【大宮アルディージャ】[聞きたい放題] 【聞きたい放題】阿部来誠×植田悠太 プロ2年目・同学年対談

大宮アルディージャ
チーム・協会
選手やスタッフにピッチ内外に関わらず様々な質問をしていく本コーナー。今回は、ともに2004年生まれで、高校時代に対戦経験もある阿部来誠選手と植田悠太選手が登場。アカデミー時代やプロ2年目を迎えた今シーズンについて、話を聞きました。

【©︎1998 N.O.ARDIJA】

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聞き手=平野貴也
とにかく暑かったクラブユース選手権

──今回は、二人にここまでの手応えや課題をお聞きしたいと思うのですが、その前に、アカデミー時代の対戦を振り返ってもらえますか。二人の世代は、高校1年生から3年生まで、毎年この時期に行われている日本クラブユースサッカー選手権で対戦していますよね。
阿部「組み合わせが決まると、また京都かと思っていました。3年生のときはケガをしていて撮影係で、1年生のときはベンチには入っていたのですが試合には出ていなくて、実際にプレーしたのは2年生のときですね。俺、クロスで先制点をアシストしました」

植田「俺は2年生のときは途中出場のはずです。足首のケガでずっと試合に出ていなくて、急に出場しました。あの試合って、引分けだよね?(1△1) たしか、同じ組の金沢が(スタッフのコロナ感染により)辞退して(金沢戦の結果が無効になったため)大宮は勝たないといけなくて、俺たちは負けても大丈夫だったんじゃないかな。大宮からしたら最後に追いつかれて、いらんことすんなっていう試合やね(笑)。3年生のときも、オーバートレーニング症候群から復帰したばかりだったし、あの大会は、力を出し切れなかった印象が強いな。大宮とは3年連続で対戦したけど、1回も勝ってない。1年生のときは、PK戦で負けた。でも、俺が外した後に、貫が外してくれたのは覚えてる! 今年、大宮に来て最初に会ったときに貫にその話をしました」

──2、3年生のときの対戦は、気温30度以上の戦いでした。
植田「俺たちの世代は、日中が暑いから朝早くから試合が行われるようになって、8時45分のキックオフ。群馬に泊まっているのに、ホテルの出発が6時半とかでしたよ。起床してすぐに朝食を食べて、暑いのにコロナ対策でマスクしたままバスに乗り込んで……。試合が終わったら、ホテルに戻って用意してもらったアイスバスに入って、2年のときは、回復を早める超音波治療もやってもらった。暑さと連戦の辛さしかない」

阿部「朝、早かったね。あれはダメ。結局、めちゃくちゃ暑いんだから(笑)」

──大会は、今年から分散開催に変わってナイターになります。二人の後輩である大宮U18も京都U-18も全国大会に出場します。
植田「ナイターのほうが絶対に良いですよ。京都U-18の試合結果は、今も気にしています。大宮U18は(トップチーム2種登録の斉藤)秀輝、おるよな?」

阿部「いるね。秀輝以外で特に注目してもらいたい選手は、中盤の菊浪(涼生)かな(笑)。足元の技術があるし仲が良いから。後輩たちには、自分たちを超える成績を出してもらいたいですね」

──二人は、1年生の初対戦のころから面識がありましたか? お互いの印象は?
植田「U-16日本代表候補に一緒に呼ばれたことがあったので、知ってはいたと思います。中盤でターンをするのがめっちゃうまい選手という印象でしたね。でも、一緒に試合に出たことはないかも。大宮U18だと、小澤晴樹(明治大)が左のCBで、俺が左SBでプレーしていたり、(山崎)倫がいた一つ上の代表に一緒に入ったこともありました」

阿部「代表の合宿だと、悠太は代表の常連組で集まっていることが多くて、俺たちはそうじゃない選手たちで集まっていたから、あまり話をした記憶はないですね。プレーの印象は、馬力があるというか、推進力があるなっていう感じでした」

【©︎1998 N.O.ARDIJA】

“限界突破”で痛みを克服

──では、アカデミー時代の話はこのあたりにして、最近の話に進みましょう。今日の練習後は、互いに精力的に自主練習を行っていましたね。阿部選手はミドルシュートを多く打っていました。最近は、どの点を特に強化していますか。
阿部「キックは自分の強みだと思っているので、そこを伸ばすことは続けていこうと思ってやっています。ほかに、最近は徹さん(長澤徹監督)に教えてもらって、基礎練習の合間に『座って、立って』という動作を挟み込んで、負荷をかけながら技術を追求する練習をしています。ケガから復帰した後、自分では意識していませんでしたが、球際などで怖さが出てしまっていると指摘されてやるようになりました。(止まってプレーするのではなく)転んだあとにすぐ立ち上がってプレーをするとか、球際に寄せていくときに一歩踏み込んでいけるとか、少し(動きながらのプレーが)良くなっている実感があるので、続けてやっています」

──植田選手は、一人で残って自主練習をすることが多いと聞いています。
植田「元々自主練習をやるタイプではなかったんですが、昨年、プロになってから、徹さんの影響で始めました。京都U-18の3学年上に山田楓喜(東京V)という先輩がいて、トップ昇格してから2年間、試合に出られずにいました。2年目の2021年は、徹さんが京都のトップチームにコーチとして来たシーズンで、一人だけ徹さんと1対1でシュート練習をしていて、次の年から試合に出て活躍するのを見ていました。僕もトップに昇格した昨年は、自信がなくて思い切ってプレーができずに苦しかったのですが、徹さんから『自分がやったことしか自信にならないから、やってみろ』という感じで言われました。それで、試合でクロスを上げる場面で『あれだけ練習したから大丈夫』と思えるように信じてやっていたら、少しずつ変化も感じるようになってきたので続けています。最初は、やりすぎて左足の内転筋が肉離れを起こしそうになったりもしたのですが、限界突破して強靭な内転筋を手に入れたので痛くならなくなりました」

阿部「何、その話(笑)。限界突破?」

植田「山田選手も同じで、限界を突破してから痛くならなくなったらしいです。最初に痛くなったときに徹さんに言ったら『まだ体ができていない』と言われて、信じてやり続けたら、痛くならなくなりました。それをまた徹さんに言ったら『やっとプロ仕様の体になったな』と言われました。だから(体を追い込むことでは自信がついたので)今は気持ちで満足できるまで練習すればいいかなと思ってやっています。右足はまだ限界突破していないので、蹴ったら肉離れするかもしれませんけど(笑)」

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それぞれの手応えと課題

──今季、ここまでのプレーについては、どのように感じていますか?
阿部「彩の国カップで大学生と対戦したときは、全然足りていないなと感じました。ボールを受けるところはできていましたけど、球際の強さなどはまだまだ。それに比べると、天皇杯2回戦の京都戦は、少しは存在感を示せたかなと感じました。徹さんやコーチ陣にも、継続することが大事と言われているので、信じて練習をやり続けて、成長はできているのかなと思います。でも、まだリーグ戦で出場がないので、試合に関われるようにやっていきたいです。自分のストロングポイントと、チームの中で求められるプレーをしっかりと出して、結果にこだわって……えーっと……」

植田「何なん? その自信ない感じ。ハキハキ喋って(笑)」

阿部「日本語、難しい! 練習試合などでは、以前よりシュートを狙うように意識していますし、あとは、守備でボールを奪い切るところを意識してやっています」

──植田選手は?
植田「最初のほうは試合に出させてもらっていましたけど、徹さんからずっと言われているのは『チームを勝たせろ』ということ。極端に言えば、得点とアシストをしても負けてしまったら意味がないという話。その点で言うと、試合に出ていたときも、自分がチームの勝利に貢献できた感覚はなかったです。徹さんには(試合のときは)『勝負に勝つことだけ考えろ』と言われて、本当にそれしか考えていないので、あまり、どのプレーが通用するとかしないとか、そういうことは気にならないです。守備より攻撃が得意なので、敵陣に押し込んでプレーするほうが自信を持ってできているかなとは思いますけど。最近は、試合に出れていませんが、途中出場の時間を少しでも伸ばしていきたいです」

──ビルドアップで高い位置に上がって、内側に入って受けるプレーなども多いですがやっていてどうですか?
植田「サイドで(中盤の選手と)重なって、パスの出し手が困るといけないので、中央に入ってパスコースを増やすというプレーは、京都のときからやっていました。でも、後ろでボールを持って、出すところがなくなって困ったときに、内側でパスを受けるのは、嫌。やめてほしいです(笑)」

阿部「最初から中央にいれば、前に出す選択肢も持っているから少し違うけど、外から中に入って来た選手に、そういうパスが出てきてしまうと厳しいよね」

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ベテラン選手の存在感

──チームは好調ですが、雰囲気はどのように感じていますか?
植田「雰囲気は、いいなと感じています。キャプテンのトシくん(石川俊輝)が『(試合に出ている選手だけでなく)チーム全員で』という雰囲気を作ってくれています。5月か6月だったと思いますけど『シーズンが始まったころに比べると、練習で飲水休憩のあと、次のメニューに移るときにダラダラと歩いてしまっている場面が出てきている。前は、なかった。意識してやっていこう』と引き締めてくれて、チーム全員でテキパキ行動していこうという雰囲気になっています。一つにまとまって、目標に向かって行く感じがあります」

阿部「トシくんだけじゃなくて(濱田)水輝くんとかトミくん(富山貴光)とかが、全体に発信してくれているので、すごく、まとまりを感じます。自分の守備で球際が少し甘かった場面などは、自分でも課題を感じますが、水輝くんとかがしっかり指摘してくれるので、さらに意識できるようになっている部分があると思います」

植田「水輝くんは、練習に対する姿勢がすごい。常に100%。パス&コントロールみたいな基礎的な練習でも声を出してやってくれる。最初からギアが入っている感じでトレーニングをしています。試合でメンバー外になった選手だけの練習でも、最後の試合形式のメニューのときに、水輝くんがいると声でみんなが体を動かされて、強度が上がると感じます」

──植田選手は、加入当初より表情が明るくなった印象があるのですが?
植田「昨年が結構苦しかったので(笑)。カップ戦でいいプレーをできてもなかなかリーグ戦に絡めなくて、ただボールを蹴っているだけというか、何のためにサッカーをやっているんやろうという気持ちになってしまうこともありました。一時期は、早く練習から帰ったり友人と遊んでリフレッシュするみたいな時間の使い方をしていましたけど、それも楽しくない。試合に出れていなくても練習に意味があると思わせてくれた徹さんがいなかったら気持ちがヤバかったと思いますけど、(居残り練習などで、自分でやりがいを作って)少しずつ変えることができました」

──高卒の選手がぶつかる壁ですね。個人の育成を重視してくれるアカデミー時代は、期待値込みで飛び級の起用も当たり前で試合に出続けられた。でも、チームの結果が最優先されるプロの世界に入ると「やれていない」感触はないけど、試合に出られなくなり、頑張り方を見失うというケースは多いです。阿部選手も似たような気持ちになった時期があるのでは?
阿部「自分も、去年はベンチには入っているけど試合には出られなかったし、楽しいという感じではなかったです。今年のほうが楽しいし、1日が濃いような気がします。昨年は、試合に出たいという気持ちばかりで、日にちだけが経っていく感じがしました。でも、今年と比べると、昨年はボールを奪いに行くプレーなどは行き切れていなかったし、足りていなかったと思います。守備のところは、昨年とは一番違うかなと今は感じています」

──試合に出られない辛さを知ると、ベテラン選手の姿勢のすごみを感じるのでは?
植田「水輝くんとか、マジでそうだと思います。ずっと(サッカーに向き合う)軸がぶれない感じがすごい。だから、ベテランになっても、プレーを続けられているんだろうなと思います。自分が同じ立場で、同じことができるのかというと、分からない」

──二人とも、プロに入ってからの難しさを感じて、乗り越えて、今、自分なりの充実感を得ながら試合に出る機会をうかがっているようなので、これからが楽しみです。最後に、チームはJ3優勝でのJ2復帰に向けて走り続けるわけですが、その中でシーズンの後半戦、どのように臨んでいきたいか、気持ちを聞かせてください。
植田「具体的にどんな形なのかは自分でも分からないですけど、とにかく試合に出て『チームを勝たせられる』ようにがんばります」

阿部「いつチャンスが来るか分からないですけど、チャンスが来たときにしっかりと結果を残せるように、練習から意識して準備し続けたいと思います」

【©︎1998 N.O.ARDIJA】

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平野 貴也(ひらの たかや)
大学卒業後、スポーツナビで編集者として勤務した後、2008年よりフリーで活動。育成年代のサッカーを中心に、さまざまな競技の取材を精力的に行う。大宮アルディージャのオフィシャルライターは、2009年より務めている。
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著者プロフィール

1999年にJリーグへ参加。アルディージャは「リス」を意味するスペイン語。リスは大宮市(現さいたま市)のマスコット的存在で、地域に密着し、愛される存在となることを願ってつけられた。さいたま市西区にクラブハウス「オレンジキューブ」・アルディージャ練習場があり、ホームスタジアムであるNACK5スタジアム大宮は、日本最古のサッカー専用スタジアム。クラブマスコットはアルディとミーヤ。

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