モイネロ&有原航平がタイトル獲得 救援陣は新戦力が台頭【福岡ソフトバンクホークス2024:投手編】

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福岡ソフトバンクホークス・有原航平投手(左)モイネロ投手(右) 【写真:球団提供】

 2位と大差をつけて4年ぶり20度目のリーグ優勝を果たした福岡ソフトバンク。今季から指揮を執った小久保裕紀監督のもと、7月30日には早くも優勝マジックが点灯するなど、圧倒的な強さを見せつけた今季の戦いぶりを、投手編と野手編に分けてお伝えする。

先発転向のモイネロは最優秀防御率のタイトル獲得

 今季から先発に転向したモイネロ投手は大車輪の活躍を見せた。3月30日のオリックス戦で初先発のマウンドに上がると、敗戦投手になったものの、8回3安打2失点の力投を披露。その後も安定した投球を続け、6月には、4試合に先発して3勝0敗、防御率0.67の好成績で大樹生命月間MVP賞に輝く。8月12日には9回2安打1失点で来日初の完投勝利を挙げるなど、8月度も同賞を受賞し、1年を通じてローテーションを守り切った。最終的には25試合に登板し、11勝5敗、防御率1.88をマーク。最優秀防御率のタイトルを獲得し、三井ゴールデン・グラブ賞も初受賞した。

開幕投手・有原航平は5年ぶりに最多勝に輝く

 開幕投手を務めた有原航平投手も充実したシーズンを送った。3月29日の開幕戦は、7回途中1失点で今季初勝利を挙げると、8月16日の千葉ロッテ戦では、今シーズン2度目の完封勝利を挙げる。夏場以降も調子を落とすことなく、先発の柱としてリーグ優勝に大きく貢献。結果的に14勝7敗、防御率2.36をマークし、北海道日本ハム・伊藤大海投手とともに最多勝のタイトルを獲得している。

大津亮介、C.スチュワート・ジュニア、大関友久は苦しむ時期がありながらも先発として躍動

 昨季はリリーフとして46試合に登板した大津亮介投手は、今季から本格的に先発転向した。4月は3試合に登板し、3勝0敗、防御率0.90の好成績をマーク。シーズン序盤のチームをけん引する活躍を見せた。しかし、コンスタントに先発登板しながらも、夏場以降は勝ち星に恵まれず。それでも、ファームで調整を経て、自身のシーズン最終登板となった10月4日では、6回1安打無失点の快投で約3カ月ぶりの白星を手にした。
 今季キャリアハイの成績を残したのは、6年目のシーズンとなったC.スチュワート・ジュニア投手。制球力の目安となるK/BBは前年の1.60から2.06とし、今季はデータ上でもストライクゾーンで勝負する投球をしていたことがうかがえる。シーズン序盤は白星に恵まれなかったものの、5月11日のオリックス戦で6回1失点の粘投で今季初勝利。その後も順調に登板を重ね、規定投球回未達ながらも、キャリアハイの9勝4敗、防御率1.95をマークした。
 大関友久投手も自己最多となる8勝を挙げた。大関投手は、歴代の左腕エースがつけてきた背番号「47」を今季から背負う。6月下旬までは、無傷の自身5連勝を記録するなど、先発投手としての役割を大きく果たし、今季は20試合に先発。シーズン終盤はケガで離脱も、日本シリーズで復帰を果たしている。来季は自身初の2桁勝利を目指したいところ。

ともにシーズン終盤にケガで離脱も、松本裕樹&藤井皓哉がブルペンを支える

 シーズン序盤、抑えを務めていたオスナ投手がケガにより離脱。その穴を埋めたのは、松本裕樹投手だった。開幕当初はセットアッパーとして腕を振り、4月は11試合で10ホールド、防御率0.82をマーク。6月4日の中日戦では、ベンチから外れたオスナ投手に代わって9回のマウンドに上がり、プロ初セーブを記録する。以降はクローザーとして登板を重ね、シーズン終盤に右肩痛で離脱も、計14セーブを挙げた。
 セットアッパーとしてホールドを重ねたのは藤井皓哉投手。9月に腰痛のため出場登録を抹消され、そのままシーズンを終えたが、それでも40試合に登板。鋭く落ちる変化球を武器に、2勝1敗、防御率1.80、19ホールドと安定感抜群の投球でブルペンを支えた。来季はシーズンを通して投げる姿に期待したいところ。

ヘルナンデス&長谷川威展の両左腕が存在感

 リリーフ左腕として躍動したのは、ヘルナンデス投手。昨季までリリーフとしてブルペンを支えていたモイネロ投手が先発転向し、抜けた穴をヘルナンデス投手が埋めた。最終的に48試合に登板し、3勝3敗、3セーブ、21ホールド、防御率2.25をマーク。さらには、奪三振能力の高さも光り、奪三振率13.50と好成績を記録した。
 現役ドラフトで北海道日本ハムから加入した長谷川威展投手も躍動。32試合に登板し、4勝0敗、6ホールド、防御率2.49でキャリアハイのシーズンを過ごした。4月29日の埼玉西武戦では、2点ビハインドの9回を3者凡退に抑えると、直後に味方が逆転。勝利を呼び込む投球で、プロ初白星が舞い込んだ。開幕から登板10試合連続無失点と存在感を示すなど、今季はリリーバーとしてのポジションを確固たるものにした。

シーズン終盤のブルペンを支えた杉山一樹、尾形崇斗 津森宥紀は役割を全う

 杉山一樹投手は自己最多の50試合に登板。4勝0敗、防御率1.61とキャリアハイの成績を残した。昨季までは制球に苦しむ場面も見られたが、今季は改善。キレの良いフォークを武器に、ブルペンに必要不可欠な存在へと成長した。8月は10試合に登板し、自責点「0」を記録すると、シーズン終盤も調子を落とすことなく、6年目のシーズンを終えた。
 終盤に奮闘した尾形崇斗投手は、12試合に登板して2勝0敗、防御率2.31をマーク。7月に今季初昇格を果たすと、特に9月以降は安定した投球を披露。日本シリーズでも4試合に登板するなど、大舞台も経験した。来季はシーズン序盤から勝ちパターンの一角を担いたい。
 津森宥紀投手は3年連続50試合登板こそ果たせなかったものの、48試合に登板し、5勝2敗17ホールド、防御率2.13と安定した成績をマーク。9月はファームでの調整も経験したが、今季もブルペンに必要な存在として、自らの役割を全うした。来季の活躍にも期待がかかる。

2年目・前田純は初勝利 ルーキーも続々と一軍デビューを果たす

 2022年育成ドラフト10位で入団した2年目左腕・前田純投手は、7月に支配下契約を勝ち取る。9月29日の北海道日本ハム戦で初登板初先発を果たすと、6回3安打5奪三振無失点の好投でプロ初勝利を挙げた。また、ウエスタン・リーグでの最多勝も獲得。日本シリーズでも2試合に登板するなど、飛躍の1年となった。
 ドラフト2位・岩井俊介投手は開幕一軍入り。4月4日の千葉ロッテ戦でプロ初登板を果たすと、最終回を3者凡退に抑え、デビュー戦を終える。9月22日の東北楽天戦では、2死2塁のピンチをわずか5球で切り抜け、初勝利をマークした。

 ドラフト5位の澤柳亮太郎投手は、岩井投手と同じく4月4日がデビュー戦となった。8月1日の東北楽天戦では、4点リードの4回裏、2死満塁のピンチでマウンドに上がる。落ち着いた投球で無失点に抑えると、続く5回裏も「0」で切り抜け、初白星を手にした。9月に受けた右肘関節内側側副靱帯再建術の影響もあって、来季は育成契約となったが、リハビリを経て、さらにレベルアップした姿を見せたいところ。
 ドラフト6位で入団した大山凌投手は、6月に一軍初昇格を果たすと、中継ぎとして4試合に登板して防御率0.00をマーク。7月17日の千葉ロッテ戦では初先発のマウンドへ。3回3失点で敗戦投手となったが、8月15日には中継ぎとして2回4奪三振無失点と圧巻の投球を披露し、プロ初勝利を挙げた。
 高卒ドラ1ルーキーの前田悠伍投手は、ファームで経験を積み、10月1日のオリックス戦で初登板初先発。3回6失点とプロの洗礼を浴びる形となったが、1年目のこの経験を飛躍の足がかりにしたい。

和田毅が現役引退 来季投手最年長となる東浜巨、又吉克樹は奮起なるか

 投手陣の精神的支柱でもあった和田毅投手が、シーズン終了後に引退を表明した。今季は8試合に登板し、2勝2敗、防御率3.76の成績。シーズン終盤は、リリーフとして腕を振り、43歳にしてプロ初ホールドもマーク。チームの垣根を越え、多くの選手から惜しまれながら22年間の現役生活に幕を閉じた。
 プロ12年目の東浜巨投手は、開幕ローテーション入りも、夏場にファームへ降格。11試合の登板にとどまり、3勝2敗、防御率3.38だった。また、今季NPB通算500試合登板を果たした又吉克樹投手は、40試合に登板も防御率3.54の成績。ポストシーズンは登板なしに終わっている。和田投手が引退したことで来季は投手最年長となる両投手。来季は結果で投手陣を引っ張る姿に期待したい。

 来季は、リーグ連覇に向けて、投手力をさらに上げていけるか。

文・谷島弘紀
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