的は、指導歴のない人は「将来、部活動指導に関わりたい」(20代・フリー)、「新聞記事を読んで。地域移行受け皿団体の運営に関わりたい」(50代・学校職員)など。指導歴のある人は「知識をアップデートしたい」(40代・理学療法士)、「学生として外部コーチを務めたが、今後も活動を続けたい」(20代・会社員)などだ。

実践Ⅱの小林博隆准教授。NHKなど多数のメディアを通じて体育の授業の楽しさを伝えている 【大阪体育大学】

実践Ⅲの池上客員教授。元Jリーグ京都サンガ普及育成部長で、長年、子どものサッカー指導にあたった 【大阪体育大学】

  <第4期受講者> ※指導歴/受講の目的
フリー(30代・岩手県) なし/今後スポーツ指導を行うため
公務員(50代・山形県) 約30年スポーツ推進委員/原田宗彦学長の講演を聞いて
部活動指導員(60代・東京都) 高校サッカー部顧問/部活動指導員として学びたい
団体職員(60代・東京都) なし/部活動コーディネーターとして専門的な知識を得たい
会社員(20代・東京都) なし/部活動指導のICT活用に活かせるスキルを習得したい
フリー(20代・東京都) なし/将来、部活動指導に関わりたい
学校職員(50代・神奈川県) なし/朝日新聞を読んで。地域移行受け皿団体の運営に関わりたい
会社員(50代・神奈川県) なし/業務で知識が必要
公務員(50代・大阪府) なし/子どもたちのスポーツ指導者になりたい
自営業(50代・大阪府) 武道指導/体育教員を目指したが、他の進路に進んだ。機会があれば運動に携わりたい
教員(50代・大阪府) 少年野球チーム監督/地域貢献
会社員(40代・大阪府) なし/自身のスキルアップのため
フリー(30代・大阪府) なし/教養を得るため
会社員(50代・兵庫県) 15年前に3年間少年野球のコーチ/スポーツ指導を通じ子どもの成長に関わりたい
医療機関勤務(40代・兵庫県) なし/部活動の地域移行を円滑に進めたい
理学療法士(40代・岡山県) 保育園、クラブチームなどで運動指導/知識をアップデートしたい
自営業(30代・岡山県) ラクロス指導/総合型地域スポーツクラブで地域移行の仕事に関わっている
会社員(20代・岡山県) 中学ソフトテニス部/学生として外部コーチを務め、今後も活動したい
学生(20代・高知県) なし/スポーツマネジメントに興味がある
学生(20代・高知県) なし/指導法の知識、技能を学びたい
会社員(40代・長崎県) 中学軟式野球/子ども達に正しい情報を提供したい
教員(30代・長崎県) ソフトテニス部顧問/地域クラブで指導するため
社会人(30代・長崎県) なし/部活動指導員の研修として
会社員(20代・長崎県) 女子ソフトテニス部/外部コーチとして携わるため
施設勤務(50代・熊本県) 小学校でバドミントン、水泳など/ボランティアとして指導をしているため
★講義で得た学びを指導に活かしたい 大阪府の自営業、弾智成さん(59)は「今まで人生でスポーツに携わってきたが、今回受講して、違う学びに気づいた」と語る。スポーツが好きで、学生時代は体育科教員に憧れたが、会社員としてビジネスの道に進んだ。機会があればスポーツ指導に関わりたかったという。現在は大阪府内の合気道団体で大人から子どもまで指導をしており、さらに学びを深めたいと受講した。「受講して、池上正先生のお話などは目からうろこが落ちる思いだった。子どもたちへの指導に活かしたい」と話した。

中学生を指導する弾智成さん 【大阪体育大学】

★岐路に立つ運動部活動 中学校などでの運動部活動は今、大きな岐路を迎えている。
 文部科学省は体罰・ハラスメントの根絶や学校の働き方改革を目的に、公立中学校での週末の部活動を地域に移行する方針だ。このため、自治体などでは、指導の資質や能力を備えたスポーツ指導者の確保が急務になっているが、各自治体で対応は様々。神戸市は2026年8月までにすべての市立中学校での部活動の廃止と地域移行を発表した。逆に熊本市は地域移行をせずに中学校での部活を継続し、2027年度から教員や大学生、インストラクターらから指導者を希望制で確保し、顧問・副顧問として学校に配置する方針だ。

★全国に先駆けた運動部活動改革プロジェクト 開学以来、多数の保健体育科教諭を養成してきた大阪体育大学では、2019、20年度にスポーツ庁から「運動部活動改革プラン」事業を2年連続で受託。自学の学生を部活動の指導者に育てるプログラム「グッドコーチ養成セミナー」の開発や、学校・教育委員会に学生を紹介する仕組みを構築してきた。これまでに延べ150人、2024年度は57人が中学校などで指導にあたる。「運動部活動指導認定プログラム」は地域移行の方針を受け、「グッドコーチ養成セミナー」のカリキュラムをベースに社会人向けプログラムとして開発された。
★自治体の活用が目立つ このプログラムは、新たにスポーツ指導を志す社会人、さらなるスキルアップや「学び直し」を目指すスポーツ指導者ら個人のほか、過疎化が進む中でスポーツ指導の人材確保が急務になっている自治体の利用が目立つ。今回の秋開講では、長崎県東彼杵(ひがしそのぎ)町から4人が受講。本学とスポーツ振興・地域活性化などで包括連携協定を結ぶ高知県から春開講の6人に続き、秋も大学生2人が参加した。昨年度の秋開講では長崎県長与町から14人が受講した。他にも部活動指導の人材確保を目指し、このプログラムの活用を予定している自治体がいくつかある。
 プログラムの詳細や2025年度春開講以降の受講は、下記の通り。
【広報室】

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