オリパラ2冠スイマー大橋悠依と木村敬一がジュニアへメッセージ。滋賀の同郷トークも炸裂!

チーム・協会

【photo by Hiroyuki Nakamura】

パリパラリンピック2冠を達成した木村敬一選手と、東京オリンピックで2冠に輝き、パリオリンピック後の2024年10月に現役を退いた大橋悠依さんによる豪華な“2冠スイマー対談”。後編はふたりの出身地である滋賀県の魅力やプライベートの過ごし方、ジュニア世代へのアドバイスなど幅広く語ってもらった。

木村 敬一(きむら・けいいち)
パリパラリンピックの水泳で2冠。東京ガス所属。滋賀県栗東市出身。おすすめの滋賀スイーツは、クラブハリエの「バームクーヘン」

大橋 悠依(おおはし・ゆい)
東京オリンピックの競泳で2冠。イトマンスイミングスクール特別コーチ。滋賀県彦根市出身。好評だった滋賀土産は、お鍋の素としても使える「とりやさいみそ」

滋賀県トークが炸裂!

――おふたりの出身である滋賀県について教えてください。木村選手の出身である栗東市と大橋さんの出身地である彦根市はどれくらいの距離ですか。

大橋悠依(以下、大橋):普通電車だと、30分ちょっとくらいかな。

木村敬一(以下、木村):そんなに遠くないですが、彦根の方が多分、雪は多いと思います。

県内の表彰式などで顔を合わせたこともあるふたり。地元トークに花が咲く 【photo by Hiroyuki Nakamura】

大橋:そうですね。県の北側の方が雪降りますね。

木村:栗東市は彦根よりちょっと南なので降らない。僕の小学校(滋賀県立盲学校)は彦根市内だったので、彦根文化圏も知っていますし、雪は彦根の方が多いなと思っていました。

――滋賀の好きなところを教えてもらえますか。

大橋:近江牛! ひこにゃん! 琵琶湖があって自然が豊富です。

木村:鮎! あと、栗東市には(日本中央競馬会の)栗東トレーニング・センターもあるのでウマ推しです。僕の干支も、午です。

大橋さんは、幼少期に彦根イトマンスイミングスクールで水泳を始めた 【photo by Hiroyuki Nakamura】

――生まれた場所の景色を想像して教えてもらえますか。

木村:実家のあるエリアは昔から住んでいる人たちが多いのでみんな家族、みんな親戚みたいな感じの雰囲気が出ているエリアです。

大橋:彦根市なので、やはり彦根城の下で暮らしているイメージです。幼稚園の頃には、彦根城で写生会をしたり、天守閣に登ったり。彦根シティマラソンという大会があるのですが、それも彦根城の周りを走るルートになっています。

木村:城、いいなぁ。そういえば栗東のトレセンにもプールがあって、馬もプールで鍛えているらしいです。

大橋:それは聞いたことがあります。歩いているんですよね。あと、栗東は新快速の電車が止まらないんですよね。

木村:そうなんですよ。実は僕、最近電車が好きなので詳しくなったのですが、滋賀県北部の米原のほうから兵庫県の姫路まで行っているJRの新快速は素晴らしくて、特急料金のいらない電車で最速らしいんですよ。京都から神戸までは競合他社もいるのでものすごい速さが出ているんですよね。ただ、滋賀県内に入るとまあまあ多くの駅に停まるのに栗東には停まらない。ところで、最近は何をしているの?

大橋:今まで会えなかった友達と会って食事に行ったり、ゆったりと生活をしていますよ。ホテルに泊まって女子会をしてホテルのプールで泳いだり。敬一さんは、忙しいのではないですか?

木村:忙しくはないですけど、全然泳げていません。11月は4、5回しかプールに入っていないかな。

木村敬一選手は、パラリンピック5大会連続出場の金メダリストだ 【photo by Hiroyuki Nakamura】

――ここからは、子どもたちに向けてのアドバイスを聞かせてください。ジュニア時代にこれをやっておいたほうがいいと思うことを教えてもらえますか。

木村:多分ですけど、いろんな運動をしておいた方がいいのだろうと思っています。僕は結局水泳だけでしたが、もっと走ったり、球技をやったりして、スポーツにはいろいろなものがあって楽しいなという中で、その結果、水泳が残っていくのがすごくいいなと思っています。選択肢をいっぱい持っていてほしいですね。

大橋:私もいろいろなスポーツをやってほしいなと思います。水泳でも水中の練習をやる前に陸で運動をするのですが、海外だとバスケットボールをやってから水中練習というようなこともあって、そういうの見ると楽しみ方が多いなと思いますね。それと、個人的に小さい頃にやっていてよかったなと思うのは縄跳びです。あとは、ある程度は勉強する力を身につけている方がいいと思います。長く競技を続けるうえでは練習をがんばるだけじゃどうにもならなくなってくるので、保健体育の分野や栄養学、あるいは、そもそもそういうものを学ぶための基礎を身につけること。勉強する力や興味を持つことは大事かなと思います。

オリンピック2冠の大橋さんは、出身県が同じなど様々な共通点がある木村選手と親交があるという 【photo by Hiroyuki Nakamura】

――木村選手はリオパラリンピックの後、アメリカに単身で渡って武者修行しましたよね。

木村:リオのパラリンピックが思ったような結果じゃなかったので、そのときは同じ環境で練習するのはもう無理だなと思ったんです。その前は、当時はまだナショナルトレーニングセンターが使えなかったので(編集注:当時、パラアスリートは施設利用の対象ではなかった)、日本大学や立教大学のプールを借りて泳いでいて、自分としては結構がんばったつもりだったけど、がんばっても優勝できなかったので、アメリカに挑戦したというよりは『違うところに行こう』と思って逃亡しました。

大橋:アメリカに行かれてたのは敬一さんからいただいた著書を読んで知りましたが、その勇気は私には持てないですね。ひとりで行くって、どういうこと? と思いました。すごいことだと思います。

テレビなどのメディアに多数出演している木村選手 【photo by Hiroyuki Nakamura】

――アメリカでの経験も踏まえて、ジュニアへの食生活のアドバイスを聞かせてもらえますか。

木村:大橋さんが言ってくれたように、僕も基礎的な知識がないと長く選手を続けていくうえでは難しいと思います。実際にアメリカに行っているときは本当に厳しい食生活の中で生きていましたが、リオまでに栄養士の先生についてもらって勉強した知識が活きたと思います。持久力をつけるんだったら炭水化物を食べないといけないとか、筋力をつけるのならたんぱく質を摂らないといけないとか、何を食べたらこれくらいのたんぱく質を摂れるとか、そういう基礎的なことを勉強しておくのは大事です。

――食事量のアドバイスはありますか。

木村:やっぱり食べることができないと勝てないと思うんですよ。僕は無理をして体重を増やした時期があったのですが、子どものときにどれだけ食べているかで大人になってから食べられる量が変わると思うので、子どもの頃にたくさん食べて一生懸命動けるというのがなんだかんだ大事かなと思います。

現在は、イトマンスイミングスクール特別コーチとして活動する大橋さん 【photo by Hiroyuki Nakamura】

大橋:たしかにそうですね。食べないと元気出ないですもんね。私は引退してから、朝ごはんの重要さをすごく感じています。一時、朝昼兼用になっていた時期があったのですが、よくないと感じました。水泳の練習は朝が早いことも多いので、朝ごはんを抜いたりゼリーで済ませたりする人がいると思うのですが、なるべく食べた方がいいですよと伝えたいです。あとは、私は貧血になったことがあります。アスリートは、隠れ貧血のようになっているケースが多いので、気をつかってほしいと思います。

金メダリストを育てた“言葉”

――子どもの頃に心に響いた言葉はありますか。

木村:子どもの頃に言われてハッとしたのは、『この◎月◎日というのは一生来ないよ』と言われたときです。

大橋:たしかに、大人になっていくとよりそれを感じますよね。私は中学生のときに先生がつくってくれた学級通信の題名である『イシミチ』という言葉が心に残っています。意志のあるところに道は開けるという言葉の略なのですが、それがすごく気に入っています。東洋大学に入ってから平井伯昌先生にも、最後の最後は自分がそれをやりたいのかというところにかかってるんだと言われました。道は自分の意思が決めていくのだろうなと思っています。

――大橋さんは2024年10月に引退した後、長年の所属チームであったイトマンスイミングスクールで特別コーチに就任しています。どのようなアプローチで指導していきたいですか。

大橋:指導者としての本格始動はこれからなのですが、トップから子どもたち、あるいは趣味で水泳をやっている方々まで、幅広い人々に接する機会があると思います。水泳ニッポンと言われるように、日本の水泳がまた強くなっていくことももちろん願っていますが、それ以上に、水泳を始める人や続けてくれる人を増やしたいというのが私の思いです。

オリンピック初出場の東京大会で日本女子史上初の2冠を達成した大橋さんとパリパラリンピックの50m自由形・100mバタフライ(S11)で2冠を達成した木村選手 【photo by Hiroyuki Nakamura】

――木村選手の今後のプランを教えてください。

木村:(2028年のロサンゼルスパラリンピックまで)4年あるので、今後については時間をかけて決めたいですが、その中でも面白いことをしたいなという思いがあります。パリに向けてのフォームを変えるという取り組みも面白かったですし、それをやったことで水泳の中でまだ知らないことがたくさんあるとわかったので、やってみることを増やしたいなと思います。

ライター 矢内由美子
北海道生まれ。サッカーワールドカップなどを精力的に取材し、『Number』などに寄稿。2024年のパリ大会は、オリンピックとパラリンピックの両方を取材。

edited by TEAM A
photo by Hiroyuki Nakamura

※本記事はパラサポWEBに2025年1月に掲載されたものです。
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著者プロフィール

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