【大宮アルディージャ】[聞きたい放題] 藤井一志×若林学歩×内藤秀明の「欧州サッカー鼎談」

大宮アルディージャ
チーム・協会
選手やスタッフにピッチ内外に関わらず様々な質問をしていく本コーナー。今回は、イングランド・プレミアリーグの記事を中心に執筆するサッカーライター・内藤秀明さんを招き、欧州サッカーファンの藤井一志選手と若林学歩選手を含めた3人で、欧州サッカーの面白さや、開幕を直前に控えたEURO2024の見どころなどを語りつくしました。

【©︎1998 N.O.ARDIJA】


それぞれのファンになったきかっけ

内藤「お二人はどのクラブが好きなんですか?」

藤井「僕はイングランド・プレミアリーグのチェルシーが好きです。もともと、エデン・アザール(元ベルギー代表)が好きで、彼が所属していたチェルシーのファンになりました。今でもチェルシーの試合は毎試合フルで見ています。チェルシー以外のプレミアリーグの試合も普段からよく見ていて、ときには下位同士のマイナーなカードも……」

若林「(ノッティンガム・)フォレストとか?」

藤井「そうそう(笑)」

内藤「そこで一言目にフォレストの名前が出てくるあたり、若林選手も相当詳しいですね(笑)」

若林「フォレストの試合を見ている人は相当コアですよ」

内藤「藤井選手的に、今季のチェルシーはどうでしたか?大変なシーズンでしたが……」

藤井「最後は5連勝で終えましたけど、去年(12位)に続いて今年も厳しい結果でした(6位)。マウリシオ・ポチェッティーノ監督は今季限りで退任しましたが、レスターからやってきた新監督のエンツォ・マレスカに期待するしかないですね」

内藤「マレスカ新監督はポゼッションサッカーを志向するみたいですね」

藤井「過去、チェルシーが強かったときは堅守速攻のスタイルが多かったので、そこがどうハマるのかは来季楽しみですね」

内藤「若林選手はどのクラブが好きなんですか?」

若林「僕はドイツのブンデスリーガが好きで、その中でもバイエルン・ミュンヘンのファンです。僕がGKを始めたばかりのころ、マヌエル・ノイアー(ドイツ)が全盛期で、彼がきっかけでバイエルンの試合を見るようになりました。2014-15シーズンあたりかな」

内藤「そのころのノイアーは本当に全部のシュートを止めていましたもんね(笑)」

若林「マジですごかったです…」

【©︎1998 N.O.ARDIJA】

ピックフォードの独特なスタイルとは

内藤「プレー動画などを見て、ご自身の参考にすることはありますか?」

若林「1対1になったときの距離の詰め方や止め方、体の構え方は参考にしています。アリソン・ベッカー(リバプール)やエデルソン(マンチェスター・シティ)、アンドレ・オナナ(マンチェスター・ユナイテッド)とかかな」

内藤「全身を使って突っ込んで止めにいくタイプや動かずに体を開いて待つタイプと、GKも選手によっていろいろ違いますよね」

若林「個人的には、1対1はアリソンが一番強いなと思います。全身で止めるというよりは、上半身の動きをうまく使って距離を詰めて止める感じです」

藤井「FW目線で言うと、僕は前に出て距離を詰めてくるタイプのほうが絶対にイヤですね。圧を感じるので…。欧州の選手は上背もあるから、余計にゴールが小さく見えてしまいます」

若林「あとは、最近だとビカーリオ(トッテナム)も好きです」

内藤「いいコースへのシュートも、猫のように腕を伸ばして止めますよね」

若林「スパーズ(トッテナムの愛称)に来るまで全然知らなかったんですけど、めちゃくちゃいいGKですよね。足元の技術も十分ありますし」

内藤「キックの面で参考にしている選手はいますか?」

若林「プレミアのGKはみんなレベル高いですけど、僕はジョーダン・ピックフォード(エバートン)のキックは結構真似しますね」

内藤「あのかっ飛ばす感じですか?」

若林「はい、僕もどちらかというとそっちのタイプなんで(笑)。あと、ピックフォードは構え方が独特で、普通のGKはこうやって少し脇を開いて手を正面に持ってくるんですけど…」

若林「彼はこうやって胸を張って手を外側に向けるんですよ。あの状態から止められるのはすごいと思いますね」

内藤「言われてみればたしかに……。胸を張っていると威圧感もありますもんね」

若林「いろいろな意味で独特ですよね。GKなのにソックスをけっこう下に下げていますし」

内藤「たしかに、GKであれやる人あまり見たことない(笑)」

藤井「おれ、あれしてるよ(笑)」

若林「してるね(笑)」

藤井「あと、ピックフォードはボールをキャッチしたあとにわざと倒れこんで時間を使ったりするところもあるので、相手にしたら絶対イヤだろうなと思います」

【©︎1998 N.O.ARDIJA】

アルバレスになりたい

内藤「藤井選手は参考にしているプレーヤーはいますか?」

藤井「今だと、フリアン・アルバレス(マンチェスター・シティ)ですね。なんでもできますし、一番気が利く選手だなと思います」

内藤「たしかに、プレースタイル近いかも……。アルバレスって、なんでもできるがゆえに『何がすごいか』を説明するのが難しいですよね」

藤井「そうなんですよ。ただ、何かの穴が生まれてしまったときに補完してくれますし、チームにいれてくれれば助かる選手だと思います。僕も同じで、ドリブルがめちゃくちゃ得意だったり、めちゃくちゃスピードがあったりするわけではないんですけど、全部の能力はそれなりにあると思っているので、そういう意味でも彼のようになりたいと思っていますね」

【©︎1998 N.O.ARDIJA】

言語化できないレアルの勝負強さ

内藤「6月2日に行われたチャンピオンズリーグ(以下、CL)決勝のドルトムントvsレアル・マドリーはご覧になられましたか?」

藤井「見ました。ドルトムントに攻め込まれながらも前半を0-0で終えたので、『これはレアルが後半に点を決めて勝ちそうだな……』って思っていたら、後半に2点を取ってそのとおりの結果になりました」

若林「(ダニエル・)カルバハルのヘディングシュートすごかった……」

内藤「“理屈ではない”というか…レアルっていつもあの勝ち方しますよね」

藤井「2シーズン前にレアルがCLで優勝したときも、準々決勝でチェルシーとあたったのですが、“終盤力”を発揮されました。チェルシーは第1戦を1-3で落としたんですけど、第2戦で75分までに3点を奪い返したんです。そのままいけば準決勝に進出できましたが、終盤に1点を取られてトータルスコアで追いつかれて、延長にも1点決められて負けました」

内藤「そういうときのメンタルってどんな感じなんでしょう……」

藤井「負けていたり劣勢だったりしても、『まあ、どうせ勝つから』みたいな雰囲気ですよね」

内藤「それでいて、全員がちゃんと全力で守備をするから強い」

若林「自信のところはすごいですよね。あと、今季ケガでほぼ試合に出ていなかったGKのティボー・クルトワが、いきなりCL決勝の大一番に出て止めまくっていたものさすがだなと思いました」

藤井「クルトワすごかったね」


日本と欧州、ルーティーンの比較

内藤「海外の選手とJリーグの選手の違いで言うと、海外には試合前のルーティーンを決めている選手が多いですよね。たとえば、チェルシーにいたジョン・テリー(元イングランド代表)は、ホームスタジアムのトイレで用を足すときは絶対に同じ小便器を使っていたそうで、それが広まってからはほかの選手も同じ便器を使うようになり、試合前に長蛇の列ができていたそうです(笑)」

藤井&若林「それはめちゃくちゃおもしろい(笑)」

内藤「お二人は何かルーティーンありますか?」

藤井「ユニフォームはロッカールームを出るときまで絶対に着ないです。最後にしっかり自分の背番号を見て、『よし』と思ってから着ます。あとは、ピッチに出る前に全身をパンパンとたたいてから出たり」

若林「僕はスパイクとキーパーグローブを必ず左からつけるくらいかな。“ザ・ルーティーン”という感じですが(笑)」

内藤「大宮のほかの選手で何か面白いルーティーンをやっている人はいますか?」

若林「GKあるあるですけど、笠くん(笠原昂史)は円陣を組んだあとに胸をめっちゃたたきますね。あと、クバ(シュヴィルツォク)は試合ギリギリまでイヤホンを外さない(笑)」

藤井「それはルーティーンなのかな(笑)」

【©︎1998 N.O.ARDIJA】

ミーティング映像でまさかの“予習”?

内藤「チームのミーティングでは海外の試合映像を使って説明したりもするんですか?」

藤井「そうですね」

内藤「記憶に残っている映像とかありますか?」

藤井「たまたまXを見ていたときに、アトレティコ・マドリーのカウンターの動画が流れてきて、『これミーティングで出そうだな~』と思ってXのブックマークに保存していたんですよ。そうしたら、そのオフ明けのミーティングで本当に出てきて一人で興奮していました(笑)。『これ見たやつじゃん!』って」

若林「なにその予習みたいな(笑)」

内藤「若林選手は何かありますか?」

若林「海外のチームのセットプレーとかは日本とまた違ったりして、すごく面白いなと思いますね」

内藤「アーセナルのベン・ホワイトのように、欧州クラブのセットプレーだと、GKの近くに立ってイヤがらせをする選手もよくいますよね。あれは実際にやられるとやっぱりイヤですか?」

若林「めちゃくちゃイヤです。僕、1回実際の試合でキーパーグローブのマジックテープをはがされたことあります。それも、審判の見えないところで(笑)」

内藤「それはイヤだな~」

藤井「GKの前に立つこと多いから、今度それやろうかな(笑)」

若林「いや、反則だから(笑)」

内藤「欧州のクラブの中で、『この人の指導を受けてみたい』と思う監督はいますか?」

藤井「自分はずっとプレミアリーグでプレーしたいと思っているので、できればチェルシーがいいですが……。監督で言うと、やっぱりマンチェスター・シティのペップ・グアルディオラですね。彼の下でプレーしてみたいというか、もはや横に立っているだけでもいいです(笑)。何を考えているのか知りたいですし、頭の中をのぞいてみたいです」

若林「僕はブンデスリーガが好きなので、それこそドルトムント時代の(ユルゲン・)クロップ監督とかですかね。試合に勝ったあとにゴール裏のサポーターに向けてガッツポーズするじゃないですか。ああいう熱いところがすごく好きです」


肌で味わった“世界”のすごさ

内藤「遠征などで欧州のクラブと対戦したことはありますか?」

藤井「ヴィッセル神戸伊丹U-15に所属していたとき、カタールで行われたアスパイアカップという国際大会に参加して、エバートンのジュニアユースと試合しました」

内藤「おお~!どうでしたか?」

藤井「みんなめちゃくちゃうまかったです。身体的な部分の差はそれほどなかったですが、立ち位置のうまさとか、ボールを持っているときの相手の外し方とか、頭で考えるところのレベルは高いなと中学生ながらに感じました」

内藤「中学生ということは、アンソニー・ゴードン(現ニューカッスル・ユナイテッド/イングランド代表)とかその試合に出ていたかもしれませんね」

藤井「あんまり覚えてないですけど、もしかしたらいたかも……」

内藤「若林選手はどうですか?」

藤井「2年前にU-19日本代表のスペイン遠征に参加して、U-18スペイン代表、U-19フランス代表、U-19スロバキア代表と試合をしたんですけど……まず、みんな19歳じゃないです(笑)。フランスとか特にすごくて、正直僕はそんなに体格は負けていなかったと思うんですけど、フィールドプレーヤーは全然違いましたね。ゴツいし、デカいし、あとみんなヒゲ生えてる(笑)」

内藤「たしかにそこの違いもありますね(笑)」

若林「そのときちょうどカタールW杯をやっていたので不在だったんですけど、ガビ(バルセロナ)なんかもその世代です。あとはレアルのリザーブチームの選手や、パリ・サンジェルマンのトップチームに所属する選手もいたと思います。みんなすごいレベルの高さでした」

内藤「今はもう、バルセロナのトップチームで16歳の選手が活躍したりする時代ですからね…」

藤井「ラミン・ヤマルはどう見ても16歳の選手ではないですよね(笑)」

若林「エンドリッキ(ブラジル代表/2024年夏のレアル・マドリー加入が内定済み)って17歳でしたっけ?」

藤井「うん、ヤマルの一つ上」

内藤「エンドリッキもすごいですよね……」

若林「太ももの太さが17歳のそれではないですよ」

内藤「何を食べたらあんなことになるんですかね(笑)」

当時の公式記録。藤井選手とゴードンは対戦していた 【©︎1998 N.O.ARDIJA】

“それぞれの”イングランド代表

内藤「最後に、6月14日に開幕するEURO2024の話をしましょう。まだこの取材の時点では日本での放送は決まっていませんが……(汗)。藤井選手はどの国を応援していますか?」

藤井「プレミアリーグが好きなので、もちろんイングランド代表に優勝してほしいですけど、一番応援しているのはチェコですね。僕、幼少期にチェコに住んでいたので」

若林「それ、ほんとなの?(笑)」

藤井「ほんとだよ(笑)」

内藤「いつごろ住んでいたんですか?」

藤井「4歳~7歳の3年間かな。だから、プレミアリーグでプレーしているブラディミール・ツォウファルやトマーシュ・ソーチェク(ともにウェストハム)はもちろん、FWのパトリック・シック(レバークーゼン)も応援しています」

内藤「チェコはソーチェクみたいな大柄で動き回ることができる選手が多いイメージですよね」

藤井「あと、伝統的に“魂”でプレーするイメージが強いです。ドイツの隣に位置していることも関係しているのかな」

内藤「若林選手はいかがですか?」

若林「イングランドもフランスもベルギーも気になるし…決められない(笑)。あ、初出場のジョージアも気になるな。でもやっぱり一番楽しみなのはイングランドかなあ」

内藤「超豪華なメンツですもんね。これはいろいろな人に聞いているんですけど、もし自分がイングランドのガレス・サウスゲート監督なら、どの11人を先発に選びますか?これ、本当に人によって好みがハッキリ出て楽しいんですよ(笑)」

藤井「まずGKはピックフォードだな」

若林「いや、俺はアーロン・ラムズデール(アーセナル)」

内藤「もうすでに分かれちゃった(笑)」

藤井「(選手名鑑を見ながら)CBはハリー・マグワイア(マンチェスター・ユナイテッド)とジョン・ストーンズ(マンチェスター・シティ)、右SBはカイル・ウォーカー(マンチェスター・シティ)が鉄板ですかね。問題は左SBか…。ベン・チルウェル(チェルシー)が選ばれていなくて、ルーク・ショー(マンチェスター・ユナイテッド)もケガ明けとなると…キーラン・トリッピアー(ニューカッスル)になるのかな」
※6月7日に最終メンバーが発表され、マグワイアは選外となった

内藤「中盤より前はどうでしょう?ここが一番難しいところですが…」

藤井「ボランチのコナー・ギャラガー(チェルシー)、デクラン・ライス(アーセナル)、トップ下のジュード・ベリンガム(レアル・マドリー)は確定で、右WGはブカヨ・サカ(アーセナル)もいますが…僕はコール・パルマー(チェルシー)を推したいです。左WGはフィル・フォーデンで、1トップがハリー・ケイン(バイエルン・ミュンヘン)ですかね」

若林「僕は、中盤までは大体同じなんですけど、1トップはオリー・ワトキンス(アストン・ビラ)がいいな」

内藤「ワトキンスもいいですよね~」

若林「足速いし、ポストプレーもできるし、シュートもうまいし、万能型のFWですよね。先発がケインでラスト20分くらいにワトキンスを使うのもいいかもな」

藤井「“見たい”で言えば、僕は左ゴードン、右パルマーの両翼を推したいです」

内藤「ゴードンはめちゃくちゃ守備しますからね。あと、中盤だと19歳のコビー・メイヌー(マンチェスター・ユナイテッド)と20歳のアダム・ウォートン(クリスタル・パレス)という若い二人もいて…」

若林「もう、メンバーに入っていない選手だけで11人選んでも強そうですね」

藤井「全然強そう(笑)」


EUROの優勝はどこ?

内藤「優勝予想をお願いしてもいいですか?」

藤井「まあフランスかなあ。イングランドと並ぶぐらい選手層が厚いので。前はもちろんですけど、後ろのメンツもすごい」

内藤「イングランドは後ろがちょっと弱いですもんね」

藤井「ウィリアム・サリバ(アーセナル)とイブラヒマ・コナテ(リバプール)の両CBは本当に堅過ぎる…(笑)。あとは、ドイツも期待したいですね。トニ・クロース(レアル・マドリー)がこの大会を最後に現役引退するので。あと、フロリアン・ビルツ(レバークーゼン)も大好きな選手です」

若林「(選手名鑑を見ながら)フランスはたしかに堅いですね。ウォーレン・ザイール=エメリ(パリ・サンジェルマン)とか、俺より2つも年下だ…」

内藤「イングランドのベリンガムやオランダのシャビ・シモンズ(ライプツィヒ)など、若林選手と同学年(2003年の代)の選手もたくさん主力として活躍されていますね」

若林「本当にすごい時代ですよね」

藤井「EURO、楽しみになってきました」

【©︎1998 N.O.ARDIJA】

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内藤秀明(ないとう ひであき)
1990年生まれのサッカーライターで、心のクラブはマンチェスター・ユナイテッド。プレミアリーグに関する記事を執筆するだけでなく、イベントの開催、YouTube動画の制作など、幅広く活動中。『X』のアカウントは「@nikutohide」。
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著者プロフィール

1999年にJリーグへ参加。アルディージャは「リス」を意味するスペイン語。リスは大宮市(現さいたま市)のマスコット的存在で、地域に密着し、愛される存在となることを願ってつけられた。さいたま市西区にクラブハウス「オレンジキューブ」・アルディージャ練習場があり、ホームスタジアムであるNACK5スタジアム大宮は、日本最古のサッカー専用スタジアム。クラブマスコットはアルディとミーヤ。

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